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第一章
中学生
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朔が駆け寄ってきて、ハンカチが血で汚れるのを躊躇わずに膝を押さえてくれたことが脳裏に焼き付いていた。
普段の朔からするとらしくない行動だ。
だって、僕以外だったら心配する姿は想像できるけど、僕に対しては全く想像できなかったから。
少しは良いところもあるじゃん、と見直しかけたが、そもそも怪我をしたのってこいつが腕を引っ張ってくるからだった。
本当に優しいんだか意地悪なんだかややこしいやつだ。
結局、苦手意識は消えないまま小学校を卒業した。
そして、同じ小学校の子たちの多くが進学する中学へ。もちろん朔とも同じ中学で過ごすことになった。
朔は陸上部に入部し、真白は吹奏楽部に入った。部活も仲の良い顔ぶれもまるで違い、クラス替えで別々になった年もあった。
それでも、なぜか委員会だけは必ず同じになった。
「真白ちゃん。ここの問題わかんないんだけど、教えてよ」
委員会が終わると僕はさっさと帰りたいのにも関わらず、毎回捕まって謎の勉強会をする羽目になる。
なんで謎なのかって、それは僕より遥かに頭がいいはずの朔が僕に勉強を教わることを口実に始まる勉強会だからだ。
いったい僕なんかが何を教えられると言うのか。
結局は僕は教える側から教えられる側へと変わり、最終的には
「なんだよお前、こんな簡単な問題もわかんないの?」
と嘲笑われることになる。
そんなに嫌なら断って帰って仕舞えば良いとはわかっている。
でも実際、朔に勉強を教わるようになってから成績が驚くほど上がったので、親に塾に入れられずに助かっている状態だ。
だが、毎回日が暮れるまで付き合わされることになるのは解せない。
僕が黙って荷物をまとめて帰る準備をすると、朔はそれをみて軽く舌打ちをした。
「チッ」
机に突っ伏したまま、ぼそっと呟く。
「なあ真白ちゃん、もうちょっと相手してけよ。すぐ帰るなって」
「は?もう外は真っ暗なんだよ。自分で勉強してろ」
「うるせーな。そんなんだから友達いねーんじゃねえの?だから俺とばっかいるんだ」
「な!誰のせいで帰れないと思ってんだよ!」
僕は乱暴に残りの道具を仕舞い、さっさと鞄を持って教室のドアを開けた。
「ったく、つまんねー奴」
後ろからわざと聞こえるように吐き捨てられる。
だったら、僕に関わらなければいいだろ。
僕からはもうとっくに話しかけるのはやめてるんだから。
なのにそっちは顔を合わせれば嫌味を言ってくるし、僕が怒れば楽しそうに笑うんだ。
所詮、僕はあいつに丁度いい玩具とでも思われてるんだろうな。
側から見れば委員会終わりに仲良く勉強を教え合う友達同士に見えるのか周囲からはよく「二人セット」でからかわれることもあった。
僕は全く嬉しくない。
早く帰ってゲームがしたいんだ。
教室から出ていくと、朔も慌てて追ってきた。
まだ、僕をからかい足りなかったのか?
帰るルートも殆ど同じだから、家に着くまで一緒にいなきゃならないと思うと気が重くなる。
急いで靴を履いて立ち上がると、後ろから「あの、」っと控えめに声を掛けられた。
メイクをして、髪を可愛く巻いている男なら誰でも好きになりそうな小動物系の女の子と目が合う。
みるからに緊張していて、僕にまでその緊張が移ってきそうだった。
でも、女の子が見ているのは僕じゃない。
僕じゃなくて、後ろにいる朔を見てる。
直感だけどなぜかわかった。
「あの、朔くん……私、ずっと前から好きです!」
ーーーほら、やっぱり
友達から朔が毎日誰かしらに呼び出され告白を受けているという噂を聞いたことがあった。
誇張された噂かもしれないけれどあながち間違ってはいないのかもしれない。
小学校の頃は美少女という感じだった朔は今ではちょっと成長して男らしさが出てきている。
美少女から美少年になった朔は女子受けが抜群だ。
目の前で告白された朔をチラッとみると満更でもなさそうに両手をポケットに入れて肩をすくめている。
「えー、マジで?……ま、ありがとな」
彼の声は軽く、余裕ぶっているように聞こえる。
そして、ニヤリと僕の方を向き、耳に顔を近づけてきた。
「ほら、真白ちゃん見ろよ。俺ってやっぱモテるんだなー」
僕は思わず顔を背ける。
こんなところでも、いちいちモテ自慢してくるのか、こいつ。
「そういうのは良いから、ほら、ちゃんと聞いて」
せっかくの告白なのに、なぜか僕を揶揄うことを優先する朔に痺れを切らし、健気に返事を待ち続ける女の子のためにも、小さい声で苦言いう。朔は一瞬、面白くないっというような顔をするが、すぐ僕にはしない、爽やかな笑顔を作って目の前の女の子に向き直った。
「よかったら、私と付き合ってもらえませんか」
「ごめんな、俺は誰とも付き合う気はないんだ」
まさか、断るとは思わなかった。
こんなに可愛い子から告白されて、断るなんて。
予想外の返事に女の子は泣きそうな顔で走り去る。
僕は口をあんぐり開けて、その後ろ姿を見送った。
「そんなに驚くことか?俺、告白されたらホイホイ付き合うようなチャラ男とはちげーからな」
「……はぁ?」
「あー、まあ、お前はモテないから理解できないか!」
ムカついた。ムカつきすぎる。
思わず拳を握りしめ、声を荒げてしまった。
「うるせーよ!何偉そうに!それに俺だって別にモテないわけじゃねーんだぞ!」
「ふっ、じゃあそのうち、真白ちゃんも体験するかもな、50年後くらいに」
僕はさらに顔を真っ赤にして、心の中で「こいつ、ほんとに腹立つ!」と叫んだ。
普段の朔からするとらしくない行動だ。
だって、僕以外だったら心配する姿は想像できるけど、僕に対しては全く想像できなかったから。
少しは良いところもあるじゃん、と見直しかけたが、そもそも怪我をしたのってこいつが腕を引っ張ってくるからだった。
本当に優しいんだか意地悪なんだかややこしいやつだ。
結局、苦手意識は消えないまま小学校を卒業した。
そして、同じ小学校の子たちの多くが進学する中学へ。もちろん朔とも同じ中学で過ごすことになった。
朔は陸上部に入部し、真白は吹奏楽部に入った。部活も仲の良い顔ぶれもまるで違い、クラス替えで別々になった年もあった。
それでも、なぜか委員会だけは必ず同じになった。
「真白ちゃん。ここの問題わかんないんだけど、教えてよ」
委員会が終わると僕はさっさと帰りたいのにも関わらず、毎回捕まって謎の勉強会をする羽目になる。
なんで謎なのかって、それは僕より遥かに頭がいいはずの朔が僕に勉強を教わることを口実に始まる勉強会だからだ。
いったい僕なんかが何を教えられると言うのか。
結局は僕は教える側から教えられる側へと変わり、最終的には
「なんだよお前、こんな簡単な問題もわかんないの?」
と嘲笑われることになる。
そんなに嫌なら断って帰って仕舞えば良いとはわかっている。
でも実際、朔に勉強を教わるようになってから成績が驚くほど上がったので、親に塾に入れられずに助かっている状態だ。
だが、毎回日が暮れるまで付き合わされることになるのは解せない。
僕が黙って荷物をまとめて帰る準備をすると、朔はそれをみて軽く舌打ちをした。
「チッ」
机に突っ伏したまま、ぼそっと呟く。
「なあ真白ちゃん、もうちょっと相手してけよ。すぐ帰るなって」
「は?もう外は真っ暗なんだよ。自分で勉強してろ」
「うるせーな。そんなんだから友達いねーんじゃねえの?だから俺とばっかいるんだ」
「な!誰のせいで帰れないと思ってんだよ!」
僕は乱暴に残りの道具を仕舞い、さっさと鞄を持って教室のドアを開けた。
「ったく、つまんねー奴」
後ろからわざと聞こえるように吐き捨てられる。
だったら、僕に関わらなければいいだろ。
僕からはもうとっくに話しかけるのはやめてるんだから。
なのにそっちは顔を合わせれば嫌味を言ってくるし、僕が怒れば楽しそうに笑うんだ。
所詮、僕はあいつに丁度いい玩具とでも思われてるんだろうな。
側から見れば委員会終わりに仲良く勉強を教え合う友達同士に見えるのか周囲からはよく「二人セット」でからかわれることもあった。
僕は全く嬉しくない。
早く帰ってゲームがしたいんだ。
教室から出ていくと、朔も慌てて追ってきた。
まだ、僕をからかい足りなかったのか?
帰るルートも殆ど同じだから、家に着くまで一緒にいなきゃならないと思うと気が重くなる。
急いで靴を履いて立ち上がると、後ろから「あの、」っと控えめに声を掛けられた。
メイクをして、髪を可愛く巻いている男なら誰でも好きになりそうな小動物系の女の子と目が合う。
みるからに緊張していて、僕にまでその緊張が移ってきそうだった。
でも、女の子が見ているのは僕じゃない。
僕じゃなくて、後ろにいる朔を見てる。
直感だけどなぜかわかった。
「あの、朔くん……私、ずっと前から好きです!」
ーーーほら、やっぱり
友達から朔が毎日誰かしらに呼び出され告白を受けているという噂を聞いたことがあった。
誇張された噂かもしれないけれどあながち間違ってはいないのかもしれない。
小学校の頃は美少女という感じだった朔は今ではちょっと成長して男らしさが出てきている。
美少女から美少年になった朔は女子受けが抜群だ。
目の前で告白された朔をチラッとみると満更でもなさそうに両手をポケットに入れて肩をすくめている。
「えー、マジで?……ま、ありがとな」
彼の声は軽く、余裕ぶっているように聞こえる。
そして、ニヤリと僕の方を向き、耳に顔を近づけてきた。
「ほら、真白ちゃん見ろよ。俺ってやっぱモテるんだなー」
僕は思わず顔を背ける。
こんなところでも、いちいちモテ自慢してくるのか、こいつ。
「そういうのは良いから、ほら、ちゃんと聞いて」
せっかくの告白なのに、なぜか僕を揶揄うことを優先する朔に痺れを切らし、健気に返事を待ち続ける女の子のためにも、小さい声で苦言いう。朔は一瞬、面白くないっというような顔をするが、すぐ僕にはしない、爽やかな笑顔を作って目の前の女の子に向き直った。
「よかったら、私と付き合ってもらえませんか」
「ごめんな、俺は誰とも付き合う気はないんだ」
まさか、断るとは思わなかった。
こんなに可愛い子から告白されて、断るなんて。
予想外の返事に女の子は泣きそうな顔で走り去る。
僕は口をあんぐり開けて、その後ろ姿を見送った。
「そんなに驚くことか?俺、告白されたらホイホイ付き合うようなチャラ男とはちげーからな」
「……はぁ?」
「あー、まあ、お前はモテないから理解できないか!」
ムカついた。ムカつきすぎる。
思わず拳を握りしめ、声を荒げてしまった。
「うるせーよ!何偉そうに!それに俺だって別にモテないわけじゃねーんだぞ!」
「ふっ、じゃあそのうち、真白ちゃんも体験するかもな、50年後くらいに」
僕はさらに顔を真っ赤にして、心の中で「こいつ、ほんとに腹立つ!」と叫んだ。
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