4 / 16
4
しおりを挟む
「こ、婚約破棄ですか……?」
最初から答えは分っていたのかもしれない。
最近のジーク様とレイアの様子を見ていたので、驚くようなことはなかった。
しかし、そうなると分っていたとしても、やはり胸にくるものがある。
辛く泣きたい衝動に駆られる。
「君とは正直結婚したいと思っていた……だけど、君は大事な秘密を僕に隠していたな?」
「秘密……? なんのことですか?」
カッと目を見開いてジーク様は私に怒鳴り付ける。
「とぼけても無駄だ! 君はあの有名な占い師から貧乏神だと宣言されていたそうじゃないか!」
「そ、それは……」
誤解だ。
占い師からそう直接宣言されたわけではない。
それに、貧乏神はレイアの方だと言うのに……
「それに比べてレイアは幸運の女神! 彼女こそ我がバージリアン家に繁栄をもたらす女性! 僕は君の代わりに彼女と結婚をすることにした。レイアも君の両親も承認済だ」
「…………」
ニヤニヤと笑うレイア。
私は今にも泣き出してしまいそうだった。
だけどここで泣くわけにはいかない。
泣いてしまえば、またレイアが勝ち誇る。
また私をバカにするんだ。
だから私は泣くのを我慢した。
できるだけ気丈に振る舞い、ジーク様の申し出を受け入れることにした。
「承知しました……ほんの短い間でしたが、お世話になりました、ジーク様」
「ふん! 結婚前で良かったよ。君という人間を知れたからな!」
それは私のセリフだ。
こんな簡単に婚約関係を破棄するだなんて。
こんなあっさりレイアを選んでしまうなんて。
辛いのは辛いが、少しだけホッとしている自分もいる。
ジーク様は私を信じてはくれなかったのだ。
そりゃ、貧乏神だなんて言われたら遠ざけたいという気持ちは分からないでもないけれど……ちゃんとそのことは見極めてほしかった。
そうすれば、私が貧乏神じゃないと分かったはずなのに。
これは運命だったのだ。
私は私を睨む付けるジーク様のお顔を見つめながら、無理矢理にそう心に言い聞かせていた。
「ああ、サラ。ジーク様は両親にお屋敷を用意してくれているらしいわ。コリンズ家は叔父様が継ぐことになるから……あなたはこれから勝手に生きて頂戴」
「…………」
レイアは嘲笑しながらそんなことを私に言い放つ。
それは家を勘当されるということだろう。
貧乏神にはそれがお似合い。
妹も両親も、そんな風に笑っている。
私は愕然とするも、心に少し希望のような灯が宿っているのを感じていた。
だってそうでしょ?
貧乏神はレイアで、私は――
きっとどこにいたって上手くいく。
絶望を覚えながらも希望を抱く私。
これは、私の新たなる旅立ちなのだ。
新しい自分になるための、新しい日々の始まりなんだ。
最初から答えは分っていたのかもしれない。
最近のジーク様とレイアの様子を見ていたので、驚くようなことはなかった。
しかし、そうなると分っていたとしても、やはり胸にくるものがある。
辛く泣きたい衝動に駆られる。
「君とは正直結婚したいと思っていた……だけど、君は大事な秘密を僕に隠していたな?」
「秘密……? なんのことですか?」
カッと目を見開いてジーク様は私に怒鳴り付ける。
「とぼけても無駄だ! 君はあの有名な占い師から貧乏神だと宣言されていたそうじゃないか!」
「そ、それは……」
誤解だ。
占い師からそう直接宣言されたわけではない。
それに、貧乏神はレイアの方だと言うのに……
「それに比べてレイアは幸運の女神! 彼女こそ我がバージリアン家に繁栄をもたらす女性! 僕は君の代わりに彼女と結婚をすることにした。レイアも君の両親も承認済だ」
「…………」
ニヤニヤと笑うレイア。
私は今にも泣き出してしまいそうだった。
だけどここで泣くわけにはいかない。
泣いてしまえば、またレイアが勝ち誇る。
また私をバカにするんだ。
だから私は泣くのを我慢した。
できるだけ気丈に振る舞い、ジーク様の申し出を受け入れることにした。
「承知しました……ほんの短い間でしたが、お世話になりました、ジーク様」
「ふん! 結婚前で良かったよ。君という人間を知れたからな!」
それは私のセリフだ。
こんな簡単に婚約関係を破棄するだなんて。
こんなあっさりレイアを選んでしまうなんて。
辛いのは辛いが、少しだけホッとしている自分もいる。
ジーク様は私を信じてはくれなかったのだ。
そりゃ、貧乏神だなんて言われたら遠ざけたいという気持ちは分からないでもないけれど……ちゃんとそのことは見極めてほしかった。
そうすれば、私が貧乏神じゃないと分かったはずなのに。
これは運命だったのだ。
私は私を睨む付けるジーク様のお顔を見つめながら、無理矢理にそう心に言い聞かせていた。
「ああ、サラ。ジーク様は両親にお屋敷を用意してくれているらしいわ。コリンズ家は叔父様が継ぐことになるから……あなたはこれから勝手に生きて頂戴」
「…………」
レイアは嘲笑しながらそんなことを私に言い放つ。
それは家を勘当されるということだろう。
貧乏神にはそれがお似合い。
妹も両親も、そんな風に笑っている。
私は愕然とするも、心に少し希望のような灯が宿っているのを感じていた。
だってそうでしょ?
貧乏神はレイアで、私は――
きっとどこにいたって上手くいく。
絶望を覚えながらも希望を抱く私。
これは、私の新たなる旅立ちなのだ。
新しい自分になるための、新しい日々の始まりなんだ。
23
あなたにおすすめの小説
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
聖女姉妹の姉は、妹に婚約者を奪われました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミレッサと妹シアノは数週間前に聖女の力を得て、聖女姉妹と呼ばれていた。
一週間前に私はルグド王子、シアノは侯爵令息カインとの婚約が決まる。
そして――シアノの方が優秀だから、婚約者を変えたいとルグド王子が言い出した。
これはシアノの提案のようで、私は婚約者を奪われてしまう。
ルグド王子よりカインは遙かにいい人で、私は婚約者が変わったことを喜んでいた。
そして数ヶ月後――私の方が、妹より優れていることが判明した。
妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます
キョウキョウ
恋愛
回復魔法を得意としている、姉妹の貴族令嬢が居た。
姉のマリアンヌと、妹のルイーゼ。
マクシミリアン王子は、姉のマリアンヌと婚約関係を結んでおり、妹のルイーゼとも面識があった。
ある日、妹のルイーゼが回復魔法で怪我人を治療している場面に遭遇したマクシミリアン王子。それを見て、姉のマリアンヌよりも能力が高いと思った彼は、今の婚約関係を破棄しようと思い立った。
優秀な妹の方が、婚約者に相応しいと考えたから。自分のパートナーは優秀な人物であるべきだと、そう思っていた。
マクシミリアン王子は、大きな勘違いをしていた。見た目が派手な魔法を扱っていたから、ルイーゼの事を優秀な魔法使いだと思い込んでいたのだ。それに比べて、マリアンヌの魔法は地味だった。
しかし実際は、マリアンヌの回復魔法のほうが効果が高い。それは、見た目では分からない実力。回復魔法についての知識がなければ、分からないこと。ルイーゼよりもマリアンヌに任せたほうが確実で、完璧に治る。
だが、それを知らないマクシミリアン王子は、マリアンヌではなくルイーゼを選んだ。
婚約を破棄されたマリアンヌは、もっと魔法の腕を磨くため修行の旅に出ることにした。国を離れて、まだ見ぬ世界へ飛び込んでいく。
マリアンヌが居なくなってから、マクシミリアン王子は後悔することになる。その事実に気付くのは、マリアンヌが居なくなってしばらく経ってから。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
妹に婚約者を奪われた私ですが、王子の婚約者になりました
天宮有
恋愛
「お前よりも優秀なメリタと婚約することにした」
侯爵令嬢の私ルーミエは、伯爵令息バハムスから婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後バハムスを奪いたかったと、妹メリタが私に話していた。
婚約破棄を言い渡されてすぐに、第四王子のジトアが屋敷にやって来る。
本来はジトアが受けるはずだった呪いの身代わりになっていたから、私は今まで弱体化していたようだ。
呪いは来月には解けるようで、これから傍にいたいとジトアは言ってくれる。
ジトア王子の婚約者になれた私は、呪いが解けようとしていた。
旦那様が遊び呆けている間に、家を取り仕切っていた私が権力を握っているのは、当然のことではありませんか。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるフェレーナは、同じく伯爵家の令息であり幼馴染でもあるラヴァイルの元に嫁いだ。
しかし彼は、それからすぐに伯爵家の屋敷から姿を消した。ラヴァイルは、フェレーナに家のことを押し付けて逃げ出したのである。
それに彼女は当然腹を立てたが、その状況で自分までいなくなってしまえば、領地の民達が混乱し苦しむということに気付いた。
そこで彼女は嫁いだ伯爵家に残り、義理の父とともになんとか執務を行っていたのである。
それは、長年の苦労が祟った義理の父が亡くなった後も続いていた。
フェレーナは正当なる血統がいない状況でも、家を存続させていたのである。
そんな彼女の努力は周囲に認められていき、いつしか彼女は義理の父が築いた関係も含めて、安定した基盤を築けるようになっていた。
そんな折、ラヴァイルが伯爵家の屋敷に戻って来た。
彼は未だに自分に権力が残っていると勘違いしており、家を開けていたことも問題ではないと捉えていたのである。
しかし既に、彼に居場所などというものはなかった。既にラヴァイルの味方はおらず、むしろフェレーナに全てを押し付けて遊び呆けていた愚夫としてしか見られていなかったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる