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「……俺、帰る」
しらけた俺は、
リカと話している颯介さんに向け声をかけ立ち上がった。
「あぁ、気をつけてな?
今度は絶対芽依ちゃんを連れて来いよな?
くれぐれも芽依ちゃんに宜しくな?
大事にしろよな?」
「…うん、じゃぁ」
どんだけ、芽依を気に入ってんだよ?
芽依にデレデレの颯介さんに若干呆れながらも返事を返した。
「えー?!帰っちゃうの?
あたし、海翔に送ってもらおうと思ってマネージャー帰しちゃったのにー」
立ち上がって上着を着ようとしていた俺に、
当たり前のように言ってくるリカ。
「はぁ!?
ふざけんなっ!!タクシー呼べよ!」
なんで俺が……?
そう思った俺は、
芽依には絶対に向けたりしない、
凍てつくような冷たい声をリカに投げつけてやった。
「フンッ、ふざけてなんかないし!
送ってくれないんだったら、海翔に会いに行くし。また、芽依ちゃん苛めるから?」
そしたら、
そんなふざけた言葉がリカから投げられたもんだから…、
「ふざけんなっ!!芽依には関係ないだろっ?!」
気づけば、
その言葉に頭の中の何かがぶちっとキレた俺は、速攻でリカを怒鳴りつけていた。
「海翔もリカもいい加減にしとけ。
海翔は、もう先に食ってるし、リカを待ってらんないよな?解るけど怒鳴るな。
リカは、腹がへって苛ついてんだろ?
帰りは俺が送ってやるからワガママ言うなよ。
二人ともいい大人なんだから、な?」
怒り心頭の俺と、
まだ何か言いたげだったリカに、
颯介さんの昔からちっとも変わらない
優しいけど有無を言わせない低音が割って入ってきた。
「…あぁ、ごめん」
俺は、怒鳴ってしまったことに対して颯介さんに謝った。
勿論、リカに対してじゃない。
そんな俺に倣うように…
「…ごめんなさい」
颯介さんに向けてリカも謝っている。
きっと、リカも俺に対してじゃなく、
颯介さんに対しての謝罪なんだろう。
育った境遇が似てるせいか、素直じゃないとこもよく似てる俺たち。
きっと、
俺らのことをよく知る颯介さんには俺らの扱い方が解ってるんだろうけど……。
「じゃぁ、海翔、気をつけてな?」
仕切り直すようにして、
もう一度言ってくれた颯介さん。
「うん、ありがと。
じゃぁな?リカ、今まで…ありがと」
大人な颯介さんのお陰で、
なんとか冷静を取り戻した俺は、
今までの礼をリカに対して告げることができた。
俺たちは、
身体だけの関係だったとはいえ、
長年同じように寂しさを紛らす為に
同じ時間を過ごしてきた同志みたいなもんだったんだし。
それにコイツは、
歯に衣着せぬ口調のせいで、キツく見られるが、我が強いだけで、根はそんなに悪いヤツじゃない。
ただ、
少し前までの俺と同じで、
他人に心を許して…自分が傷つくのが怖いから、
自己防衛で他人を遠ざけてるんだろうと思う。
昔から、
人一倍負けず嫌いで、
人一倍プライドが高かったリカ。
そんなんだから、
いつもコイツには女のツレなんて居なくて…、
気づけばいつも俺の隣には当然のようにリカが居た。
もし芽依に出逢ってなかったら…
ずっとそうだったかもしれない。
本当に心から嫌いだったら、
いくら割りきった関係でも、
身体を重ねたりしないし、こんなに長くは続かなかったと思う。
恋愛感情が湧かなかっただけで、
実際にリカに救われていたし、それなりに感謝もしてたから。
俺は、最後にそれだけ告げて、
振り返ることなく、前【未来】だけを見つめて店を後にした。
「うん、海翔も、ありがとう」
リカの声を背中で聞きながら。
これが最後になると信じて……。
しらけた俺は、
リカと話している颯介さんに向け声をかけ立ち上がった。
「あぁ、気をつけてな?
今度は絶対芽依ちゃんを連れて来いよな?
くれぐれも芽依ちゃんに宜しくな?
大事にしろよな?」
「…うん、じゃぁ」
どんだけ、芽依を気に入ってんだよ?
芽依にデレデレの颯介さんに若干呆れながらも返事を返した。
「えー?!帰っちゃうの?
あたし、海翔に送ってもらおうと思ってマネージャー帰しちゃったのにー」
立ち上がって上着を着ようとしていた俺に、
当たり前のように言ってくるリカ。
「はぁ!?
ふざけんなっ!!タクシー呼べよ!」
なんで俺が……?
そう思った俺は、
芽依には絶対に向けたりしない、
凍てつくような冷たい声をリカに投げつけてやった。
「フンッ、ふざけてなんかないし!
送ってくれないんだったら、海翔に会いに行くし。また、芽依ちゃん苛めるから?」
そしたら、
そんなふざけた言葉がリカから投げられたもんだから…、
「ふざけんなっ!!芽依には関係ないだろっ?!」
気づけば、
その言葉に頭の中の何かがぶちっとキレた俺は、速攻でリカを怒鳴りつけていた。
「海翔もリカもいい加減にしとけ。
海翔は、もう先に食ってるし、リカを待ってらんないよな?解るけど怒鳴るな。
リカは、腹がへって苛ついてんだろ?
帰りは俺が送ってやるからワガママ言うなよ。
二人ともいい大人なんだから、な?」
怒り心頭の俺と、
まだ何か言いたげだったリカに、
颯介さんの昔からちっとも変わらない
優しいけど有無を言わせない低音が割って入ってきた。
「…あぁ、ごめん」
俺は、怒鳴ってしまったことに対して颯介さんに謝った。
勿論、リカに対してじゃない。
そんな俺に倣うように…
「…ごめんなさい」
颯介さんに向けてリカも謝っている。
きっと、リカも俺に対してじゃなく、
颯介さんに対しての謝罪なんだろう。
育った境遇が似てるせいか、素直じゃないとこもよく似てる俺たち。
きっと、
俺らのことをよく知る颯介さんには俺らの扱い方が解ってるんだろうけど……。
「じゃぁ、海翔、気をつけてな?」
仕切り直すようにして、
もう一度言ってくれた颯介さん。
「うん、ありがと。
じゃぁな?リカ、今まで…ありがと」
大人な颯介さんのお陰で、
なんとか冷静を取り戻した俺は、
今までの礼をリカに対して告げることができた。
俺たちは、
身体だけの関係だったとはいえ、
長年同じように寂しさを紛らす為に
同じ時間を過ごしてきた同志みたいなもんだったんだし。
それにコイツは、
歯に衣着せぬ口調のせいで、キツく見られるが、我が強いだけで、根はそんなに悪いヤツじゃない。
ただ、
少し前までの俺と同じで、
他人に心を許して…自分が傷つくのが怖いから、
自己防衛で他人を遠ざけてるんだろうと思う。
昔から、
人一倍負けず嫌いで、
人一倍プライドが高かったリカ。
そんなんだから、
いつもコイツには女のツレなんて居なくて…、
気づけばいつも俺の隣には当然のようにリカが居た。
もし芽依に出逢ってなかったら…
ずっとそうだったかもしれない。
本当に心から嫌いだったら、
いくら割りきった関係でも、
身体を重ねたりしないし、こんなに長くは続かなかったと思う。
恋愛感情が湧かなかっただけで、
実際にリカに救われていたし、それなりに感謝もしてたから。
俺は、最後にそれだけ告げて、
振り返ることなく、前【未来】だけを見つめて店を後にした。
「うん、海翔も、ありがとう」
リカの声を背中で聞きながら。
これが最後になると信じて……。
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