サラマ・アンギュース~王位継承者

若山ゆう

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【第五部:聖なる村】第十章

数が合わない

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「数……? それってもしかして、神の民の数まで記憶に残ってるの!? あと何人いるのかもわかるの!?」

 ディオネが興奮してまくしたて、エルシャがわずかに顔をしかめるのを見て慌てて口をつぐむ。

「すまない、まだはっきりと記憶を整理できていないんだ。だが……タリアナのかけらは……全部で、二個――二個のはずだ」

 再び全員が顔を見合わせた。

「確か、ルイ。あんたの恋人のカイラ、彼女は操作の民だっていってたわね」

 それまで押し黙っていたルイは、ディオネの迫力に押されながらも肯定した。

「え、うん……そう聞いたけど……」

 続いてゼムズを見る。

「で、キーロイと、ジャン・ガールだっけ? 二人とも、操作の民だといったよね」

 ゼムズもうなずく。

「キーロイは確かにそうだ。俺の目の前でかけらも取り出した。そのかけらはここにある。偽物じゃないぜ。キーロイの話だと、ジャン・ガールもタリアナで、だからこそ護送車から脱出できたといっている」
「……確かに、数が合いませんね。ひとり、多い」

 いいながらフェランはルイのほうを見やり、ルイは慌てて弁明した。

「なんだよ、僕だって嘘はいってないよ。かけらだって持ってる。ほら」

 首にぶらさげたペンダントの中から、小さな破片を取り出す。病死したカイラの形見だ。改めて全員で四方から眺めてみる。本物にしか見えない。

「……ということは、ジャン・ガールはタリアナだというのが、嘘だと……?」

 フェランの独り言のような呟きに、今度はゼムズが声を荒げた。

「そんなはずはねぇ! うまく説明できないが、キーロイは絶対嘘なんぞつかねぇ。だいたい俺を騙す理由がねぇ」

 皆顔を見合わせ、それもそうだとうなずいた。再びおずおずとルイが口を開く。

「僕のかけらも、本物だよねえ? じゃあ、僕の聞き間違いなのかも……。カイラは、操作の民じゃなくて、違う神の民だったのかも……」
「そんな大事な話、聞き間違える?」
「それとか……ほら、まだエルシャの記憶が混乱してるんじゃ……?」

 今度は全員がエルシャを見る。エルシャは難しい表情のまま額に手を当てて何かを考えているようだった。

「確かに……二つのはずだが……」

 何かが、違う。

 考えようとするが、頭の中に霧が立ち込めているようでうまくまとまらない。

 三人のタリアナ、二つのかけら。

 答えが、すぐそこにある気がする。まだらに漂うもやのすぐ向こうに、ぼんやりと何かが見えている気がする。だが、集中しようとすればするほど、思考が拡散して手の届かないところへ行ってしまう。

 次第にこめかみのあたりが脈打つように痛み出し、再び全身にじっとりと汗が滲んできた。

「エルシャ、もういいわよ、今は無理しないで」

 ナイシェがやさしくエルシャの肩に触れた。

「もっと体調がよくなってからゆっくり考えても、遅くないわ」

 エルシャは目を上げた。

「ああ……すまない」
「だからさ、いちいち謝らないで」

 ディオネがすかさずたしなめる。

「あんたのおかげで、わかったことのほうが多いんだから」

 エルシャは応えるようにかすかに微笑んだ。
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