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番外編~恋多き女優?涼風彩の秘密~
#9
しおりを挟むでも、彼の話を聞いていて、解ったのだけど、彼は婚約者の妊娠のことをまだ知らないらしいということ。
だったら、私から言うことなんて何もない……。
彼が婚約者の妊娠のことを知ってて、平気で私の身体にも触れようとしたんじゃない ってことが解ったのだから。
今まで、私のことだけを変わらず愛してくれてたってことが解ったのだから……。
例え、これから先、彼と一緒に居られないのだとしても、
ーー私は一人なんかじゃない。
私には、愛菜が居るのだから……。
愛菜と一緒に、また彼の居ない少し前までの私たちの生活に戻るだけのこと……。
「もう、解ったから、頭を上げてちょうだい」
「……こんな僕でも、許してくれるのかい?」
「許すも許さないもないわ。どんなあなたのことも愛してるから…」
「ありがとう。彩乃…」
その夜、 私と直斗さんは、 最後の夜を過ごした。
***
本当は、こんなことまで話すつもりなんてなかったのに……。
さっき少し話していて、自分と同じようにお嬢さんが居ると解ったからかしら?
つい、余計なことまで話してしまった私は、あの頃のことを思い出してしまった途端、自分の感情をコントロールできずに、ジワリと涙を浮かべてしまっていた。
「……あら、ヤダ……。私ったらどうしちゃったのかしら。ダメね……。
ちょっとごめんなさいね…」
「あ、いえ、良かったらどうぞ。お使いになって下さい…」
「まぁ、ありがとう。でも、大丈夫よ? ほら、ね? もう大丈夫。涙なんてどうにでもなるわ」
でも、あんまり泣いてしまったら、彼女にも迷惑を掛けてしまうことになる。
もう、おおよそのことは話してあるのだし、今日で終えることができるはずだし。
シングルマザーであるライターの彼女を幼く可愛いお嬢さんの元へ早く返してあげたいじゃない?
私は、なんとか涙を振り払うと、私にハンカチを差し出して、心配そうな瞳を向けている彼女に、精一杯の笑顔を浮かべて微笑んで見せた。
人って不思議な生き物よね?
誰かが悲しんで涙を流していれば、見ている方もなんだかとても悲しい気持ちになってしまう。
またその逆で、誰かが幸せそうに微笑んでいれば、同じように、まるでひだまりでいるようなあたたかい幸せな気持ちになれる。
それじゃぁどちらが良いかなんて、そんなの微笑んでいる方が良いに決まってる。
微笑んでいれば、いつか本当に心から微笑むことができるようになるのだから……。
ーー今の私のように……。
これは、ある人が私に教えてくれたことだった。
「さっきは泣いてしまったけど、悲しいことばかりじゃなかったのよ?」
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クスッと思い出し笑いを零しながら彼女に問えば、思った通りの答えが返ってきたことに、今度は悪戯っ子のような微笑みを零しながら彼女の驚く表情を想像しつつある人のことを紡げば、
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思った通りの反応を返してくれたことに、 今度はしたり顔で微笑んで見せた。
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