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最低限の礼儀くらいわきまえてください
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「あ、あなた……失礼ですよ? こちらにおわす御方をどなたと心得ますか!」
王女の隣に座っていた侍女と思しき人物が馬車を降りてセシリアへと迫る。
しかし、セシリアの鋭い眼光に射すくめられ、侍女はビクッと震えてその場に凍りついた。
「貴女こそ私の話を聞いていなかったのかしら? 事前にお約束もない、名乗られてもいない相手をどう心得ろと?
おかしなことをおっしゃいますのね……」
まるで歴戦の猛者の如く一切の隙のないセシリアの迫力に気圧された侍女は、涙を浮かべて首を横に振った。
「お分かりいただけたのなら早々にお帰りを。私も暇ではございませんの」
「そんな……せっかく来たのに。せめて中で侯爵様の帰りを待たせてちょうだい!」
「お断りします。見知らぬ方をそう易々と招き入れるほど当家の門は軽うございませんの」
図々しい、と言わんばかりの蔑んだ目を向けられて王女は愕然とした。
「……どうして? わたくしがこんなに頼んでいるのに……」
それは非難ではなく純粋な驚きからくる発言だった。
自分の願いを拒む者など、ただ一人を除いてこの世には存在しなかった。
それなのに、何故よりにもよって格下の侯爵夫人から辛辣なまでの拒絶を受けているのだろう。そんな戸惑いから王女は哀しそうな顔でセシリアを見つめる。
「何故、ここまで無礼な扱いをされた私が貴女様の望みを叶えねばなりませんの? 貴族には貴族の道理というものがございます。きちんと作法に則り、礼を尽くした行動をしてくださればこちらも快くお迎えしたものを……不躾にいきなり訪ねるなど以ての外。お迎えする準備の時間を相手に与えないというのは礼を欠いた行動です」
はっきりと正論を突きつけられた王女は、顔を引きつらせたまま、呆然とセシリアを見つめていた。
「仮にも王族を称する身であるなら……最低限の礼儀くらいわきまえていただきたいものです」
その言葉に王女はまるで雷に打たれたかのようにビクッと体を震わせた。
目を見開き、わなわなと震わせた唇でうわ言のように呟く。
「……母様……ご、ごめんなさい……ごめんなさい」
(は? 母様……?)
突如として王女の様子が変わったことにセシリアは訝しげな表情を浮かべた。
そして、またあの言葉が聞こえたことに静かに首を傾げる。
「王女様……! 落ち着いてくださいませ」
「い、いや……母様、ごめんなさい……叩かないで……」
様子のおかしい王女を侍女は必死に慰めていた。
突然始まった不可解なやりとりにセシリアは一言も発さずその様子をただ見つめていた。
(何なの、いったい……)
突然やって来たかと思えば錯乱し始めた王女にさすがのセシリアも引き気味である。
どうしようかと悩んでいると、一台の馬車が門前に近づいてきた。
「王女様、お迎えにあがりました」
王女の馬車の直後に停まったもう一台の馬車。その扉が静かに開き、現れたのは王太子妃だった。
彼女は王女を一瞥した後、セシリアに向かって深々と頭を下げる。
「ガーネット侯爵夫人、突如のご訪問、無礼の段どうかご容赦くださいませ」
この混沌たる場に現れた王太子妃の存在にセシリアは安堵の息をつく。
王女の隣に座っていた侍女と思しき人物が馬車を降りてセシリアへと迫る。
しかし、セシリアの鋭い眼光に射すくめられ、侍女はビクッと震えてその場に凍りついた。
「貴女こそ私の話を聞いていなかったのかしら? 事前にお約束もない、名乗られてもいない相手をどう心得ろと?
おかしなことをおっしゃいますのね……」
まるで歴戦の猛者の如く一切の隙のないセシリアの迫力に気圧された侍女は、涙を浮かべて首を横に振った。
「お分かりいただけたのなら早々にお帰りを。私も暇ではございませんの」
「そんな……せっかく来たのに。せめて中で侯爵様の帰りを待たせてちょうだい!」
「お断りします。見知らぬ方をそう易々と招き入れるほど当家の門は軽うございませんの」
図々しい、と言わんばかりの蔑んだ目を向けられて王女は愕然とした。
「……どうして? わたくしがこんなに頼んでいるのに……」
それは非難ではなく純粋な驚きからくる発言だった。
自分の願いを拒む者など、ただ一人を除いてこの世には存在しなかった。
それなのに、何故よりにもよって格下の侯爵夫人から辛辣なまでの拒絶を受けているのだろう。そんな戸惑いから王女は哀しそうな顔でセシリアを見つめる。
「何故、ここまで無礼な扱いをされた私が貴女様の望みを叶えねばなりませんの? 貴族には貴族の道理というものがございます。きちんと作法に則り、礼を尽くした行動をしてくださればこちらも快くお迎えしたものを……不躾にいきなり訪ねるなど以ての外。お迎えする準備の時間を相手に与えないというのは礼を欠いた行動です」
はっきりと正論を突きつけられた王女は、顔を引きつらせたまま、呆然とセシリアを見つめていた。
「仮にも王族を称する身であるなら……最低限の礼儀くらいわきまえていただきたいものです」
その言葉に王女はまるで雷に打たれたかのようにビクッと体を震わせた。
目を見開き、わなわなと震わせた唇でうわ言のように呟く。
「……母様……ご、ごめんなさい……ごめんなさい」
(は? 母様……?)
突如として王女の様子が変わったことにセシリアは訝しげな表情を浮かべた。
そして、またあの言葉が聞こえたことに静かに首を傾げる。
「王女様……! 落ち着いてくださいませ」
「い、いや……母様、ごめんなさい……叩かないで……」
様子のおかしい王女を侍女は必死に慰めていた。
突然始まった不可解なやりとりにセシリアは一言も発さずその様子をただ見つめていた。
(何なの、いったい……)
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「王女様、お迎えにあがりました」
王女の馬車の直後に停まったもう一台の馬車。その扉が静かに開き、現れたのは王太子妃だった。
彼女は王女を一瞥した後、セシリアに向かって深々と頭を下げる。
「ガーネット侯爵夫人、突如のご訪問、無礼の段どうかご容赦くださいませ」
この混沌たる場に現れた王太子妃の存在にセシリアは安堵の息をつく。
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