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ジーク様とレイアは、依然として貧乏な生活をしているようだ。
失った町を復興させようとするも、いつも見えない力に遮られ、上手くいっていないと噂を耳にする。
私はエリオ様と共に、今もエルムルドの村に住んでいた。
だがジーク様とは真逆でエリオ様は商売を大成功させ、王都にも多大なる貢献をもたらしているのだ。
これも噂ではあるが、エリオ様を大変気に入った国王がバージリアン領を彼に任せるという話を耳にした。
例外も例外であるが、エリオ様にはそれだけの器があると考えているらしい。
彼はどこまでも上昇していくんだ……
ふと私は思う。
これは私についている幸運の女神の力だけなのだろうか、と。
そんなことを考えていると、見たことがある女性が私に会いにやって来た。
「お久しぶりね、サラ・コリンズ」
「あなたは……」
赤い髪の女性。
それは以前私たちを占った、あの占い師だった。
彼女と会ったのは十年も前だと言うのに、あの頃と全く姿は変わっていない。
そんな彼女は全てを見通していたのか、私はまだ何も言っていないのに当然のように語り出した。
「大いなる善には幸運が舞い込む。あなたがエリオと出逢ったのは必然だったのよ」
「確かに、それは感じます」
「あなたごと幸運を引き寄せたのはエリオ。そしてあのレイアを引き寄せたのもジークなの。だから全てを含めて、彼の善がもたらした力なのよ」
「そうだったのですね……」
妙に納得する自分がいた。
そうか……優しさは幸運を招き入れるものなんだ。
だから私は彼の元へ、当たり前のように流れ着いたのか。
川の流れに身を任せると海に流れ着くように。
これは彼女の言う通り、必然だったのだ。
「あの、一つだけお聞きしたいのですが」
「何かしら?」
「未来を見通すとも言われるあなたが……どちらに幸運の女神がついているのか分からなかったのですか?」
「…………」
妖艶な笑みを浮かべる占い師。
そして抑揚のない声で話を続けた。
「あなたに幸運の女神がついていると話をしたら、あなたはここにはいなかった。あなたの両親がレイアを幸運の女神と判断したからこそ、あなたはエリオと出逢えたの」
「ああ……そうでしたのね」
彼女は本当に未来を見通していたようだ。
私は心からの礼を込めて、深く彼女に頭を下げる。
「あなたのおかげで私は幸せになれました。本当に感謝しています」
「いつか妹さんに教えてあげるといいわ。邪な心を捨てることができれば、貧乏神は去っていくということをね」
「……はい」
彼女は一度頷くと、静かに去って行ってしまった。
まるで風のような人だ。
「サラ」
「エリオ様」
エリオ様が私のもとへと駆けて来る。
その眩い笑みを見て、私は微笑み返す。
「あの……」
「はい?」
どうかしたのだろうか?
いつもに増して真っ赤な顔。
そして真剣な表情をしている。
「…………」
「…………」
エリオ様のただならぬ様子に私は息を呑んだ。
するとエリオ様は何やら意を決したような顔をし、口を開いた。
「お、俺と結婚してくれないか!?」
なるほど。
プロポーズをしようとしてくれていたのか。
そういえば、うやむやになっていたけれど、まだプロポーズはされていなかったな。
彼の太陽のように赤い顔を見て、心が温かくなる。
きっとエリオ様は、これからもずっと私にこういう気持ちを与え続けてくれるのだろう。
そう確信している私は頬を染め、こう答えるのである。
「末永くよろしくお願いします」
この後、村の人たちが雪崩れ込んで来るのだが……彼の反応は言うまでもないだろう。
これからも私たちはこうして、穏やかで賑やかで幸福な時間を共に過ごしていくのだ。
幸福の女神が私たちの人生を照らし続けてくれていることに感謝しながら。
私たちはまた今日を生きていく。
おわり
---------------------------------------
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
現在、八月から始まる、第14回ファンタジー小説大賞に参加しようと考えています。
その為、八月一日からファンタジー小説を投稿しますので、お気に入りユーザー登録をしてお待ちいただければ幸いです。
よろしければ是非、応援の程よろしくお願いします!
失った町を復興させようとするも、いつも見えない力に遮られ、上手くいっていないと噂を耳にする。
私はエリオ様と共に、今もエルムルドの村に住んでいた。
だがジーク様とは真逆でエリオ様は商売を大成功させ、王都にも多大なる貢献をもたらしているのだ。
これも噂ではあるが、エリオ様を大変気に入った国王がバージリアン領を彼に任せるという話を耳にした。
例外も例外であるが、エリオ様にはそれだけの器があると考えているらしい。
彼はどこまでも上昇していくんだ……
ふと私は思う。
これは私についている幸運の女神の力だけなのだろうか、と。
そんなことを考えていると、見たことがある女性が私に会いにやって来た。
「お久しぶりね、サラ・コリンズ」
「あなたは……」
赤い髪の女性。
それは以前私たちを占った、あの占い師だった。
彼女と会ったのは十年も前だと言うのに、あの頃と全く姿は変わっていない。
そんな彼女は全てを見通していたのか、私はまだ何も言っていないのに当然のように語り出した。
「大いなる善には幸運が舞い込む。あなたがエリオと出逢ったのは必然だったのよ」
「確かに、それは感じます」
「あなたごと幸運を引き寄せたのはエリオ。そしてあのレイアを引き寄せたのもジークなの。だから全てを含めて、彼の善がもたらした力なのよ」
「そうだったのですね……」
妙に納得する自分がいた。
そうか……優しさは幸運を招き入れるものなんだ。
だから私は彼の元へ、当たり前のように流れ着いたのか。
川の流れに身を任せると海に流れ着くように。
これは彼女の言う通り、必然だったのだ。
「あの、一つだけお聞きしたいのですが」
「何かしら?」
「未来を見通すとも言われるあなたが……どちらに幸運の女神がついているのか分からなかったのですか?」
「…………」
妖艶な笑みを浮かべる占い師。
そして抑揚のない声で話を続けた。
「あなたに幸運の女神がついていると話をしたら、あなたはここにはいなかった。あなたの両親がレイアを幸運の女神と判断したからこそ、あなたはエリオと出逢えたの」
「ああ……そうでしたのね」
彼女は本当に未来を見通していたようだ。
私は心からの礼を込めて、深く彼女に頭を下げる。
「あなたのおかげで私は幸せになれました。本当に感謝しています」
「いつか妹さんに教えてあげるといいわ。邪な心を捨てることができれば、貧乏神は去っていくということをね」
「……はい」
彼女は一度頷くと、静かに去って行ってしまった。
まるで風のような人だ。
「サラ」
「エリオ様」
エリオ様が私のもとへと駆けて来る。
その眩い笑みを見て、私は微笑み返す。
「あの……」
「はい?」
どうかしたのだろうか?
いつもに増して真っ赤な顔。
そして真剣な表情をしている。
「…………」
「…………」
エリオ様のただならぬ様子に私は息を呑んだ。
するとエリオ様は何やら意を決したような顔をし、口を開いた。
「お、俺と結婚してくれないか!?」
なるほど。
プロポーズをしようとしてくれていたのか。
そういえば、うやむやになっていたけれど、まだプロポーズはされていなかったな。
彼の太陽のように赤い顔を見て、心が温かくなる。
きっとエリオ様は、これからもずっと私にこういう気持ちを与え続けてくれるのだろう。
そう確信している私は頬を染め、こう答えるのである。
「末永くよろしくお願いします」
この後、村の人たちが雪崩れ込んで来るのだが……彼の反応は言うまでもないだろう。
これからも私たちはこうして、穏やかで賑やかで幸福な時間を共に過ごしていくのだ。
幸福の女神が私たちの人生を照らし続けてくれていることに感謝しながら。
私たちはまた今日を生きていく。
おわり
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