転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

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第二話 顔合わせと飢餓対策

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ヴォルペに入ってからは都市内部の様子を見ていた。これから治めることになる都市の現状を自らの目で見るために。それから都市の内部を見ながら領主屋敷に向かった。しばらくすると馬車が巨大な屋敷の前で停止した。
(ここが領主屋敷なのか)
そう思った僕は馬車の扉を開け、リーアとともに馬車から外に出た。するとそこには数人の兵士を背後に立たせた美少女がいた。
(この人は誰だ?)
僕は目の前の少女に対して異質な何かを感じて疑問に思った。その異質さは馬車の御者をしていた元将軍のクロベスも気づいており、彼は帯剣していた剣をすぐに抜ける様に身構えていた。その様子から僕らの考えを読んだのか、その少女はカーテシーをして言った。
「申し遅れました。私は代々この都市の代官代理をしているロートフォックス家の現当主、ツララ・ロートフォックスといいます。領都より遥々お越しくださりありがとうございます」
「僕はエルラント辺境伯家の次男、リーゼン・エルラントといいます。今日からこの都市の代官を務めることになるけど……僕のことは聞いていますか?」
僕はツララと名乗る代官代理に、僕が代官になることが伝わっているかどうか聞いた。
(もし伝わってないなら嫌だな。混乱を招くかもしれないからなぁ)
僕がそう考えているとツララは話し始めた。
「聞いております。しかしこの都市は赤狄族の都市です。赤狄族は魔龍神を信仰するとともに、赤狄族以外がこの都市を治める場合は、その加護がある者のみを自分たちの指導者として認めます。なので……ステータスを見せてくれませんか?」
ツララはそうお願いしてきた。ツララの言うことは正しかった。赤狄族は自分たちの指導者は赤狄族のみとしている。もし仮にでも赤狄族以外が指導者になるなら、彼らが信仰する魔龍神、その加護がある者のみしかダメだった。辺境伯当主のフェルトが代官をテルケフからリーゼンに変更したのはこのことが影響していた。
(なるほど。だから父上は魔龍神の加護のない兄よりも、加護のある僕をここの代官にしたのか。それならこのステータスは見せても良いか)
「いいよ。ステータス・展開」
僕はそう言ってステータスを公開した。それを見たツララの背後にいた兵士は震え上がり、ツララ自身も目をパチパチとして唖然としていた。
(まぁそうなるよね。このステータス見たら)
僕はそう考えながら唖然としていたツララに話しかけた。
「あの~……ツララ殿? 領主屋敷の案内をお願いしたいんですけど」
しかしステータスを閉じた今ですらツララは唖然としており、目をぱちぱち開いたり閉じたりしているが、それ以外、指すら動いていなかった。静寂が周りを包む。あまりに静かだった。まるで彼女の周りだけ時が止まった様だった。しかし次の瞬間、彼女自身がその静寂を破った。
「あ、えっと……領主屋敷に案内でしたね! 今すぐ案内します!」
ツララはそう言うと僕とリーア、クロベスを領主屋敷の塀の内側に入れ、案内をした。ヴォルペの領主屋敷は都市の統治者の家であり、統治機構の一つだった。統治者はそこに住み、都市を統治すると言う。その分屋敷の外見や内装は豪華だった。噴水や池、池の中にある人工の島。まるで前世で見た寝殿造とヨーロッパの建築を混ぜたかの様な庭だった。その後ツララが屋敷の内部の構造を説明した。一通りの説明が終わった僕は領主屋敷の執務室の椅子に座っていた。
僕はここにくる途中で見た飢饉中の農地のことが気になり、執務室にいたツララに聴くことにしたが、その肝心なツララはぼーっとしていた。
「あのー……ツララ殿? 聞いてますか?」
そう言うとツララが慌てながら言った。
「あ、えっと…その、聞いていますよ」
そう言うツララの顔は赤面していた。しかしツララはすぐに正気に戻り、僕にお願いをしてきた。
「私はリーゼン様の配下です。同列の者ではありませんので殿は付けなくてもいいです」
「分かった。それじゃあツララに一つ聞きたい。道中で見たんだが、あの農地一面に広がっている枯れた小麦の畑は何だ? 枯れていたとして、現在は飢饉に対してどう対策している?」
するとツララが答えにくそうにしていた。僕はそのことについて聞いた。
「答えにくいことなの?」
「はい……リーゼン様の兄上様が関わっていますので」
「教えてくれ。今頼めるのはツララしかいない!」
僕がそう言うとツララは覚悟を決めた顔つきになり、はっきりと自分自身の口で答えた。
「テルケフ様が作った堤防によって、川の水位が下がり、農業用水が足りなくなってしまい、あの様なことになりました。現在は隣接するブルディやグリディから穀物を買おうとしていますが……値上げをされて思う様に買えないのが現状です」
(兄上、やってくれたな!)
僕は心の中でそう思った。堤防を壊したとしても今からでは出遅れ。隣接しているブルディなどで穀物が高くなっているのはテルケフが代官になったから。飢饉から領民の餓死の危機。全ては兄テルケフの仕業だったのだ。それに気がついた後の僕の行動は早かった。
「ツララ。堤防は破壊してくれ、ただし水が一気に流れない様に進捗にだ。そして領都に食料支援を求める使者を出してくれ。そして最後に。領民にはこの都市の備蓄している食料を配給する」
言い終わるとツララはすぐに執務室を出て、足の速い馬と騎馬の達人を呼び、使者として領都に向かわた。そしてすぐに兵士や魔法使いに慎重に堤防を破壊するように命令した後、ヴォルペの財務管理役、フォスト・バーデルマに蔵を開けて、食料を領民に配るように指示をした。僕はそんな様子を執務室の窓から見ながら、次の政策、やることについて考えていた。
(この都市は領主から直接監視をされていない、だからこそこんなに横領されるし、色々な制度や体制が複雑化している)
僕はそんなことを考えて執務室にて今日一日のことを振り返る。しかし馬車内での疲労の蓄積などが原因なのか、いつのまにか寝てしまっていた。

🌸次回予告
 第三話 横領と軍事
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