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逃げた花婿
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晴れやかな空の下、純白の衣装に身を包んだ若い男女が歩いてくる。
真紅のカーペットの上を、ゆっくりと。
二人の新たな門出を祝う、沢山の人々に手を振りながら。
(あら…………?)
華やかな礼服を纏った招待客の中に、一人だけ場違いな服装をした者がこちらを見ていた。
(いえ、見ているというよりは……睨まれている?)
質素なワンピース姿のその女は射殺さんばかりの眼差しをこちらに向けてくる。
そして思い切り空気を吸うような仕草を見せた後、周囲の歓声に負けぬほどの大声を張り上げた。
「リック―! アタシよ! ドリスよー! 迎えに来たの! 一緒に逃げましょうー!!」
女は場違いな台詞を喉が張り裂けんばかりの声量で叫ぶ。
突然の出来事に皆驚いてその場に固まってしまったが、一人だけその声に反応し動いた者がいた。
「ドリス! ああ、僕の最愛! 迎えにきてくれたんだね!!」
満面の笑みで女の元に駆け寄り、その手をとるのは花婿のエーリック・アルバン。
そう、今日は彼と花嫁ディアナ・セレネの結婚式だ。
たった今彼はディアナと共に永遠の愛を誓い合った、神の御前で。
なのに数刻も経たぬうちから別の女を“最愛”と呼び、手に手を取り合って逃げていく。
あまりにも唐突な出来事に誰も何も出来なかった。
花嫁も、招待客も、親族でさえも。
逃げていく花婿と闖入者の女の後ろ姿を呆然と眺めていた―――。
真紅のカーペットの上を、ゆっくりと。
二人の新たな門出を祝う、沢山の人々に手を振りながら。
(あら…………?)
華やかな礼服を纏った招待客の中に、一人だけ場違いな服装をした者がこちらを見ていた。
(いえ、見ているというよりは……睨まれている?)
質素なワンピース姿のその女は射殺さんばかりの眼差しをこちらに向けてくる。
そして思い切り空気を吸うような仕草を見せた後、周囲の歓声に負けぬほどの大声を張り上げた。
「リック―! アタシよ! ドリスよー! 迎えに来たの! 一緒に逃げましょうー!!」
女は場違いな台詞を喉が張り裂けんばかりの声量で叫ぶ。
突然の出来事に皆驚いてその場に固まってしまったが、一人だけその声に反応し動いた者がいた。
「ドリス! ああ、僕の最愛! 迎えにきてくれたんだね!!」
満面の笑みで女の元に駆け寄り、その手をとるのは花婿のエーリック・アルバン。
そう、今日は彼と花嫁ディアナ・セレネの結婚式だ。
たった今彼はディアナと共に永遠の愛を誓い合った、神の御前で。
なのに数刻も経たぬうちから別の女を“最愛”と呼び、手に手を取り合って逃げていく。
あまりにも唐突な出来事に誰も何も出来なかった。
花嫁も、招待客も、親族でさえも。
逃げていく花婿と闖入者の女の後ろ姿を呆然と眺めていた―――。
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