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有名人な嫁と、地に落ちる義理の息子の評判
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「あれはまさかレディ・サフィー? 無敗の女王と名高いあの……」
「あれが無敗の女王か……。今まで一度もチップを取られたことがないと有名な、あの……」
──は? なに?
イザベラは思わず足を止めて周囲を見渡した。
人々の視線は全て隣にいるセシリアへと注がれ、皆口々に彼女を“無敗の女王”と呼んでいる。
「……え、あんた、ここじゃ有名なの……?」
イザベラが思わず小声で尋ねると、セシリアは優雅に微笑んだ。
「ええ、常連ではありますね。父や兄がギャンブル好きなので、よく連れてきてもらいました。まあ私に比べたら弱いんですけどね……」
それだけ言うと、はやる気持ちを抑えきれないのかセシリアは足早に先へと進む。イザベラはその後を慌てて追いかけた。セシリアはルーレットの台の前で足を止め、いつの間にか購入したチップをディーラーの前に置き勝負を挑む。勝負が終わる頃には彼女のチップは倍以上まで増えていた。
──え? 今、何が起こったの……?
ギャンブルに詳しくないイザベラには何が起こったのか分からなかった。
ただ、周りの人間が熱狂するようにセシリアを褒め称えているところから、彼女がすごーくギャンブルに強いということだけは理解した。
「流石は無敗の女王。鮮やかな勝利、実に見事……」
感心したようなディーラーの言葉を涼しい顔で受けるセシリア。
イザベラはその様子を呆気にとられながら眺めていた……。
「はあ……楽しい。連れてきてくれてありがとうございます、お義母様」
「そう……よかったわね」
頬を上気させはしゃぐセシリアにイザベラは疲れ切った顔で笑う。
「お義母様は勝負なさらないんですか? せっかく来たのですから、何かやりましょうよ」
「いや、わたくしはいいわ……。見ているだけでもう充分……」
元々ギャンブルが得意というわけでもないし、好きというわけでもない。
それにあんな圧倒的な強さを見せられてやる勇気もない。
「あんたの為に来たのだから、あんたが楽しんでいればそれでいいのよ……」
「まあ……! お義母様はなんてお優しい方なのかしら……。私は果報者です、こんな心優しい方がお義母様で……。夫は結婚式の夜に何も言わず何処かへ出かけてしまうほどのド屑ですが、優しいお義母様の存在は私にとって何よりの救いですわ……」
周囲に聞こえるほどの声量で嘆くセシリア。
悲しそうな顔で俯いているが、それが演技だということがイザベラには分かる。
だって、彼女の口の端がニヤリと上がっているから。
「何だって……結婚式の夜に外出? 信じられない……なんて非常識な」
「花嫁を放置するなんて有り得ませんわ。なんて酷い男なのでしょう、クイーンの夫となった方は……」
「しかも外出することを花嫁に告げないなんて……夜通し来ない夫を待っていろということ? よくそんな非道な真似が出来ること……信じられませんわ」
案の定セシリアの言葉を聞いた周囲の人間はここにいない彼女の夫を非難し始めた。
イザベラは周囲を見渡し、「あーあ……」と小声で呟いた。
──これでここにいる人達にエリオットの所業が伝わってしまったわね……。
この場にいるのはほぼ貴族だ。明日にはエリオットが初夜を放棄するという非常識な真似をしたことが社交界中に広まるだろう。
セシリアは夫にされたことを悲しんではいないようだが、怒ってはいるのだろう。
そしてされたことに対して泣き寝入りをする気はないのだと、今はっきりそれが分かった。彼女はわざと周囲に聞こえるように夫の非道な所業を話し、社会的な制裁を与えるつもりなのだ。
それに気づいたところでイザベラは嫁を止める気はなかった。
エリオットに関しては完全に自業自得だし、セシリアにはそれに制裁を加える権利がある。それに、イザベラにとってエリオットは義理の息子といえども折り合いは悪い。悪い評判が広まらぬよう阻止するほどの情はなかった。
「あれが無敗の女王か……。今まで一度もチップを取られたことがないと有名な、あの……」
──は? なに?
イザベラは思わず足を止めて周囲を見渡した。
人々の視線は全て隣にいるセシリアへと注がれ、皆口々に彼女を“無敗の女王”と呼んでいる。
「……え、あんた、ここじゃ有名なの……?」
イザベラが思わず小声で尋ねると、セシリアは優雅に微笑んだ。
「ええ、常連ではありますね。父や兄がギャンブル好きなので、よく連れてきてもらいました。まあ私に比べたら弱いんですけどね……」
それだけ言うと、はやる気持ちを抑えきれないのかセシリアは足早に先へと進む。イザベラはその後を慌てて追いかけた。セシリアはルーレットの台の前で足を止め、いつの間にか購入したチップをディーラーの前に置き勝負を挑む。勝負が終わる頃には彼女のチップは倍以上まで増えていた。
──え? 今、何が起こったの……?
ギャンブルに詳しくないイザベラには何が起こったのか分からなかった。
ただ、周りの人間が熱狂するようにセシリアを褒め称えているところから、彼女がすごーくギャンブルに強いということだけは理解した。
「流石は無敗の女王。鮮やかな勝利、実に見事……」
感心したようなディーラーの言葉を涼しい顔で受けるセシリア。
イザベラはその様子を呆気にとられながら眺めていた……。
「はあ……楽しい。連れてきてくれてありがとうございます、お義母様」
「そう……よかったわね」
頬を上気させはしゃぐセシリアにイザベラは疲れ切った顔で笑う。
「お義母様は勝負なさらないんですか? せっかく来たのですから、何かやりましょうよ」
「いや、わたくしはいいわ……。見ているだけでもう充分……」
元々ギャンブルが得意というわけでもないし、好きというわけでもない。
それにあんな圧倒的な強さを見せられてやる勇気もない。
「あんたの為に来たのだから、あんたが楽しんでいればそれでいいのよ……」
「まあ……! お義母様はなんてお優しい方なのかしら……。私は果報者です、こんな心優しい方がお義母様で……。夫は結婚式の夜に何も言わず何処かへ出かけてしまうほどのド屑ですが、優しいお義母様の存在は私にとって何よりの救いですわ……」
周囲に聞こえるほどの声量で嘆くセシリア。
悲しそうな顔で俯いているが、それが演技だということがイザベラには分かる。
だって、彼女の口の端がニヤリと上がっているから。
「何だって……結婚式の夜に外出? 信じられない……なんて非常識な」
「花嫁を放置するなんて有り得ませんわ。なんて酷い男なのでしょう、クイーンの夫となった方は……」
「しかも外出することを花嫁に告げないなんて……夜通し来ない夫を待っていろということ? よくそんな非道な真似が出来ること……信じられませんわ」
案の定セシリアの言葉を聞いた周囲の人間はここにいない彼女の夫を非難し始めた。
イザベラは周囲を見渡し、「あーあ……」と小声で呟いた。
──これでここにいる人達にエリオットの所業が伝わってしまったわね……。
この場にいるのはほぼ貴族だ。明日にはエリオットが初夜を放棄するという非常識な真似をしたことが社交界中に広まるだろう。
セシリアは夫にされたことを悲しんではいないようだが、怒ってはいるのだろう。
そしてされたことに対して泣き寝入りをする気はないのだと、今はっきりそれが分かった。彼女はわざと周囲に聞こえるように夫の非道な所業を話し、社会的な制裁を与えるつもりなのだ。
それに気づいたところでイザベラは嫁を止める気はなかった。
エリオットに関しては完全に自業自得だし、セシリアにはそれに制裁を加える権利がある。それに、イザベラにとってエリオットは義理の息子といえども折り合いは悪い。悪い評判が広まらぬよう阻止するほどの情はなかった。
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