茶番には付き合っていられません

わらびもち

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帰宅

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 真夜中に邸へと帰還した私を見て門番の一人が急いで邸の中へと駆けていった。
 予定よりも早く、そしてこんな夜遅くに帰ってきたので只事ではないと瞬時に判断したのだろう。

 流石は我が家の門番、仕事が早い。使えない王宮使用人共とは段違いだ。

「お嬢様! こんな時間に如何なされましたか!? それにその者達は……」

 残った門番が急いで門を開け、馬車を通す。そして護衛騎士が引く荷車の中にいた数名のミノムシ状態の兵士を見て困惑した。

「これらはわたくしに無礼を働いた狼藉者よ。いいこと、これらを見たことを外に漏らしては駄目よ。分かったかしら?」

「…………はい! お嬢様の仰せのままに」

 やはり我が家の門番は優秀だ。この一言だけで意味を理解してくれたのだから。
 
 今のところ王宮の兵士を捕縛するところは誰にも見られていない。
 彼等の身柄を邸に入れてしまい、それを見た門番も他言しなければ彼等の行方は外に漏れない。つまりは、彼等の生殺与奪の権利を完全に当家にある。このまま始末したとしても、こちらが「兵士には会っていない」と白を切ることも可能だ。

そのよからぬ考えを彼等も理解したのか、私と目が合った瞬間大粒の涙を流してモゴモゴと何かを叫ぼうと頑張っている。

「ミシェル! こんな夜中にどうした!?」

 その時、父と母がこちらに駆け寄ってきた。
 寝間着姿でも構わず急いで飛び出してくれたようだ。娘への愛を感じる。

「お父様、お母様、こんな夜更けに帰ってきてしまい申し訳ございません」

「謝ることなどない。一体何があったんだ? …………その者達は?」

 ミノムシ状態の兵士を見た瞬間、父の顔が真顔に戻った。
 娘を心配する父親の顔からエルリアン家を預かる当主の顔へ。その変化に背中がぞくりと粟立った。

「はい、お父様。実は…………」

 ここまでに起こった出来事を全て話すと、父の目から光が消えた。

 え、怖っ……。これ、お父様の本気で怒った時の目だわ……。

「委細承知した。その者達を邸内へ運べ。疲れているところ悪いがミシェルも来なさい」

 父の後ろを歩き、邸へと向かう。
 見れば母からも怒気が溢れており、それを感じとったミノムシ達がガタガタと震えだした。

 邸内の玄関ホールにて父が騎士にミノムシ達の口布を外すよう命じる。
 転がされた彼等はそのまま口々に喚きだした。

「王の下命を受けた我らにこのような真似が許されると思うてか!!」
「何て無礼な! 何様のつもりだ!」
「小娘風情が王命に逆らいおって……覚悟はできているのだろうな!!」

 先程まで泣きながら震えていたくせに、口が自由になった途端これだ。
 煩いなぁ……とうんざりしていると、父が酷く冷たい声を彼等に浴びせた。

「お前達こそ我が娘に無礼を働いて覚悟はできているのだろうな?」

 地の底を這うような声に煩かった彼が一瞬で押し黙った。
 うん、怖い。娘の私でも怖いよ、パパ。

「子供の我儘のようなくだらない王命など聞く義理はない。何を勘違いしているかは知らないが、何でも王命を出せば臣下が言う事をきくとでも?」

「くだらないなどと! 勝手に帰ってしまったそちらのご息女に非があるだろう!?」

「皇太子殿下と大公殿下に許可を貰っているのにか? だいたい……王命まで使って我が娘を足止めして何をするつもりだった?」

 その質問に対してミノムシ達はそれぞれ反応が違った。
 総勢3名の内2名は「何をって……そこまで聞いていないな」と目を見合わせていたのに対し、1名は顔を青くして俯いている。どうやらこの青い顔の兵士がこの中で長を務めているようだ。

「はん、下衆が。おい、こいつらを拷問して情報を全て吐き出させろ」

 父が騎士にそう命じると、兵士達は分かり易く慌て始めた。

「…………は? 待てっ! 我々を拷問だと!?」

「我等は王宮の兵士だぞ!? そんな真似が許されると思っているのか!」

 ギャアギャアと喚く彼等に今度は母がひどく冷たい声をかけた。

「許されるも何も……貴方達、まさかここから? 王宮の兵士は随分とお目出度い頭をしているのね…………」

 その言葉に兵士達はピタリと黙った。
 黙ったというより絶句したと言ったほうが正しいだろう。
 彼等の顔色は青を通り越して真っ白になっていた。
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