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正体不明な感情*
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「んっ、……ちょっ……と、狭山……っ」
ソファの上。彼の膝の上に真正面から乗せられた俺は、ひたすら軽いキスを顔中に受けていた。
「広崎……好き、大好き……」
「ぁ、っ!」
項を優しく擦れる手つきがこそばゆくて、つい声が漏れ出る。昨日あんなことをしたばかりだというのに、またもや同じようなことになってしまって、俺は自分の流されやすさを実感した。
狭山は俺の額にリップ音を鳴らした後、柔らかく笑んで、目線を合わせるように両手で頬を支えられる。
「ねえ広崎……さっきはどうして俺に抱きついてくれたの?」
「そっ、それは……」
愛おしそうに、とろんと瞳を蕩けさせた狭山の眼差しが刺さる。
しかし、俺は本当のことを言うべきかどうか迷っていた。正直なところ、自分でもあれは衝動的なもので、本能に従っていたらああなっていたのだ。白亜さんに対しても、まさか俺があんなに嫌な気持ちになるとは当然、思いもしていなかった。
どうして俺はあの時、狭山に触れたいと感じてしまったんだろう。それにどうして、あんなにも安心感を得てしまったのか。
俺にはこんなの、生まれて初めての感情で、明確な言葉がつけられない。狭山だったら、この気持ちに名前をつけてくれるんだろうか。
「…………言いたくない?」
「え、っと……理由は分からないけど、そうしたいと、思ったんだ……」
「俺に抱きつきたいって?」
「……うん……」
はっきり言われると、それはそれで恥ずかしい。思わず目を伏せれば、狭山の手のひらに包まれた俺の顔が、段々と熱くなっていくのを感じた。
「じゃあさ……アイツは? 俺は思い出すだけで殺したくなるけど……白亜にされた時、どう思った?」
「……い、嫌だった……」
「へえ……それはなんで?」
「っ、俺も、その理由が知りたいんだ……! なあ、狭山なら分かるのか? どうして白亜さんは駄目で、狭山なら良いのか……」
「あー……」
俺の疑問に狭山は目を細める。何を考えているのか検討もつかない。
ただ……親指で、すりすりと頬を撫でられるのだけが気持ちよかった。
「ねえ広崎、やっぱ抱いていい?」
「…………っは!?」
数秒間黙っていた狭山は、唐突にそう言った。
────いや、俺は今真剣に悩んでいたのに、何をどうしたらそうなるんだ!?
狭山の思考が想像の斜め上すぎて、俺には理解が追い付かない。しかも返事を聞く前にもう早速、狭山の手は俺の腰辺りをうろついているし。
「ま、待ってくれ! 理由を教えてくれるんじゃないのか!?」
「……俺は絶対にアレだと思うけどさあ。広崎本当に分かんないの?」
「分かってたらこんなこと聞いてない……!」
「うーん……やっぱ俺、どうせなら自分で気づいてほしいんだよな。だって俺に言われて納得されるより、広崎自身がそれだって思って、自分から伝えてくれる方が何倍も嬉しいからさ」
「ええっ……?」
狭山は分かっているようなのに、残念ながら答えを教えてくれないらしい。
「でも……後もう少しだな。今日は俺、本当にどうにかなりそうだったけど……、結果的にはアイツのおかげで広崎も自覚症状が芽生えてきたみたいだし」
楽しみに待ってるからな、と狭山は言う。その表情は、物凄く嬉しそうだ。
でも俺は、最後まで分からずじまいだった。
自分で気づいてほしいとは言われても、どうやったらいいんだろう。俺は家庭環境のせいか、かなり諦め癖が強い方だから、こういう壁に当たっても逃げてばっかりだった。地元を出たのも、結局は自分を取り巻く環境から逃げたかったせいだし……。
けど、今回はそうも言っていられない。俺も、自分の弱さと向き合う時が来たのかもしれなかった。
「……分かった。自分なりに、ちょっと考えてみるよ」
「ん、じゃあさ、その第一歩として……」
俺が決意を新たに深く頷けば、狭山は急に俺のベルトを緩め始める。
「ちょっ……! えっ……!?」
「これもそのために必要なことだから。広崎も頑張ってくれるんだろ?」
「は、話繋がってるのかそれ!?」
俺は反射的に止めようと手を出したけど、狭山は逆にその手を自身の下半身へとあてがった。
布越しからでも分かる。いつの段階からそうなっていたのかは知らないが、既にそれは熱を持ってズボンを押し上げていた。
「っ! お、おい……!」
「広崎にも触ってほしい。……駄目?」
美形の上目遣いほど心臓に悪いものはない。特に狭山の顔は、高校生の時の俺でさえ、かなり好みの分類に入っていたから、今なんてもっと比べ物にならなかった。
「それにさっき、続きは家でって言ってくれたの広崎じゃん」
「っ、ああもう! 分かったよ!」
自分のだって、機械的に処理をするくらいで碌に触らないのに。
でも、そうしてる間にも狭山は俺のベルトを外して、チャックを下げている。まだ硬さを持っていない俺のそれは、下着越しに狭山の手が当たるせいで、徐々に期待で熱を持ち始める。
俺も、こうしてはいられない。この時点で一切嫌だと思わないことに本当は違和感を持つべきだったけど、今はそんなこと、考えてはいられなかった。
***
「あっ、ぁ……はァ……ん、っ!」
グチュグチュと、粘り気の帯びた精を扱く、厭らしい音が部屋を充満している。
予想通り俺のそれは、始まってすぐに芯を持った。そして今は、狭山の親指で亀頭をグリグリと弄られていて、その行為がたまらなく腰に響いている。そのせいで俺は、さっきから何度もイキそうだった。
「……広崎……さっきから我慢してる?」
「ぅ、ん゙っ、し……してな…ッ」
「嘘だ。もうここ限界でしょ」
「ァ、それむりっ……~ッッ!!」
体を小さくして衝動を抑える。狭山の大きなブツを擦っていた俺の手も止まる。下半身の熱は今にも爆発しそうなくらい張り詰めていたけど、なんとか達することなく耐えていた。
「は、あっ……」
「うーん、我慢強いな。出したかったら出せばいいのに」
「だ、だって……っ、狭山の全然、おれっ……」
先ほどからずっと、俺は狭山の一回りも大きなそれを必死に両手で擦っていた。でも、その手つきは覚束ないし、狭山も全然イッてくれそうにない。
俺はさっきからこんなにも気持ちがいいのに、狭山はそうじゃないことが凄く悔しかったのだ。
「あー……やっぱ慣れてないからだろうな。……広崎さ、俺の触り方意識してやってみてよ」
「っえ……?」
狭山の……触り方……?
「こ、こうか……?」
「っは……あー、そうそう……っ」
緩急をつけながら、反り立つ赤黒いそれを上下に擦る。時々先端をグリグリしてやれば、ビクッと脈打って先走りが垂れた。
初めて狭山が俺の手で反応を見せたことに嬉しくなり、もっと学習しようと、俺のものを触っている狭山の手に集中する。
けど、そうすればするほど俺は刺激を敏感に感じ取ってしまい、強い快感で腰を痺れさせる。ダラダラとカウパーは垂れ続けて、限界は近い。
我慢し続けている射精欲で、視界はぼやけ始めていた。でもせめて、イクのは狭山と一緒がいい────そう思いながら、グチュグチュと水音を響かせ手を動した。
「広崎……、片手貸して……」
「ン、は……、っえ……?」
そんな状況の中。唐突に、狭山が俺の左手を掴む。俺の右手は彼のモノを擦っていたけど、取られた左手の人差し指は止めるまもなく、思いきり狭山の口へ含まれた。
「へ……っ!? 狭山!?」
「……っん……はぁ…、」
ジュルジュルと、俺の人差し指が狭山の唾液に包まれる。温かな滑りを帯びたそれが指に纏わりつき、狭山の口から溢れた唾液が手を伝って落ちてくる。彼の歯に当たれば軽く噛まれて、味わうように舌全体で吸い付いてくる。
驚くべきことに────狭山は、恍惚とした笑みを浮かべて、俺の指を食んでいた。しかもそれは留まることを知らず、長い舌が指の付け根をざらりと撫でている。爪の間さえも、狭山は惜しむように舌を滑り込ませているのだ。
「ぁ、ちょ……っ、と!」
「は……っ、あー……ヨダレとまんね……、すげえ興奮する……」
爛々と瞳を輝かせ、一本一本丁寧に口に入れるその姿は、まるで肉食獣のよう。俺の陰茎を握る狭山の手も、段階とスピードを増していく。
俺はいつか、狭山に食べられてしまうかもしれない────そんな、馬鹿みたいな考えが脳裏に過ぎ去って、俺の背筋をゾクゾクと震わせていた。
「あ゙……! やっ……イっちゃ、あっ、ああ!」
「ン、……広崎……イッていいよ……」
「まっ、まだ……っ、さや……ま、も……」
狭山の動きを真似して、なんとか俺も手先に集中する。ビクビクと反応した右手の中のそれは、同じく限界が近いことを示していた。
「っ、あ゙ー、上手……、やれば、できんじゃん……」
「ア、ま゙っ、~ッッ!!」
「……っ、ん……!」
背中を丸め、奥から衝動が迫り上がってきた瞬間。自分の精がビュッと射出される感覚がした。
と、同時に目の前からは、俺の指を含んだまま達した男の声が聞こえる。俺の手の中にも、ネチャッとした白いものが吐き出されていた。
「ひろさきぃ……」
うっとりと細められた瞳に、飲み込まれそうだ。
狭山は俺の手をようやく離すと、今度は自分の指を舐め始めた。そこに付着しているのは、当然だけど俺の出した白濁。しかも昨日と違って俺の分しかついていないからか、手のひらまでしっかりと舐め上げている。
幸いにも(?)一度見たからまだ衝撃は薄いが、またしてもこいつは、俺の出したものを腹に納めようとしていた。なんならさっきまでは俺の指を食んでいたし、そこには複数の噛み跡が無数に残っている。
これは明日になったら、ちゃんと消えてくれるのだろうか……?
それに、もしもこのまま、もっと先へ進んでしまったら俺はどうなってしまうんだろう。……はっきり言って、少し不安だ。
でも、俺だけを求めるその眼差しに、イッてしまいそうになったのも事実で。
俺は狭山が手に付着したそれを全て舐めきるまで止めることもせず眺めていたけど、興奮が収まらない彼によって、また竿を擦られ始めてしまった。一度射精した俺のそれは、さっきよりも過敏になっており、強い快感が腰を痺れさせた。
口からは、最早よがり声しか出てこない。俺はもう何度目になるか分からない快楽に、ただ身を震わせ、今度は為す術もなく果ててしまうのだった。
ソファの上。彼の膝の上に真正面から乗せられた俺は、ひたすら軽いキスを顔中に受けていた。
「広崎……好き、大好き……」
「ぁ、っ!」
項を優しく擦れる手つきがこそばゆくて、つい声が漏れ出る。昨日あんなことをしたばかりだというのに、またもや同じようなことになってしまって、俺は自分の流されやすさを実感した。
狭山は俺の額にリップ音を鳴らした後、柔らかく笑んで、目線を合わせるように両手で頬を支えられる。
「ねえ広崎……さっきはどうして俺に抱きついてくれたの?」
「そっ、それは……」
愛おしそうに、とろんと瞳を蕩けさせた狭山の眼差しが刺さる。
しかし、俺は本当のことを言うべきかどうか迷っていた。正直なところ、自分でもあれは衝動的なもので、本能に従っていたらああなっていたのだ。白亜さんに対しても、まさか俺があんなに嫌な気持ちになるとは当然、思いもしていなかった。
どうして俺はあの時、狭山に触れたいと感じてしまったんだろう。それにどうして、あんなにも安心感を得てしまったのか。
俺にはこんなの、生まれて初めての感情で、明確な言葉がつけられない。狭山だったら、この気持ちに名前をつけてくれるんだろうか。
「…………言いたくない?」
「え、っと……理由は分からないけど、そうしたいと、思ったんだ……」
「俺に抱きつきたいって?」
「……うん……」
はっきり言われると、それはそれで恥ずかしい。思わず目を伏せれば、狭山の手のひらに包まれた俺の顔が、段々と熱くなっていくのを感じた。
「じゃあさ……アイツは? 俺は思い出すだけで殺したくなるけど……白亜にされた時、どう思った?」
「……い、嫌だった……」
「へえ……それはなんで?」
「っ、俺も、その理由が知りたいんだ……! なあ、狭山なら分かるのか? どうして白亜さんは駄目で、狭山なら良いのか……」
「あー……」
俺の疑問に狭山は目を細める。何を考えているのか検討もつかない。
ただ……親指で、すりすりと頬を撫でられるのだけが気持ちよかった。
「ねえ広崎、やっぱ抱いていい?」
「…………っは!?」
数秒間黙っていた狭山は、唐突にそう言った。
────いや、俺は今真剣に悩んでいたのに、何をどうしたらそうなるんだ!?
狭山の思考が想像の斜め上すぎて、俺には理解が追い付かない。しかも返事を聞く前にもう早速、狭山の手は俺の腰辺りをうろついているし。
「ま、待ってくれ! 理由を教えてくれるんじゃないのか!?」
「……俺は絶対にアレだと思うけどさあ。広崎本当に分かんないの?」
「分かってたらこんなこと聞いてない……!」
「うーん……やっぱ俺、どうせなら自分で気づいてほしいんだよな。だって俺に言われて納得されるより、広崎自身がそれだって思って、自分から伝えてくれる方が何倍も嬉しいからさ」
「ええっ……?」
狭山は分かっているようなのに、残念ながら答えを教えてくれないらしい。
「でも……後もう少しだな。今日は俺、本当にどうにかなりそうだったけど……、結果的にはアイツのおかげで広崎も自覚症状が芽生えてきたみたいだし」
楽しみに待ってるからな、と狭山は言う。その表情は、物凄く嬉しそうだ。
でも俺は、最後まで分からずじまいだった。
自分で気づいてほしいとは言われても、どうやったらいいんだろう。俺は家庭環境のせいか、かなり諦め癖が強い方だから、こういう壁に当たっても逃げてばっかりだった。地元を出たのも、結局は自分を取り巻く環境から逃げたかったせいだし……。
けど、今回はそうも言っていられない。俺も、自分の弱さと向き合う時が来たのかもしれなかった。
「……分かった。自分なりに、ちょっと考えてみるよ」
「ん、じゃあさ、その第一歩として……」
俺が決意を新たに深く頷けば、狭山は急に俺のベルトを緩め始める。
「ちょっ……! えっ……!?」
「これもそのために必要なことだから。広崎も頑張ってくれるんだろ?」
「は、話繋がってるのかそれ!?」
俺は反射的に止めようと手を出したけど、狭山は逆にその手を自身の下半身へとあてがった。
布越しからでも分かる。いつの段階からそうなっていたのかは知らないが、既にそれは熱を持ってズボンを押し上げていた。
「っ! お、おい……!」
「広崎にも触ってほしい。……駄目?」
美形の上目遣いほど心臓に悪いものはない。特に狭山の顔は、高校生の時の俺でさえ、かなり好みの分類に入っていたから、今なんてもっと比べ物にならなかった。
「それにさっき、続きは家でって言ってくれたの広崎じゃん」
「っ、ああもう! 分かったよ!」
自分のだって、機械的に処理をするくらいで碌に触らないのに。
でも、そうしてる間にも狭山は俺のベルトを外して、チャックを下げている。まだ硬さを持っていない俺のそれは、下着越しに狭山の手が当たるせいで、徐々に期待で熱を持ち始める。
俺も、こうしてはいられない。この時点で一切嫌だと思わないことに本当は違和感を持つべきだったけど、今はそんなこと、考えてはいられなかった。
***
「あっ、ぁ……はァ……ん、っ!」
グチュグチュと、粘り気の帯びた精を扱く、厭らしい音が部屋を充満している。
予想通り俺のそれは、始まってすぐに芯を持った。そして今は、狭山の親指で亀頭をグリグリと弄られていて、その行為がたまらなく腰に響いている。そのせいで俺は、さっきから何度もイキそうだった。
「……広崎……さっきから我慢してる?」
「ぅ、ん゙っ、し……してな…ッ」
「嘘だ。もうここ限界でしょ」
「ァ、それむりっ……~ッッ!!」
体を小さくして衝動を抑える。狭山の大きなブツを擦っていた俺の手も止まる。下半身の熱は今にも爆発しそうなくらい張り詰めていたけど、なんとか達することなく耐えていた。
「は、あっ……」
「うーん、我慢強いな。出したかったら出せばいいのに」
「だ、だって……っ、狭山の全然、おれっ……」
先ほどからずっと、俺は狭山の一回りも大きなそれを必死に両手で擦っていた。でも、その手つきは覚束ないし、狭山も全然イッてくれそうにない。
俺はさっきからこんなにも気持ちがいいのに、狭山はそうじゃないことが凄く悔しかったのだ。
「あー……やっぱ慣れてないからだろうな。……広崎さ、俺の触り方意識してやってみてよ」
「っえ……?」
狭山の……触り方……?
「こ、こうか……?」
「っは……あー、そうそう……っ」
緩急をつけながら、反り立つ赤黒いそれを上下に擦る。時々先端をグリグリしてやれば、ビクッと脈打って先走りが垂れた。
初めて狭山が俺の手で反応を見せたことに嬉しくなり、もっと学習しようと、俺のものを触っている狭山の手に集中する。
けど、そうすればするほど俺は刺激を敏感に感じ取ってしまい、強い快感で腰を痺れさせる。ダラダラとカウパーは垂れ続けて、限界は近い。
我慢し続けている射精欲で、視界はぼやけ始めていた。でもせめて、イクのは狭山と一緒がいい────そう思いながら、グチュグチュと水音を響かせ手を動した。
「広崎……、片手貸して……」
「ン、は……、っえ……?」
そんな状況の中。唐突に、狭山が俺の左手を掴む。俺の右手は彼のモノを擦っていたけど、取られた左手の人差し指は止めるまもなく、思いきり狭山の口へ含まれた。
「へ……っ!? 狭山!?」
「……っん……はぁ…、」
ジュルジュルと、俺の人差し指が狭山の唾液に包まれる。温かな滑りを帯びたそれが指に纏わりつき、狭山の口から溢れた唾液が手を伝って落ちてくる。彼の歯に当たれば軽く噛まれて、味わうように舌全体で吸い付いてくる。
驚くべきことに────狭山は、恍惚とした笑みを浮かべて、俺の指を食んでいた。しかもそれは留まることを知らず、長い舌が指の付け根をざらりと撫でている。爪の間さえも、狭山は惜しむように舌を滑り込ませているのだ。
「ぁ、ちょ……っ、と!」
「は……っ、あー……ヨダレとまんね……、すげえ興奮する……」
爛々と瞳を輝かせ、一本一本丁寧に口に入れるその姿は、まるで肉食獣のよう。俺の陰茎を握る狭山の手も、段階とスピードを増していく。
俺はいつか、狭山に食べられてしまうかもしれない────そんな、馬鹿みたいな考えが脳裏に過ぎ去って、俺の背筋をゾクゾクと震わせていた。
「あ゙……! やっ……イっちゃ、あっ、ああ!」
「ン、……広崎……イッていいよ……」
「まっ、まだ……っ、さや……ま、も……」
狭山の動きを真似して、なんとか俺も手先に集中する。ビクビクと反応した右手の中のそれは、同じく限界が近いことを示していた。
「っ、あ゙ー、上手……、やれば、できんじゃん……」
「ア、ま゙っ、~ッッ!!」
「……っ、ん……!」
背中を丸め、奥から衝動が迫り上がってきた瞬間。自分の精がビュッと射出される感覚がした。
と、同時に目の前からは、俺の指を含んだまま達した男の声が聞こえる。俺の手の中にも、ネチャッとした白いものが吐き出されていた。
「ひろさきぃ……」
うっとりと細められた瞳に、飲み込まれそうだ。
狭山は俺の手をようやく離すと、今度は自分の指を舐め始めた。そこに付着しているのは、当然だけど俺の出した白濁。しかも昨日と違って俺の分しかついていないからか、手のひらまでしっかりと舐め上げている。
幸いにも(?)一度見たからまだ衝撃は薄いが、またしてもこいつは、俺の出したものを腹に納めようとしていた。なんならさっきまでは俺の指を食んでいたし、そこには複数の噛み跡が無数に残っている。
これは明日になったら、ちゃんと消えてくれるのだろうか……?
それに、もしもこのまま、もっと先へ進んでしまったら俺はどうなってしまうんだろう。……はっきり言って、少し不安だ。
でも、俺だけを求めるその眼差しに、イッてしまいそうになったのも事実で。
俺は狭山が手に付着したそれを全て舐めきるまで止めることもせず眺めていたけど、興奮が収まらない彼によって、また竿を擦られ始めてしまった。一度射精した俺のそれは、さっきよりも過敏になっており、強い快感が腰を痺れさせた。
口からは、最早よがり声しか出てこない。俺はもう何度目になるか分からない快楽に、ただ身を震わせ、今度は為す術もなく果ててしまうのだった。
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