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✱番外編✱パティシエールと王子様
#4
しおりを挟む今、愛梨さんの声が聞こえてこないっていうことは、愛梨さんが恥ずかしがっていた私に気を利かせて、どこかに行ってくれているからなのだろう。
もしも、今の創さんの言葉を聞いたら、愛梨さん、きっと喜ぶだろうなぁ。
大喜びしすぎて泣いちゃったりして。
それに、創さんは、母親である愛梨さんにはもう二度と逢えないって思っているだろうから。
幽霊になった愛梨さんがすぐ傍に居るなんて言ったら、メチャクチャ吃驚するんだろうなぁ。
けど、もしかしたら、私の言葉を信じてくれて、凄く喜んでくれたりして。
始めは吃驚しちゃったけど、時間が経つにつれ、なんだか私まで嬉しくなってきて、いてもたってもいられないような気持ちになってきた。
ーーもう、言っちゃってもいいよね? 言っちゃえ言っちゃえ。
心の中で自問自答して、愛梨さんのことを創さんに話そうと思い立った私の頭の片隅に、つい数十時間前のフライト中の機内で、愛梨さんと交わした会話が浮かんでくるのだった。
✧✦✧
飛行機なんて生まれて初めて乗ったから、気持ちが昂ぶっていたせいか、私はなかなか寝付くこともできずにいたのだけれど。
いくら創さんが飛行機なんて乗り慣れているとは言っても、朝が早かった創さんに迷惑をかけたくなくて、そのことは伝えずにそれぞれのシートで休んでいたのだけれど、どうしても寝付くことができずにいた。
そんな私のことを案じてくれた愛梨さんが、ずっと相手をしてくれていた時のことだ。
二人で、これまでのことを色々振り返っていて。
(そういえば、あの、転生って言うのが嘘だったってことは、別に創さんに愛梨さんのことを話しちゃっても問題ないってことですよね? まぁ、信じてくれるかどうかは別としてですけど)
それは、私の口ではなく正確には意識だが、とにかく何気なく浮かんだ言葉だった。
勿論、愛梨さんにも、了承してもらえるって思ってのことだ。
けれども、愛梨さんから返ってきたのは予想外な言葉だった。
【創には、今までどおり、私のことは言わないでほしいの】
正直驚いたし、信じられなかったものだから、再度訊きかえしたくらいだ。
(ーーえ!? どうしてですか? 転生とか言ってたあの話は嘘だったんだから、別に死神とかに何か言われた訳じゃないんですよね?)
【そうね。でも、せっかく創が、親離れならぬ……カメ吉離れできたんだから、もういいのよ。菜々子ちゃんが傍についてさえいてくれれば。だから、ね? 秘密よ】
けれど、結局は、愛梨さんには愛梨さんなりの考えがあるんだろうと、私は反論しかけていた言葉をぐっと飲み込んだのだ。
その時に、愛梨さんとは、『創さんには秘密にしておく』、そう約束していたのだった。
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