三國志 on 世説新語

ヘツポツ斎

文字の大きさ
112 / 142
晋編2 竹林七賢

劉伶1  全裸オヤジの矜持

しおりを挟む
劉伶身長六尺,貌甚醜悴,而悠悠忽忽,土木形骸。(容止13)


劉伶りゅうれいは身長が 140㎝ あまり、
その顔つきも甚だ醜かったが、
常に悠々とした振る舞いでおり、
自らの身体を土か木のようなものだと
見做していた。


劉伶恆縱酒放達,或脫衣裸形在屋中,人見譏之。伶曰:「我以天地為棟宇,屋室為(巾軍)衣,諸君何為入我(巾軍)中?」(任誕6)


どんな感じだったかと言うと、まっぱ。
家の中にいる時、酒を飲みながら、全裸。

やばい。

おいお前キチガイかよ、
ある人が劉伶をからかった。

すると劉伶は言う。

「俺は天地を家、家をふんどしとしている。

 なんで貴方がたは、
 俺のふんどしの中に潜り込んできた?」

いやいや……。


劉伶著酒德頌,意氣所寄。(文學69)


さて、そんな劉伶さん。
のちの世に残した文章は、ただ一編。
酒德頌しゅとくしょう」のみである。

ここには、かれの気概が記されていた。


 ○


酒德頌

有大人先生者
以天地為一朝 萬期為須臾
日月為扃牖 八荒為庭衢
 大人先生、と呼ばれる人がいる。
 長らくの時を悠然と生き、
 太陽や月を窓と見なし、
 世界全てを庭とみていた人だ。
 
行無轍跡 居無室廬
幕天席地 縱意所如
 どこに赴くにも足跡を残さず、
 決まった家を持つこともない。
 空を天井、地面を席とし、
 心の赴くままに過ごしている。

行則操卮執瓢 動則挈榼提壺
唯酒是務 焉知其餘
 どこかに移動するときには
 杯を手にし、酒樽を抱える。
 務めとすべきはただ飲酒、
 他のなにもが余事である。
 
有貴介公子 縉紳處士
聞吾風聲 議其所以
乃奮袂攘襟 怒目切齒
陳說禮法 是非鋒起
 貴公子、紳士らが、
 己の風評を耳にして、
 その出所を求めて躍起になり、
 ムキになって
 礼法うんぬんを説くころ。

先生於是方捧罌承糟
銜杯漱醪
 先生はそれを眺めながら、
 杯を掲げ、濁り酒で口を漱ぐ。

奮髯箕踞 枕麴藉糟
無思無慮 其樂陶陶
 ざんばら髪で、足を投げ出し、
 酒ぬかに顔をうずめて。
 何も考えず、憂慮もなく。
 ただただ、陶然としているのだ。

兀然而醉 慌爾而醒
 ほんわりと酔い、ふと、醒める。 

靜聽不聞雷霆之聲
熟視不見太山之形
 耳を澄ましても、
 雷の音すら聞こえず。
 目を凝らしても、
 山の形すら判然としない。

不覺
寒暑之切肌
利欲之感情
 気付くこともない。
 暑さ寒さが肌を刺すことも、
 欲望が感情を揺さぶることにも。

俯觀萬物之擾擾
如江漢之載浮萍
 いと高き所より、
 世の中の騒がしきことを眺める。
 どうだ、彼らのせわしなきこと、
 長江、漢水の流れに翻弄される
 木の葉のようではないか。

二豪侍側焉
如蜾蠃之與螟蛉
 喧々諤々とする貴公子らの側で
 ただただたたずまうその有様は、
 ジガバチが桑虫を背負って
 あくせくとしているかのようではないか。



えっなにこの全裸オヤジ……
かっこいい……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...