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レオニード様、そしてレイチェル様と出逢ったパーティーから一ヶ月程の時間が流れていた。
ある日のこと、突然私はニコライド様の屋敷に呼び出されることとなったのだ。
私な馬車の中から曇り空を見上げ、どんな用事なのだろうと不安を覚えていた。
ニコライド様の呼び出しでいいことなんて無かったから……
今度はどんなことを言われるのだろうか。
大きくため息をつき、遠くに見える森の景色を眺めていた。
ニコライド様の屋敷に到着すると、彼の屋敷に仕える侍女の方々が出迎えてくれる。
彼が私を出迎えてくれたことなど一度たりともない。
女を出迎える男などみっともない。そう考えているようだ。
侍女の方に促され、私は屋敷へと足を踏み入れる。
屋敷に入ったそこにもニコライド様の姿は無かった。
どうやら彼は自室にいるらしく、私は一人でニコライド様の部屋へと向かった。
彼の部屋に到着し、私は緊張をほぐすために一度深呼吸する。
そしてゆっくりとドアをノックした。
「入れ」
「失礼いたします……」
扉を開き、中へ入ると……なんとそこには想像もしていなかったような人の姿があった。
「レイチェル様……」
「お久しぶりですわね、アニエル様」
彼女は私を見るなり片頬を上げ、嫌味を感じさせる笑みを向けてきた。
何故この方がこんなところに?
私はニコライド様に説明を求めるよう彼に視線を向ける。
「ああ。この女とは知り合いのようだし、説明は必要ないな?」
「はぁ……」
「ならば単刀直入に言う。俺はこいつと婚約することにした。だからアニエル・コールドマン。お前との婚約は破棄させてもらう」
「…………」
いつも通りの命令口調。
さも当然のようにニコライド様はそう言ったけれど……私の頭が追い付かない。
今、婚約破棄と言ったの?
どうして? どうしてなの?
私が愕然としていると、ニコライド様は舌打ちをして話を続けた。
「お前みたいな暗い女との婚約は破棄すると言ったんだ。元々親同士が決めた望まぬ婚約だったしな」
ニコライド様はレイチェル様の肩を抱き、そしてニヤッと笑う。
「それに対してレイチェルは明るくいい女だ。家柄もお前と遜色ない。親もレイチェルとなら婚約してもいいと言っている」
「そういうことです。申し訳ございませんね、アニエル様」
「…………」
「ではそういうことだ。もうお前に用はない。帰れ」
私は混乱したままであったが、ニコライド様の命令には従わなけばならないと刷り込まれていたのであろう。
頭を下げ、屋敷をそのまま後にした。
そこから馬車で家に帰ったはずなのだが……その時の記憶は一切ない。
ある日のこと、突然私はニコライド様の屋敷に呼び出されることとなったのだ。
私な馬車の中から曇り空を見上げ、どんな用事なのだろうと不安を覚えていた。
ニコライド様の呼び出しでいいことなんて無かったから……
今度はどんなことを言われるのだろうか。
大きくため息をつき、遠くに見える森の景色を眺めていた。
ニコライド様の屋敷に到着すると、彼の屋敷に仕える侍女の方々が出迎えてくれる。
彼が私を出迎えてくれたことなど一度たりともない。
女を出迎える男などみっともない。そう考えているようだ。
侍女の方に促され、私は屋敷へと足を踏み入れる。
屋敷に入ったそこにもニコライド様の姿は無かった。
どうやら彼は自室にいるらしく、私は一人でニコライド様の部屋へと向かった。
彼の部屋に到着し、私は緊張をほぐすために一度深呼吸する。
そしてゆっくりとドアをノックした。
「入れ」
「失礼いたします……」
扉を開き、中へ入ると……なんとそこには想像もしていなかったような人の姿があった。
「レイチェル様……」
「お久しぶりですわね、アニエル様」
彼女は私を見るなり片頬を上げ、嫌味を感じさせる笑みを向けてきた。
何故この方がこんなところに?
私はニコライド様に説明を求めるよう彼に視線を向ける。
「ああ。この女とは知り合いのようだし、説明は必要ないな?」
「はぁ……」
「ならば単刀直入に言う。俺はこいつと婚約することにした。だからアニエル・コールドマン。お前との婚約は破棄させてもらう」
「…………」
いつも通りの命令口調。
さも当然のようにニコライド様はそう言ったけれど……私の頭が追い付かない。
今、婚約破棄と言ったの?
どうして? どうしてなの?
私が愕然としていると、ニコライド様は舌打ちをして話を続けた。
「お前みたいな暗い女との婚約は破棄すると言ったんだ。元々親同士が決めた望まぬ婚約だったしな」
ニコライド様はレイチェル様の肩を抱き、そしてニヤッと笑う。
「それに対してレイチェルは明るくいい女だ。家柄もお前と遜色ない。親もレイチェルとなら婚約してもいいと言っている」
「そういうことです。申し訳ございませんね、アニエル様」
「…………」
「ではそういうことだ。もうお前に用はない。帰れ」
私は混乱したままであったが、ニコライド様の命令には従わなけばならないと刷り込まれていたのであろう。
頭を下げ、屋敷をそのまま後にした。
そこから馬車で家に帰ったはずなのだが……その時の記憶は一切ない。
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