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時間は何をしていなくても流れていく。
レイが生贄として精霊王のもとへ行く時が刻一刻と近づいている。
「…………」
だが不憫に思う一方、誰かが生贄にならなければいけないのも事実だと考える自分もいた。
そして私は自己嫌悪に陥る。
親友が去ってしまうことも仕方ないと考える自分にだ。
そんな風に考えながら時間を過ごし、気が付けば一月が経っていた。
私はラース様に呼び出され、彼の城へと向かう。
なんの話だろうか?
馬車に揺られながら用件のことを考える。
もしかしたら、生贄の件がなんとかなるといった内容では?
私はほんの少しだけ希望を胸に抱き、そして城へと足を踏み入れる。
「……レイ?」
「…………」
私を迎え入れてくれたのはラース様だけではなかった。
何故か彼の隣に、俯くレイがいる。
何故彼女がこんなところに……
嫌な予感がする。
お腹の中が重たい。
胸に痛みが走る。
ラース様は大きく息を吐き出し、そして私を冷たい眼差しで見つめる。
「ルビア・エクスレーン。君との婚約を破棄させてもらう」
「ええ?」
その言葉を聞いた瞬間、何も考えらなかった。
冷酷にそう言い放ったラース様は、静かに話を続ける。
「あれからレイとは色んな話をした……彼女はなんとも素晴らしい女性じゃないか。それに対して君は」
私をキツく睨み付けるラース様。
「レイから聞いたよ。陰で僕に対して不平不満を口にしているとね」
「な、なんの話ですか……? レイ! なんの話なの!?」
「……ごめんなさい」
レイは俯いたまま、目に涙を浮かべ口を開く。
「ラース様は素晴らしいお方……この方と話をしていて私、黙っていられなかった……あなたが話していたことを内緒にしたままにはできなかった」
酷く辛そうに話をするレイ。
この子は何を言っているの?
私は混乱したまま二人に視線を向け固まってしまっていた。
「レイと出逢えたことで君の本性を知ることができた。僕は運命に感謝するよ」
「ごめんなさい……ルビア、本当にごめんなさい」
「い、一体どのような話をしたのですか? 私、ラース様に対して不満など――」
「とぼけるな! 僕が王子であることを差し引いたら、人間としての価値が無いと言っていたのだろ?」
時分の血の気が引くのが分かる。
レイはラース様に嘘を話したのだ。
偽りを伝えたのだ。
理由は?
それはきっと、自分が助かるため。
そして、ラース様を私から奪うためだ。
私はレイが一瞬、ニヤリと口を歪めるのを見逃さなかった。
この子は大人しくて気弱だとばかり思っていたが……とんでもない女狐だったようだ。
レイが生贄として精霊王のもとへ行く時が刻一刻と近づいている。
「…………」
だが不憫に思う一方、誰かが生贄にならなければいけないのも事実だと考える自分もいた。
そして私は自己嫌悪に陥る。
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私はラース様に呼び出され、彼の城へと向かう。
なんの話だろうか?
馬車に揺られながら用件のことを考える。
もしかしたら、生贄の件がなんとかなるといった内容では?
私はほんの少しだけ希望を胸に抱き、そして城へと足を踏み入れる。
「……レイ?」
「…………」
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ラース様は大きく息を吐き出し、そして私を冷たい眼差しで見つめる。
「ルビア・エクスレーン。君との婚約を破棄させてもらう」
「ええ?」
その言葉を聞いた瞬間、何も考えらなかった。
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「……ごめんなさい」
レイは俯いたまま、目に涙を浮かべ口を開く。
「ラース様は素晴らしいお方……この方と話をしていて私、黙っていられなかった……あなたが話していたことを内緒にしたままにはできなかった」
酷く辛そうに話をするレイ。
この子は何を言っているの?
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偽りを伝えたのだ。
理由は?
それはきっと、自分が助かるため。
そして、ラース様を私から奪うためだ。
私はレイが一瞬、ニヤリと口を歪めるのを見逃さなかった。
この子は大人しくて気弱だとばかり思っていたが……とんでもない女狐だったようだ。
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