【完結】執着系幼馴染みが、大好きな彼を手に入れるために叶えたい6つの願い事。

髙槻 壬黎

文字の大きさ
55 / 58

二人で

しおりを挟む
 それからミカイルは、見違えるように僕への態度が変わった。
 恐らく長い間溜め込んでいたものがふっきれて、表に出てきただけなのだろうが、それにしてもだ。

「……いつまでこうしてるんだ……」
「僕が満足するまで」
「それこの間も言ってたけど、全然離れなかったよな……。はあ……そろそろ課題をやらないといけないのに」

 ベッドの縁で横に座ったミカイルが、頭を僕の肩に乗せて、ひたすら手を握ったり、触ったりしてくる。
 別に嫌というわけではないのだが、ここ最近授業が終わるといつもこうで、勉強中でも関係なく触られるから集中できないのが悩みの種だった。
 それに、教室でもくっついてこようとするから、クラスメイトの戸惑ったような視線が気まずい。ジークもなんだか微妙そうな顔で見てくるし、ハインツとテイリットさんにいたっては見てはいけないものだとでも思っているのか、ミカイルが近くに来ると、さりげなく席を外す。よけいな気遣いだ。
 しかもアルト先輩がやってきた日には、ミカイルの機嫌が一気に急降下するので、その冷気に当てられた近くの生徒が体を震わせているのが申し訳なかった。
 でも、だからといってアルト先輩に来ないでほしいと言えるわけもなく、先輩は先輩で何故か僕を奪おうと躍起になっているので、その時ばかりは毎度、嵐がやってきたような騒がしさがあった。


「ユハ……今何考えてる?」

 物思いに耽っていた僕を、ミカイルの声が呼び戻す。

「いや……ちょっと最近の出来事を思い返してて」
「へえ…」
「……そういえばさ、ミカイルはどうして僕のことを好きになったんだ? 僕には魅了が効いてないから?」
「……きっかけはそれだけど、今はもうそれだけじゃない。だって、僕の魅了が効いてない人間は他にもいるでしょ? でも僕は、アイツらを好きになることは絶対にない。ユハだったから、僕はこんなにも苦しいほど好きになったんだよ」
「そ……そうか……」

 熱烈な告白に言葉が言い淀む。
 あれからミカイルには、幾度となく、好きだと伝えられていた。が、そのたびに愛おしむような表情が心臓に悪くて、跳ね上がる鼓動を押さえつけるのに僕はいつも必死だった。
 襲われたこともちゃんと謝られたし、何故かミカイルは僕がアルト先輩のことをそういう意味で好きだと思っていたようで、そこはきちんと訂正しておいた。ちなみに、ミカイルに触れられた感覚が今も忘れられなくて、時々その部分がジンと疼いてしまうのは彼には内緒だ。


「……そういえば……ミカイルのその力、聖女様が持ってたものと同じなんだってな。もしかして、生まれ変わりだったりするんじゃないのか?」
「まさか。聖女は国を救ったのに、力を使ってしまったことを悔やむくらいの人だよ。僕はそんなに心優しい人間じゃない。力だって、好き放題使ってるしね」
「ああ……そのせいで僕はクラスの皆から嫌われて悲しかった。けっこう傷ついたんだぞ」
「でもユハだって、僕がいない時にアイツ……アルトと会ってたんでしょ」

 握られた手に、急に力が込められる。

「痛い痛いっ!……ああもう、見かけによらず力が強いんだから手加減してくれ……」
「じゃあもうアイツと会話しないで。目も合わせないで」
「それは無理だ!」
「…………はぁ、ここに閉じ込めてやりたい」

 ボツリとこぼしたそれは、僕の元まで届くことはなかった。
 しかし、何となく不穏な気配を感じて背筋が震える。
 ミカイルはそれに気づいているのかいないのかは分からないが、僕の手を自身のものと絡めると、吐き出すように言葉を紡いだ。

「────早く僕を好きになって、ユハ」

 なんと返すのが正解なんだろう。
 実際、こうして触れてくることに、胸の内がくすぐられるような、そんな得体のしれない感情が芽吹きつつあった。それが恋に繋がるのかは、まだ僕にも分からない。
 ただ、その期待に応えたいと思うのも、また事実なのだ。

「……ちょっとずつ、な」
「うん。今はそれだけで十分。……大好きだよ、ユハ」

 僕の返事に、ミカイルは心底嬉しそうな声色で呟いた。


 少しずつでいい、僕達なりのスピードで進んでいこう────

 声に出さずともそれが伝わった気がして、僕は寄り添うようにそっと、ミカイルの方へ自分の頬を擦り寄せた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

稀代の英雄に求婚された少年が、嫌われたくなくて逃げ出すけどすぐ捕まる話

こぶじ
BL
聡明な魔女だった祖母を亡くした後も、孤独な少年ハバトはひとり森の中で慎ましく暮らしていた。ある日、魔女を探し訪ねてきた美貌の青年セブの治療を、祖母に代わってハバトが引き受ける。優しさにあふれたセブにハバトは次第に心惹かれていくが、ハバトは“自分が男”だということをいつまでもセブに言えないままでいた。このままでも、セブのそばにいられるならばそれでいいと思っていたからだ。しかし、功を立て英雄と呼ばれるようになったセブに求婚され、ハバトは喜びからついその求婚を受け入れてしまう。冷静になったハバトは絶望した。 “きっと、求婚した相手が醜い男だとわかれば、自分はセブに酷く嫌われてしまうだろう” そう考えた臆病で世間知らずなハバトは、愛おしくて堪らない英雄から逃げることを決めた。 【堅物な美貌の英雄セブ×不憫で世間知らずな少年ハバト】 ※セブは普段堅物で実直攻めですが、本質は執着ヤンデレ攻めです。 ※受け攻め共に、徹頭徹尾一途です。 ※主要人物が死ぬことはありませんが、流血表現があります。 ※本番行為までは至りませんが、受けがモブに襲われる表現があります。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。 これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って…… 「龍、そろそろ兄離れの時だ」 「………は?」 その日初めて弟が怖いと思いました。

処理中です...