異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話〜君の想いが届くまで〜

一優璃 /Ninomae Yuuri

文字の大きさ
24 / 51
二章

旅立ち

しおりを挟む
 ダンジョンでの実践訓練を重ねて、ようやく僕は戦えると言ってもらえるまでになった。
 アレンに「背中預けてもいいくらいになったな」と言われたときは本当に嬉しかった。

 そして今日。
 僕たちは、王城前で行われる出立の儀(旅立つ前の儀式)に参列している。

「真白くん、ついにですね!」

 隣のレミーユが、目を輝かせて僕の袖を引っ張る。

 広場には整列した騎士たち。
 高く掲げられた王国旗が、朝日を受けて赤く揺れていた。

魔王討伐の旅が始まる。
ようやくスタート地点に立てた。

 門の前に立つ王のもとへと歩を進めると、自然と背筋が伸びた。

 これからは、命の危険と隣り合わせの道を歩む。
 昨日までの穏やかな訓練の日々とは、もう違う。
 恐いと思う気持ちと、胸が弾むような楽しさとが、半分ずつ僕の心を占めていた。

 隣に立つ三人をみる。

 アレンの前を見据える凛とした横顔。
 レミーユの静かな祈りの仕草。
 オルフェンの頼もしい姿。

 四人でなら、どんな困難でも乗り越えられる。
 自然と、そんな確信が芽生える。

 王の前に再び膝をつきながら、僕はそう考えていた。

「勇敢なる者たちよ。そなたらの歩む道は決して平坦ではない。だが恐れるな。国は、民は、そしてこの私も、常にそなたらと共にある。この国の未来を託すに足る者たちよ。胸を張ってゆけ。光は必ず、闇の向こうにあるであろう」

王の言葉にアレンが一歩前に出る。

「陛下の御心に応え、この命を賭して魔王を討ち、この国に再び平穏を取り戻すことを、ここに誓います」

荘厳な響きが広間に反響する。
続いて、レミーユとオルフェンが胸に手を当てた。

「「国王陛下のために!」」

僕も慌てて手を胸に当て、少し遅れて口を開く。

「……国王陛下の、ために」

声が小さく、震えた。
だけど、誰もそれを責めなかった。

王は側近に合図を送り、赤い絨毯の上へと木箱がいくつも運ばれてきた。
蓋が開かれると、布に包まれた武具と旅の物資が整然と並んでいる。

「これらは、そなたらが旅路を進むための装備と糧である。国庫より、余の名において授けよう。受け取るがよい」

アレンがまず一歩前へ出る。
侍従が恭しく差し出したのは、細身の剣。
王家直属の騎士にのみ与えられる紋章が柄に刻まれている。

「勇者アレン。そなたの忠誠と力量は、余がよく知っている。この刃が、そなたの道を切り開くであろう」

「ありがたく頂戴いたします、陛下」

アレンはその剣を慎重に受け取り胸元に掲げた。

続いてレミーユの前に、魔力を増幅する蒼色の杖が置かれる。

「レミーユ、そなたの力は旅路に不可欠だ。魔道を極め、仲間を支えるがよい」

レミーユは静かに微笑み、杖に手を添えた。

オルフェンには頑丈な革の盾と、彼の体格に合わせた戦槌が授けられる。

「その力は、仲間を守るためにこそある。頼んだぞ」

「はっ!」

そして、最後に僕の前にも木箱が運ばれた。
中を覗くと、旅のための必需品である水袋、保存食、魔法石の小袋が入っている。

「真白よ。そなたは異邦の者でありながら、この国の未来に関わる道を選んだ。その勇気を讃え、二つのものを授けよう。これは魔力の乱れを抑え、術を安定させる指輪だ。そしてこのローブは、そなたの魔力を阻まず、旅路でも身を守る加護を持つ」

 僕は思わず息をのんだ。
 指輪は触れただけで、冷たいのにどこか脈打つような感覚があった。

「……僕に、これを?」

「うむ。魔法の才ある者としての証だ。誇り、励むが良い」

 胸が熱くなり、僕は深く頭を下げた。

ローブを羽織ればふわりと温かなものが全身を包み込み、
指輪を指にはめると、金属とは思えないほど確かな重みが指先に宿り、その存在を静かに主張してきた。

 アレンたちが横で小さく頷く気配がする。

「……ありがとうございます」


王の言葉が終わると、馬車の列がゆっくりと王都の門をくぐり抜けていく。
通りに並んだ人々が手を振り、笑顔で「頑張って!」と声をかけてくれる。

それに笑顔で応えながら、やがて王都の影が小さくなって言った。
馬車を降りて土の道を歩き出す。
空気が澄んでいて、風の匂いが気持ちいい。
ここから先は、本当に未知の領域だ。

「いよいよだな」

 先頭を歩くアレンが、短く言った。
 その背中は、もう戦場の空気をまとっているようだった。

「魔王城へ向かう道中、まずは近くの村で物資調達と寝床の確保だ。
 村がない区間に入ったら、馬車で休むか……野宿になる」

「そうね。非常食も揃えたし、生きるための物資が尽きないように気を配らないと。
 武器やアイテムも使えば減っていくものだから、補充を忘れずにね」

 レミーユは落ち着いて見えた。
 でも、その声はほんの少し震えていた。

「それにしても、真白くんがこんなに早く僕たちの戦力になるとは思ってなかったよ。頑張ったな」

 オルフェンの言葉に、肩の力が少し抜けた。

「ありがとうございます! みんなの足を引っ張らないように頑張ります!」

「真白くんの力は、もう魔物相手に十分通用してるわ。
 自信を持っていきましょう」

 レミーユが柔らかく微笑む。

 二人の言葉は、不思議と胸に深く染みた。
 そして僕は、小さく息を吸って、心の中でつぶやく。

『元の世界に、戻るために』

 その一言が、僕の人生を前へと押し出してくれる。
 怖くても、逃げられない。使命を果たすんだ。

 こうして僕たちの旅は、静かに幕を開けた。
 ――まだ誰も知らない終わりへ向かって。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい

マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。 しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。 社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。 新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で…… あの夏の日々が蘇る。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

処理中です...