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第三章
同級生
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ピコンピコンっ
LINEの通知音で目を覚ます。
今日は休みの日だから随分と寝てしまったらしい。
時計の針は昼の12時を指していた。
誰からだろうと見てみれば有馬からこんにちはと書かれた可愛いクマのスタンプが送られてきていた。
あいつもこういうスタンプ使うんだ。
ちょっと微笑ましい気持ちになる。
のそりと体を起こしてベッドの上に座り、おはようの4文字を打った。
《今起きたところ?おはよう》
有馬からの返信がすぐに返ってくる。
〈休みの日だからぐっすり寝てた〉
《俺も休みは昼まで寝ちゃうな。いい夢見れた?》
こんな他愛もない会話を有馬とするようになるなんて異世界に行く前は思ってもみなかったな。
それに、話していると気持ちが落ち着くような安心感がある。
友人って一緒に騒いだりはしゃいだりできる楽しさはあるけれど、有馬はそれとはちょっと違う。
居心地良くて、そばにいると安心するのに、お互いに照れあったり変に緊張する時もある。
これまでにない不思議な関係だ。
スマホを伏せて、もう一度ベッドに倒れ込む。
二度寝するほど眠くはないけれど、起き上がる理由も特にない。
……いや、あるか。
冷蔵庫の中、確か何もなかった気がする。
重たい体を引きずるようにして立ち上がり、着替えて外に出た。
休日の昼下がり。
人通りはそれなりにあるけれど、平日ほどせかせかしていない。
コンビニで適当に昼飯を買って、帰ろうとした、その時だった。
「……あれ?」
見覚えのある背中に、足が止まる。
振り向いた先に、間違いでなければ高校の時の友人の姿があった。
後ろ姿だから顔ははっきり確認できないが、歩き方の癖や雰囲気から、たぶんそうだと思う。
気づけばその背中を追いかけて駆け寄り、肩に手をトンと置いた。
「鈴やん?」
振り返った顔は記憶の中のままの鈴木だった。
目を丸くし、僕だと分かった途端、歯を見せて笑う。
「つき……しま?え、本当に月島じゃん!!!!」
鈴木が大声で叫んだ。
驚きと喜びが入り混じった懐かしい声を聞いて、僕も名前を呼び返した。
「鈴やん!!十年ぶり!!!!」
「え!え!!本物?本当に?」
「なに、幽霊でも見るみたいな反応」
僕はそう言ってクスクス笑う。
僕にとっては二年、でも鈴やんにとっては十年ぶりで、僕という存在が薄くなっていてもおかしくない。
もしかしたら、気まずくなるかもしれないと弱気にもなっていたけれど、変わらず友人として接してくれることに安心した。
「だってさ! 急に目の前にいるんだもん!」
「あははっ、本物だよ!」
次の瞬間強く抱きしめられ、僕もおのずと抱きしめ返す。
そうして人目も憚らず再会を噛みしめた。
「お前、こんなに元気になったんだな!良かった!本当に良かったよ!」
「鈴やんも元気そうで良かった!もう会えないかと思ってた。外出ても全然見かけないし」
僕がそう言うと、鈴木は背中に回した腕を緩めてゆっくりと身体を離した。
「俺と佐藤は県外で就職したからな。長い休みにならないとなかなか地元に帰ってこれなくて」
「そうだったんだ」
「でも、有馬から月島の意識が戻ったって聞いて絶対会いに行くって決めてたんだ」
「有馬から?」
この二人ってそんなに仲良かったっけ?と心の中で首をかしげる。
少なからず、鈴やんは有馬のこと一方的に嫌っていたように記憶している。
「うん、てか、立ち話もなんだし、どっか店入ろか」
大声で話していたせいか、行き交う人たちの視線がちらちらとこちらに向く。
このままでは落ち着かないと思い、僕たちはゆっくり話せる近くのファミレスに入ることにした。
「ここもよく3人で来たよな」
「ああ、ゲーセンの帰りとかにね」
昔の楽しかった日々の思い出が甦ってくる。
「てかさ、どう、十年ぶりの俺。良い感じに大人の余裕みたいなのが出るように過ごしてるんだけど」
「鈴やんは変わらないな」
「昔から大人の余裕があったってことかな多分」
「そうそう、そういうこと」
「適当言ってるな!俺はわかるぞ、天才だから!もっとさ、こうダンディな感じになった!とかかっこよくなったとか」
「良い意味で本当に変わってなくて安心したよ、良い意味で!」
「良い意味……ならいっか」
「良いんだ。僕はどう?なんか変わった?」
「全く微塵も変わってない」
「同じじゃねえか」
二人で笑う。
笑い声が落ち着いたところで、鈴やんがドリンクバーのグラスを指で弄びながら口を開いた。
佐藤はIT系の会社で就職し、鈴やんはアプリ会社に勤めているらしい。
「俺のとこはさ、もともと働きたいって思ってたところだから全然いいんだけど」
少し間を置いて、肩をすくめる。
「佐藤の会社は、もう正真正銘のブラック企業」
「まじか。それ、大丈夫なのか」
「全然。転職サイトを目を血走らせながら探してる」
「……それはきついな」
「でさ」
鈴やんがこちらを見る。
「月島は、今どうしてる?」
「僕はカフェのバイトを始めたよ」
「いいじゃん!今度そこ行ってもいい?」
「もちろん、いつでも来いよ。日月以外全部入ってるから」
「よっしゃ、日月以外な」
少し安心したように頷いてから、鈴やんは続けた。
「今度佐藤もこっちに帰ってくるから3人でご飯行こーぜ」
「じゃ、次は鈴やんの奢りな」
「なんでだよ」
そんなやり取りをしながら店を出た。
少しだけ、高校の頃に戻ったような時間だった。
LINEの通知音で目を覚ます。
今日は休みの日だから随分と寝てしまったらしい。
時計の針は昼の12時を指していた。
誰からだろうと見てみれば有馬からこんにちはと書かれた可愛いクマのスタンプが送られてきていた。
あいつもこういうスタンプ使うんだ。
ちょっと微笑ましい気持ちになる。
のそりと体を起こしてベッドの上に座り、おはようの4文字を打った。
《今起きたところ?おはよう》
有馬からの返信がすぐに返ってくる。
〈休みの日だからぐっすり寝てた〉
《俺も休みは昼まで寝ちゃうな。いい夢見れた?》
こんな他愛もない会話を有馬とするようになるなんて異世界に行く前は思ってもみなかったな。
それに、話していると気持ちが落ち着くような安心感がある。
友人って一緒に騒いだりはしゃいだりできる楽しさはあるけれど、有馬はそれとはちょっと違う。
居心地良くて、そばにいると安心するのに、お互いに照れあったり変に緊張する時もある。
これまでにない不思議な関係だ。
スマホを伏せて、もう一度ベッドに倒れ込む。
二度寝するほど眠くはないけれど、起き上がる理由も特にない。
……いや、あるか。
冷蔵庫の中、確か何もなかった気がする。
重たい体を引きずるようにして立ち上がり、着替えて外に出た。
休日の昼下がり。
人通りはそれなりにあるけれど、平日ほどせかせかしていない。
コンビニで適当に昼飯を買って、帰ろうとした、その時だった。
「……あれ?」
見覚えのある背中に、足が止まる。
振り向いた先に、間違いでなければ高校の時の友人の姿があった。
後ろ姿だから顔ははっきり確認できないが、歩き方の癖や雰囲気から、たぶんそうだと思う。
気づけばその背中を追いかけて駆け寄り、肩に手をトンと置いた。
「鈴やん?」
振り返った顔は記憶の中のままの鈴木だった。
目を丸くし、僕だと分かった途端、歯を見せて笑う。
「つき……しま?え、本当に月島じゃん!!!!」
鈴木が大声で叫んだ。
驚きと喜びが入り混じった懐かしい声を聞いて、僕も名前を呼び返した。
「鈴やん!!十年ぶり!!!!」
「え!え!!本物?本当に?」
「なに、幽霊でも見るみたいな反応」
僕はそう言ってクスクス笑う。
僕にとっては二年、でも鈴やんにとっては十年ぶりで、僕という存在が薄くなっていてもおかしくない。
もしかしたら、気まずくなるかもしれないと弱気にもなっていたけれど、変わらず友人として接してくれることに安心した。
「だってさ! 急に目の前にいるんだもん!」
「あははっ、本物だよ!」
次の瞬間強く抱きしめられ、僕もおのずと抱きしめ返す。
そうして人目も憚らず再会を噛みしめた。
「お前、こんなに元気になったんだな!良かった!本当に良かったよ!」
「鈴やんも元気そうで良かった!もう会えないかと思ってた。外出ても全然見かけないし」
僕がそう言うと、鈴木は背中に回した腕を緩めてゆっくりと身体を離した。
「俺と佐藤は県外で就職したからな。長い休みにならないとなかなか地元に帰ってこれなくて」
「そうだったんだ」
「でも、有馬から月島の意識が戻ったって聞いて絶対会いに行くって決めてたんだ」
「有馬から?」
この二人ってそんなに仲良かったっけ?と心の中で首をかしげる。
少なからず、鈴やんは有馬のこと一方的に嫌っていたように記憶している。
「うん、てか、立ち話もなんだし、どっか店入ろか」
大声で話していたせいか、行き交う人たちの視線がちらちらとこちらに向く。
このままでは落ち着かないと思い、僕たちはゆっくり話せる近くのファミレスに入ることにした。
「ここもよく3人で来たよな」
「ああ、ゲーセンの帰りとかにね」
昔の楽しかった日々の思い出が甦ってくる。
「てかさ、どう、十年ぶりの俺。良い感じに大人の余裕みたいなのが出るように過ごしてるんだけど」
「鈴やんは変わらないな」
「昔から大人の余裕があったってことかな多分」
「そうそう、そういうこと」
「適当言ってるな!俺はわかるぞ、天才だから!もっとさ、こうダンディな感じになった!とかかっこよくなったとか」
「良い意味で本当に変わってなくて安心したよ、良い意味で!」
「良い意味……ならいっか」
「良いんだ。僕はどう?なんか変わった?」
「全く微塵も変わってない」
「同じじゃねえか」
二人で笑う。
笑い声が落ち着いたところで、鈴やんがドリンクバーのグラスを指で弄びながら口を開いた。
佐藤はIT系の会社で就職し、鈴やんはアプリ会社に勤めているらしい。
「俺のとこはさ、もともと働きたいって思ってたところだから全然いいんだけど」
少し間を置いて、肩をすくめる。
「佐藤の会社は、もう正真正銘のブラック企業」
「まじか。それ、大丈夫なのか」
「全然。転職サイトを目を血走らせながら探してる」
「……それはきついな」
「でさ」
鈴やんがこちらを見る。
「月島は、今どうしてる?」
「僕はカフェのバイトを始めたよ」
「いいじゃん!今度そこ行ってもいい?」
「もちろん、いつでも来いよ。日月以外全部入ってるから」
「よっしゃ、日月以外な」
少し安心したように頷いてから、鈴やんは続けた。
「今度佐藤もこっちに帰ってくるから3人でご飯行こーぜ」
「じゃ、次は鈴やんの奢りな」
「なんでだよ」
そんなやり取りをしながら店を出た。
少しだけ、高校の頃に戻ったような時間だった。
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