301 / 343
プロポーズ
4
しおりを挟む
リューラに連れて来られたのは皆が集まっている広場に繋がる扉の前。
扉を開けてリューラが再び姿を見せただけで大歓声で、俺は後ろに引いていようと思ったのにリューラに手を引かれてしまった。
こんな場所に俺が共に並んでいるなんておかしいのに野次は飛んでこないことに少し驚く。
「お祝いの準備はできておりますよ!」
一部から拍手と共に聞こえてきてそっちを見ると、手を振っていたのはあの婦人と宝飾店の店主だった。
「やっぱり!?」
「そうなんだー!」
と色めく声も聞こえてくる。だが、
「男同士だぞ?」
「そうするとお世継ぎはどうなるんだ!?」
少しずつ心配の声もあがり始めた。
それでもリューラは俺の腰を引き寄せて微笑む。
「リューラ……」
「大丈夫」
力強く言うと、パッと前を向いた。
いつものように完全には静まっていない気もする。
「私はこの一年……いえ、先王である父を亡くしてからずっと……気を張り詰めてきたんだと思います」
それでもリューラが口を開くと、民衆は皆口を閉じてリューラを見つめた。
「折れそうな時、挫けて立ち上がれないような時……力になってくれたのがこのサライドです」
「おい、俺は何も……」
「いつも……頑張って来れたのはサラに認められたかったから……」
リューラはこっちを向いてそっと俺の頬に触れる。
そして、片膝を付いてこっちを見上げた。
「ずっと好きだったよ。だから、俺と結婚して欲しい」
そうして差し出されたのは赤に金の刺繍が施された箱。
パカッとその蓋を開けられると、そこにはさっきお互いの指に着けたのと同じように二つのリングが並んでいた。
扉を開けてリューラが再び姿を見せただけで大歓声で、俺は後ろに引いていようと思ったのにリューラに手を引かれてしまった。
こんな場所に俺が共に並んでいるなんておかしいのに野次は飛んでこないことに少し驚く。
「お祝いの準備はできておりますよ!」
一部から拍手と共に聞こえてきてそっちを見ると、手を振っていたのはあの婦人と宝飾店の店主だった。
「やっぱり!?」
「そうなんだー!」
と色めく声も聞こえてくる。だが、
「男同士だぞ?」
「そうするとお世継ぎはどうなるんだ!?」
少しずつ心配の声もあがり始めた。
それでもリューラは俺の腰を引き寄せて微笑む。
「リューラ……」
「大丈夫」
力強く言うと、パッと前を向いた。
いつものように完全には静まっていない気もする。
「私はこの一年……いえ、先王である父を亡くしてからずっと……気を張り詰めてきたんだと思います」
それでもリューラが口を開くと、民衆は皆口を閉じてリューラを見つめた。
「折れそうな時、挫けて立ち上がれないような時……力になってくれたのがこのサライドです」
「おい、俺は何も……」
「いつも……頑張って来れたのはサラに認められたかったから……」
リューラはこっちを向いてそっと俺の頬に触れる。
そして、片膝を付いてこっちを見上げた。
「ずっと好きだったよ。だから、俺と結婚して欲しい」
そうして差し出されたのは赤に金の刺繍が施された箱。
パカッとその蓋を開けられると、そこにはさっきお互いの指に着けたのと同じように二つのリングが並んでいた。
10
あなたにおすすめの小説
え、待って。「おすわり」って、オレに言ったんじゃなかったの?!【Dom/Sub】
水城
BL
マジメな元体育会系Subの旗手元気(はたて・げんき、二十代公務員)は、プチ社畜。
日曜日、夕方近くに起き出して、その日初めての食事を買いに出たところで、いきなり「おすわり」の声。
身体が勝手に反応して思わずその場でKneelする旗手だったが、なんと。そのcommandは、よその家のイヌに対してのモノだった。
犬の飼い主は、美少年な中学生。旗手は成り行きで、少年から「ごほうび」のささみジャーキーまで貰ってしまう始末。
え、ちょっと待って。オレってこれからどうなっちゃうの?! な物語。
本を読まない図書館職員と本が大好きな中学生男子。勘違いな出会いとそれからの話。
完結後の投稿です。
あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~
竜鳴躍
BL
―政略結婚の相手から虐げられ続けた主人公は、ずっと見守ってくれていた騎士と…―
アミュレット=バイス=クローバーは大国の間に挟まれた小国の第二王子。
オオバコ王国とスズナ王国との勢力の調整弁になっているため、オオバコ王国の王太子への嫁入りが幼い頃に決められ、護衛のシュナイダーとともにオオバコ王国の王城で暮らしていた。
クローバー王国の王族は、男子でも出産する能力があるためだ。
しかし、婚約相手は小国と侮り、幼く丸々としていたアミュレットの容姿を蔑み、アミュレットは虐げられ。
ついには、シュナイダーと逃亡する。
実は、アミュレットには不思議な力があり、シュナイダーの正体は…。
<年齢設定>※当初、一部間違っていたので修正済み(2023.8.14)
アミュレット 8歳→16歳→18歳予定
シュナイダー/ハピネス/ルシェル 18歳→26歳→28歳予定
アクセル 10歳→18歳→20歳予定
ブレーキ 6歳→14歳→16歳予定
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜
黒崎サトウ
BL
男子大学生の高梨千秋が引っ越したアパートの隣人は、生涯許さないと決めた男であり、中学の頃少しだけ付き合っていた先輩、柳瀬英司だった。
だが、一度鉢合わせても英司は千秋と気づかない。それを千秋は少し複雑にも思ったが、これ好都合と英司から離れるため引越しを決意する。
しかしそんな時、急に英司が家に訪問してきて──?
年上執着×年下強気
二人の因縁の恋が、再始動する。
*アルファポリス初投稿ですが、よろしくお願いします。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った
しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー?
という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡
短編コメディです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる