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冷静
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「え、」
「え?いやだから、帰るって彼に伝えるだけですよ。」
「でも私たち今から…」
「それができないなら交渉は受けられないな。」
小夜は気づいた。助手席に乗った途端、完全に旭の勝利だ。こちらの要求を受けようが無視しようが小夜はここから一歩も動くことができない。
「早くかけてくださいよ。じゃなきゃ降りてください。お爺さんのところに報告しないといけないんだから。」
どこまで狡猾なんだ、と思いながら小夜は仕方なく朔也に電話した。
朔也は急に助手席に乗り込んだ小夜に驚き、追いかけようか悩んだが、小夜の言葉を信じてその場でまった。少ししてから朔也の携帯が鳴った。相手は小夜だった。朔也は小夜の方を向くと、小夜は真剣な顔で俯いていた。
「もしもし。」
<朔也くん…。私、今日はもう帰る。>
「…送ってもらうのか。」
<うん…。心配しないで。小さい頃からよく知ってる人なの。ちょっと大事な話があって。>
「小夜。」
<何?>
「今ここでお前を止めないと、しばらく会えない気がする。」
朔也はニヤニヤしながらこちらを見ている運転席の男を見ていた。男は楽しそうに手を振っている。
「もしそんなことになったら、夕方に隣駅に毎日いるから…来てくれ。」
<朔也く…ちょっ!!>
「小夜!!」
旭は小夜から携帯を強引に奪うと朔也と話し始めた。
「すみませんね~。ちょっと時間が押してて。小夜ちゃん今日家の人と約束事あったの忘れてたらしくってね。ほんとに困っちゃう子だよね~。あ!不審な男がとか思ってるんでしょ?大丈夫大丈夫!安全に送り届けるから。何なら小夜ちゃんの家まで一緒に行こうか?そしたら…」
「やめて!!」
小夜はベラベラと喋る旭についに怒りを見せた。
「おー、怖い怖い。怒った顔はお母さんにそっくりだな。」
朔也はその会話の終始を冷静に聞いていた。
<そんな不審だなんて。さっき小夜からも信頼できる人だと聞いたので不安はありません。ただこの後も予定があったので、残念だったていうのでまた今度会おうと言っただけですよ。>
「ほー」
<小夜をよろしくお願いします。お母さんの花束はまた新しいのを置いておくからって小夜に伝えといてください。じゃあ、失礼します。>
朔也は電話を切った後、振り向くことなく歩いて行った。旭は朔也の意外な反応に一瞬真剣な表情を浮かべた。小夜はその顔に益々、恐怖を感じた。
「これで告げ口しないでもらえますか?」
「ん?俺は交渉を受ける条件で言ったんだよ。」
「目的は何なんですか?」
「なになに、怒っちゃった?ヤクザってこともしかして言ってないの?そりゃ、焦るよね。」
「さっきから分かっててふざけてますよね。良い加減にしてもらえますか!」
「そのセリフまんまお返しします。」
おちゃらけたテンションから旭は急に真剣モードになった。旭は小夜が黙ったところで車を動かした。
「お嬢さん、あなたバカじゃないでしょ。組の頭のいうこと聞けなくてどうやって生きていくんですか。」
「私は組の一員になった覚えはない。」
「へー、これはとんだお馬鹿さんだ。」
「何ですって!」
「あなたの血肉は何でできてるんですか。あなたはどうやって大きくなったんですか。貴方も頑張ってきたかもしれないが、全部おじいさんやお父さんが稼いだお金で大きくなったんでしょう。家を出て行きたいなら今すぐ出ればいい。でもそれができないのは一人ではまだ生きていけないからでしょ。百目鬼の家の娘ということが有利になった時だってあったんじゃないんですか?この家で生活している限り頭のいうことは聞かないと。それより自由がいいなら今すぐ出ていけばいい。お世話になった人全てを置いて。」
旭の言うことは筋が通っていた。小夜は何も言い返せない。育ててもらっていることが当たり前だと思っていた。子供の自分は守られるべき存在だと思っていた。だから被害者意識が抜けなかった。でも蓋をあければ我儘を言っていたのは自分だったのではないか、そう小夜は思えてきてしまった。ここ最近、朔也と過ごすうちに忘れていた。小夜はもう既に春会合で百目鬼の一人として顔を出してしまっている。本当であればより一層、組の一員としての行動が求められているはずだ。明らかに小夜は浮かれていた。その浮き足を今更になって掬われたのだ。
「で、交渉は?何か俺にとってのメリットがあるものを提示して下さい。」
「…あなたが欲しがっているものが分からない。教えて。」
「本当に正直な人だな~。申し訳ないけど、俺がお嬢さんのこの件を黙っておくメリットがない。むしろデメリットの方が多い。そして俺が要求するものはあなたには提供できないものだ。」
「そんな!」
「強いて言うなら、」
小夜の言葉を遮るように旭は大きな声を出した。
「もう二度とあの男に会わないでください。」
小夜は旭から一番聞きたくない言葉をストレートに言われ、たじろぐ他なかった。
「え?いやだから、帰るって彼に伝えるだけですよ。」
「でも私たち今から…」
「それができないなら交渉は受けられないな。」
小夜は気づいた。助手席に乗った途端、完全に旭の勝利だ。こちらの要求を受けようが無視しようが小夜はここから一歩も動くことができない。
「早くかけてくださいよ。じゃなきゃ降りてください。お爺さんのところに報告しないといけないんだから。」
どこまで狡猾なんだ、と思いながら小夜は仕方なく朔也に電話した。
朔也は急に助手席に乗り込んだ小夜に驚き、追いかけようか悩んだが、小夜の言葉を信じてその場でまった。少ししてから朔也の携帯が鳴った。相手は小夜だった。朔也は小夜の方を向くと、小夜は真剣な顔で俯いていた。
「もしもし。」
<朔也くん…。私、今日はもう帰る。>
「…送ってもらうのか。」
<うん…。心配しないで。小さい頃からよく知ってる人なの。ちょっと大事な話があって。>
「小夜。」
<何?>
「今ここでお前を止めないと、しばらく会えない気がする。」
朔也はニヤニヤしながらこちらを見ている運転席の男を見ていた。男は楽しそうに手を振っている。
「もしそんなことになったら、夕方に隣駅に毎日いるから…来てくれ。」
<朔也く…ちょっ!!>
「小夜!!」
旭は小夜から携帯を強引に奪うと朔也と話し始めた。
「すみませんね~。ちょっと時間が押してて。小夜ちゃん今日家の人と約束事あったの忘れてたらしくってね。ほんとに困っちゃう子だよね~。あ!不審な男がとか思ってるんでしょ?大丈夫大丈夫!安全に送り届けるから。何なら小夜ちゃんの家まで一緒に行こうか?そしたら…」
「やめて!!」
小夜はベラベラと喋る旭についに怒りを見せた。
「おー、怖い怖い。怒った顔はお母さんにそっくりだな。」
朔也はその会話の終始を冷静に聞いていた。
<そんな不審だなんて。さっき小夜からも信頼できる人だと聞いたので不安はありません。ただこの後も予定があったので、残念だったていうのでまた今度会おうと言っただけですよ。>
「ほー」
<小夜をよろしくお願いします。お母さんの花束はまた新しいのを置いておくからって小夜に伝えといてください。じゃあ、失礼します。>
朔也は電話を切った後、振り向くことなく歩いて行った。旭は朔也の意外な反応に一瞬真剣な表情を浮かべた。小夜はその顔に益々、恐怖を感じた。
「これで告げ口しないでもらえますか?」
「ん?俺は交渉を受ける条件で言ったんだよ。」
「目的は何なんですか?」
「なになに、怒っちゃった?ヤクザってこともしかして言ってないの?そりゃ、焦るよね。」
「さっきから分かっててふざけてますよね。良い加減にしてもらえますか!」
「そのセリフまんまお返しします。」
おちゃらけたテンションから旭は急に真剣モードになった。旭は小夜が黙ったところで車を動かした。
「お嬢さん、あなたバカじゃないでしょ。組の頭のいうこと聞けなくてどうやって生きていくんですか。」
「私は組の一員になった覚えはない。」
「へー、これはとんだお馬鹿さんだ。」
「何ですって!」
「あなたの血肉は何でできてるんですか。あなたはどうやって大きくなったんですか。貴方も頑張ってきたかもしれないが、全部おじいさんやお父さんが稼いだお金で大きくなったんでしょう。家を出て行きたいなら今すぐ出ればいい。でもそれができないのは一人ではまだ生きていけないからでしょ。百目鬼の家の娘ということが有利になった時だってあったんじゃないんですか?この家で生活している限り頭のいうことは聞かないと。それより自由がいいなら今すぐ出ていけばいい。お世話になった人全てを置いて。」
旭の言うことは筋が通っていた。小夜は何も言い返せない。育ててもらっていることが当たり前だと思っていた。子供の自分は守られるべき存在だと思っていた。だから被害者意識が抜けなかった。でも蓋をあければ我儘を言っていたのは自分だったのではないか、そう小夜は思えてきてしまった。ここ最近、朔也と過ごすうちに忘れていた。小夜はもう既に春会合で百目鬼の一人として顔を出してしまっている。本当であればより一層、組の一員としての行動が求められているはずだ。明らかに小夜は浮かれていた。その浮き足を今更になって掬われたのだ。
「で、交渉は?何か俺にとってのメリットがあるものを提示して下さい。」
「…あなたが欲しがっているものが分からない。教えて。」
「本当に正直な人だな~。申し訳ないけど、俺がお嬢さんのこの件を黙っておくメリットがない。むしろデメリットの方が多い。そして俺が要求するものはあなたには提供できないものだ。」
「そんな!」
「強いて言うなら、」
小夜の言葉を遮るように旭は大きな声を出した。
「もう二度とあの男に会わないでください。」
小夜は旭から一番聞きたくない言葉をストレートに言われ、たじろぐ他なかった。
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