190 / 201
番外編~恋多き女優?涼風彩の秘密~
#4
しおりを挟む
そうして、いつもカメラに向ける、よそ行きの笑顔を浮かべながら
「ごめんなさい。そうじゃないの……。私の言葉が足りなかったわね? もし、結婚とか考えるんだったら、この業界で力のある人にしておきなさいって、言われたの。私、いつか、この国を代表するような素敵な女優になりたいって思ってるの……。
まだ若いし、結婚にこだわることもないなって、社長に言われて目が覚めたの。私のことをここまで育ててもらった恩もあるし。
だから、あなたとは結婚できないの。ホントにごめんなさい」
なかなか納得なんて、してくれなかったんだけど、彼が根負けするまで演じきったわ。
自分でも驚くくらいの完璧なお芝居だった。
彼が、
「解ったよ。君の意見を尊重するって言ったのは僕の方なんだし……。僕が一人で舞い上がってただけだった。そういうことだね。
僕こそ、ごめん」
そう言ってたくらいだもの……。
松岡直斗と別れてからの私は、彼のことを一日でも早く忘れるために、それまで以上に仕事に没頭する毎日を送るようになった。
でも、どんなに忙しくても、夜になって愛菜が眠ってしまうと、彼のことを思い出してしまって、ひっそりと涙を流してしまうことが何度もあった。
そんな寂しさを、仕事に没頭することで紛らわせたわ。
そのお陰で、一年が経つ頃には、テレビや映画の仕事がドンドン舞い込んできて、休んでいる暇なんてないくらいの、目の回るような忙しさを送るようになっていた。
その頃には、もう彼のことを思い出して泣いてしまうこともなくなってたわ。
勿論、仕事だけじゃなくて、可愛い愛菜の存在が大きかったわ。
そんなこんなで、仕事は忙しくても、やっと充実した日々を送れるようになった頃、気まぐれで意地悪な神様によって、私と彼は三度目の再会を果たすことになる。
***
彼と再会したのは、兄さんの経営するレストランだった。
その日は、開店一周年のパーティーがあるって知ってはいたんだけど、私は仕事が忙しいだろうから来なくて良い、兄さんにそう言われてたし、私も行くつもりなんてなかった。
後で、この日のことを兄さんが言ってたけど……。
私と彼とのことを知ってた兄さんは、そのパーティーに彼が来るかも知れないから、私は呼ばないでいたらしい。
でも、その日一日、映画の撮影がある筈だったんだけど、相手役の俳優が急病で来れなくなってしまい、予定してた映画の撮影が延期になってしまったのだった。
そうして、暫く休みなんて貰えてなかった私は、お休みを貰うことができたため、急遽パーティーへと向かうことになった。
ここまで偶然が重なるなんて、本当に気まぐれな神様の意地悪だとしか思えないわ。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
あれは、パーティーに顔を出して帰ろうと店を出て直ぐのことだった。
賑やかだった店内から一歩外へ出ると、日が沈んで辺りはもうすっかり薄暗くなっていた。
駐車場で待たせているマネージャーの車へと歩いているうち、一人でいるのが心細くなってきた私が、脚を進める速度を速めたちょうどその時。
「…彩乃」
背後から躊躇いがちに名前を呼ばれて、その場にまるで縫い止められたように、脚が動かなくなってしまった。
もう、自分の記憶から消し去ってしまった筈なのに……。
もし、逢ってしまっても揺らいだりしないって思っていたのに……。
その懐かしい優しい声を聞いただけで、手の届かない、胸の奥のずっとずっと深い所に封印してた筈の想いが、あの頃の幸せだった記憶が、熱い涙と一緒に溢れてしまって、自分ではどうすることもできなくなってしまった。
「ごめんなさい。そうじゃないの……。私の言葉が足りなかったわね? もし、結婚とか考えるんだったら、この業界で力のある人にしておきなさいって、言われたの。私、いつか、この国を代表するような素敵な女優になりたいって思ってるの……。
まだ若いし、結婚にこだわることもないなって、社長に言われて目が覚めたの。私のことをここまで育ててもらった恩もあるし。
だから、あなたとは結婚できないの。ホントにごめんなさい」
なかなか納得なんて、してくれなかったんだけど、彼が根負けするまで演じきったわ。
自分でも驚くくらいの完璧なお芝居だった。
彼が、
「解ったよ。君の意見を尊重するって言ったのは僕の方なんだし……。僕が一人で舞い上がってただけだった。そういうことだね。
僕こそ、ごめん」
そう言ってたくらいだもの……。
松岡直斗と別れてからの私は、彼のことを一日でも早く忘れるために、それまで以上に仕事に没頭する毎日を送るようになった。
でも、どんなに忙しくても、夜になって愛菜が眠ってしまうと、彼のことを思い出してしまって、ひっそりと涙を流してしまうことが何度もあった。
そんな寂しさを、仕事に没頭することで紛らわせたわ。
そのお陰で、一年が経つ頃には、テレビや映画の仕事がドンドン舞い込んできて、休んでいる暇なんてないくらいの、目の回るような忙しさを送るようになっていた。
その頃には、もう彼のことを思い出して泣いてしまうこともなくなってたわ。
勿論、仕事だけじゃなくて、可愛い愛菜の存在が大きかったわ。
そんなこんなで、仕事は忙しくても、やっと充実した日々を送れるようになった頃、気まぐれで意地悪な神様によって、私と彼は三度目の再会を果たすことになる。
***
彼と再会したのは、兄さんの経営するレストランだった。
その日は、開店一周年のパーティーがあるって知ってはいたんだけど、私は仕事が忙しいだろうから来なくて良い、兄さんにそう言われてたし、私も行くつもりなんてなかった。
後で、この日のことを兄さんが言ってたけど……。
私と彼とのことを知ってた兄さんは、そのパーティーに彼が来るかも知れないから、私は呼ばないでいたらしい。
でも、その日一日、映画の撮影がある筈だったんだけど、相手役の俳優が急病で来れなくなってしまい、予定してた映画の撮影が延期になってしまったのだった。
そうして、暫く休みなんて貰えてなかった私は、お休みを貰うことができたため、急遽パーティーへと向かうことになった。
ここまで偶然が重なるなんて、本当に気まぐれな神様の意地悪だとしか思えないわ。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
あれは、パーティーに顔を出して帰ろうと店を出て直ぐのことだった。
賑やかだった店内から一歩外へ出ると、日が沈んで辺りはもうすっかり薄暗くなっていた。
駐車場で待たせているマネージャーの車へと歩いているうち、一人でいるのが心細くなってきた私が、脚を進める速度を速めたちょうどその時。
「…彩乃」
背後から躊躇いがちに名前を呼ばれて、その場にまるで縫い止められたように、脚が動かなくなってしまった。
もう、自分の記憶から消し去ってしまった筈なのに……。
もし、逢ってしまっても揺らいだりしないって思っていたのに……。
その懐かしい優しい声を聞いただけで、手の届かない、胸の奥のずっとずっと深い所に封印してた筈の想いが、あの頃の幸せだった記憶が、熱い涙と一緒に溢れてしまって、自分ではどうすることもできなくなってしまった。
1
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ドクターダーリン【完結】
桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。
高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。
患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。
イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。
看護師からは手作り弁当を渡され、
巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、
同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。
そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。
「彩、 」
初作品です。
よろしくお願いします。
ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる