初夜に訪れたのは夫ではなくお義母様でした

わらびもち

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衝撃の報せ

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 しばらくして、執事が集会所へ現れた。涙はすでに止まっていたが、目元の赤みはまだ残っていた。

「お義母様はまだお目覚めに?」

「はい。未だ気を失っていらっしゃいます。今は御者が傍に」

「そう……。では、あなたはここに残って手当てを受けて。私は領主館に行って代官に協力をお願いしてきます」

 このまま使用人たちをここに留めておくわけにはいかない。
 復興半ばの村に、これほど多くの人々を預け続けるのはあまりに心苦しい。

「お疲れの奥様にそのようなお役目を担わせるわけにはまいりません! 私が行ってまいります」

「いいえ、まずは手当てを受けて。私たちが帰ってくるまで屋敷にいたせいで、まだ手当てしてないんでしょう? そのままじゃ傷跡が残ってしまうわ」

「…………ッ!!」

 セシリアの言葉に、執事は感極まったような表情を浮かべた。
 彼は屋敷の留守を任された責任感から、主人であるセシリアが戻るまで一人きりで避難もせず、屋敷を守り続けていたのだ。
 その苦労を理解し、さらに労わってくれるセシリアの優しさと器の大きさに、止まっていたはずの涙が再び彼の目に滲む。

「領主館へ全員を移動させられるよう、夜までに準備を整えておくわ。村長、それまでご迷惑をおかけしますがよろしいかしら?」

「もちろんです。奥様のお願いとあらば、何なりとお力添えいたします」

 村長が力強く頷くのを見てセシリアは満足そうに微笑み、馬車へと急いだ。
 馬車に乗り、領主館へと向かう。到着すると、館の前には既に代官が控えていた。

「お待ちしておりました、奥様。ご無事で何よりです。悲劇の報せは村人から聞いております。このような事態、誠に……」

 深く頭を下げる代官にセシリアは軽く首を横に振った。

「心配してくれてありがとう。私のことよりも使用人たちの為に助力を願いたいの。多くは今宵の宿もなく、なかには遠方から来ている者もいます。どうか、彼らに一時の庇護と、帰郷のための馬車を」

「もちろんです。領主館の離れを今宵は開放し、明朝には順に、彼らの故郷までの送迎を手配いたしましょう。物資も必要であればすぐに取り寄せます」

「感謝します。……こんな状況では、私の力だけではとても……」

「なにをおっしゃいますか、奥様。わたくしめは公爵様より奥様をお支えするよう遣わされた者。どうぞ、ご遠慮なくお頼りくださいませ」

「ありがとう……頼もしいわ」

「勿体なきお言葉。奥様も、どうかまずはお休みください。さぞお疲れのことでしょう」

「大丈夫よ。体力には自信があるもの。それより、寝台を貸していただける? お義母様を休ませてあげたいの」

「イザベラ様もいらっしゃっているのですか。畏まりました。ご案内いたします」

「ありがとう。お願い」

 そうしてセシリアは馬車の中で眠っているイザベラをそっと横抱きにし、外へと運び出した。

「奥様!? そのようなお役目はわたしがいたします!」

 驚いた様子の代官が慌てて申し出たが、セシリアはきっぱりと首を振って断った。

「いえ、大丈夫よ。案内してちょうだい」

 か細い腕で、軽々とイザベラを持ち上げるセシリアに圧倒された代官は「は、はあ……」とだけ答えた。
 イザベラを寝台へと寝かせた後、御者にも休むよう促したが、彼はそれを丁重に断り、避難所にいる使用人たちを迎えに行くと申し出た。「大変な時だからこそ、私にもできることをさせてください」と力強く言われ、セシリアはその言葉に甘えて彼に任せることにした。

 そうしてセシリアはこれからやるべきことを頭の中で順に整理した。
 明日の移送の準備、物資の手配、方々への連絡、とやることは山積みだ。休んでなどいられない。

 ふと、キャサリンのことが頭をよぎった。
 無事に帰れたかという心配もあるが、屋敷で預かったばかりにこんな目に遭わせてしまったことを、セシリアは少し後悔していた。娘をこんなことに巻き込んでしまい、オニキス子爵夫妻にも申し訳ない。

 だが、キャサリンを送った使用人が戻って放った一言が、セシリアの後悔を根底から覆すことになる。

「オニキス子爵家が……賊に襲撃されました……!」

「なんですって!?」

 あまりにも衝撃的な報せにセシリアは目を見開き叫ぶような声を漏らすのだった。
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