65 / 87
試着室
しおりを挟む
あれから数日、某ドレスショップの試着室に小夜はいた。小夜が選んだのはシンプルなパーティードレス。しかし、色気と落ち着きを放つ深紅一色、背中と肩は大胆に開いており黒色のリボンが交差されて首元で縛られていた。鏡の前に立つ小夜はどこかの国のお姫様のように美しい…はずだった。小夜は何故か緊張した顔で自らの姿を見ていた。
(ど、どうしよう…。会えるのに、やっと会えるのに緊張してきた…)
数日前のあの縁側での話。小夜の背中をさする佐藤に気を使わせってしまったと思い、一粒流した涙を最後に話を終えた。
「あ、お嬢。宇津井の近況報告。」
「え?連絡とってないって…」
「いや、この前様子見に行ったら妙に忙しそうにしてたから電話して聞いたんですよ。」
「…足跡残らない?佐藤が危ないんじゃないの?」
「そんな頻繁にってわけでもないし、公衆電話でかけてますから。」
「そっか…。無理しないでね。」
「はい。ありがとうございます…。で、あいつが忙しそうにしてた理由なんですけど、」
「うん」
「どうやら近くの屋敷?で仮面舞踏会があるらしくて、そこに招待されて花の飾り付けをするらしいですよ。調べてみたら市議会の議員やら名門の大学教授やらその他諸々政界や経済界の顔効きが集まるらしいです。あいつなかなか腕を評価されてる人間なんですね。」
「…え、ん?なんて?」
「え、あー、何時代って感じですもんね。仮面舞踏会。最近、若い奴らで流行ってるらしくて…。同じようなことをしようとしてるらしいですよ…。あれ?お嬢?」
「うそ…」
「え、お嬢ー?もしもしー?」
「佐藤…それ、私たちも行くんだよ?」
「ん?…は!?」
ーーー現在ーーー
(ああああ!どうしよう、朔也くんに会いたい。でも仮面被らないとなんだよね…。気づかれるようなドレスがいいよね…)
「小夜。」
(このドレス、肌露出し過ぎかな。気づかれないかな、でもでも…)
「小夜!」
「はい!」
小夜が振り返るとそこには試着室のドアを持って怪訝そうにこちらを覗く武流がいた。武流はすでにタキシードを着ていた。
「…着れたら出てこいよ。」
「うん、ごめん…」
小夜は武流に急かされ、ドレスの裾を持ち上げ試着室を出た。武流の隣に立つとスタッフは満足そうに二人を見た。その横で着なれないタキシードにぎこちなくしながら小夜をみる佐藤もいた。
「まあ、大変お似合いですね…。フリルも柄もないものですが、アクセサリーやメイク、髪型によってはさまざまな雰囲気に変えられるものになっておりますし、シンプルであるが故に気品さやお客様の美しさが際立ちます。どうされますか?こちらにいたしますか?」
スタッフは饒舌にドレスの特徴を説明すると営業スマイルを崩すことなく小夜に購入を促す。小夜は歯切れが悪い返事をした後に、隣の武流にそっと目を移した。武流は小夜の頭からつま先をゆっくりと見回している。
「…どう思う?」
「お前が決めろよ。お前のドレスなんだから。」
「…目立つかな?」
「赤一色だからな。それにこの首の後ろの黒リボンが結構でかいし、他よりかは目立つと思う。」
「…そっか。」
小夜は満更でもないようにその赤いドレスに決めた。そのあとはドレスに合わせて靴やアクセサリー、バックをスッタフと相談しながら決めていく。それらに無頓着な男性陣はすでに着替え終え、小夜の全てが終わるのを待っていた。
「ではお客様、こちらで全てとなります。仮面の色がドレスにあったものだとよろしいですね。」
「そうですね。仮面が届くのはギリギリになってからだそうなので。本当に今日はありがとうございました。」
「いえいえ。それでは試着室の方へ。焦らずでよろしいですので、着替え終えたらカウンターの方にお越しください。一式全ての梱包を致します。」
小夜はスタッフに一礼すると試着室に戻った。改めて鏡の前の自分を見つめる。右肩のほくろが微かに顔を覗かせていた。そのほくろをそっと撫でる。小夜の目には緊張と期待と月日を過ごして重ねた切なさが表れていた。リボンにそっと手をかけ、解いていく。その途端、試着室のドアがガチャリと音を立てた。
(ど、どうしよう…。会えるのに、やっと会えるのに緊張してきた…)
数日前のあの縁側での話。小夜の背中をさする佐藤に気を使わせってしまったと思い、一粒流した涙を最後に話を終えた。
「あ、お嬢。宇津井の近況報告。」
「え?連絡とってないって…」
「いや、この前様子見に行ったら妙に忙しそうにしてたから電話して聞いたんですよ。」
「…足跡残らない?佐藤が危ないんじゃないの?」
「そんな頻繁にってわけでもないし、公衆電話でかけてますから。」
「そっか…。無理しないでね。」
「はい。ありがとうございます…。で、あいつが忙しそうにしてた理由なんですけど、」
「うん」
「どうやら近くの屋敷?で仮面舞踏会があるらしくて、そこに招待されて花の飾り付けをするらしいですよ。調べてみたら市議会の議員やら名門の大学教授やらその他諸々政界や経済界の顔効きが集まるらしいです。あいつなかなか腕を評価されてる人間なんですね。」
「…え、ん?なんて?」
「え、あー、何時代って感じですもんね。仮面舞踏会。最近、若い奴らで流行ってるらしくて…。同じようなことをしようとしてるらしいですよ…。あれ?お嬢?」
「うそ…」
「え、お嬢ー?もしもしー?」
「佐藤…それ、私たちも行くんだよ?」
「ん?…は!?」
ーーー現在ーーー
(ああああ!どうしよう、朔也くんに会いたい。でも仮面被らないとなんだよね…。気づかれるようなドレスがいいよね…)
「小夜。」
(このドレス、肌露出し過ぎかな。気づかれないかな、でもでも…)
「小夜!」
「はい!」
小夜が振り返るとそこには試着室のドアを持って怪訝そうにこちらを覗く武流がいた。武流はすでにタキシードを着ていた。
「…着れたら出てこいよ。」
「うん、ごめん…」
小夜は武流に急かされ、ドレスの裾を持ち上げ試着室を出た。武流の隣に立つとスタッフは満足そうに二人を見た。その横で着なれないタキシードにぎこちなくしながら小夜をみる佐藤もいた。
「まあ、大変お似合いですね…。フリルも柄もないものですが、アクセサリーやメイク、髪型によってはさまざまな雰囲気に変えられるものになっておりますし、シンプルであるが故に気品さやお客様の美しさが際立ちます。どうされますか?こちらにいたしますか?」
スタッフは饒舌にドレスの特徴を説明すると営業スマイルを崩すことなく小夜に購入を促す。小夜は歯切れが悪い返事をした後に、隣の武流にそっと目を移した。武流は小夜の頭からつま先をゆっくりと見回している。
「…どう思う?」
「お前が決めろよ。お前のドレスなんだから。」
「…目立つかな?」
「赤一色だからな。それにこの首の後ろの黒リボンが結構でかいし、他よりかは目立つと思う。」
「…そっか。」
小夜は満更でもないようにその赤いドレスに決めた。そのあとはドレスに合わせて靴やアクセサリー、バックをスッタフと相談しながら決めていく。それらに無頓着な男性陣はすでに着替え終え、小夜の全てが終わるのを待っていた。
「ではお客様、こちらで全てとなります。仮面の色がドレスにあったものだとよろしいですね。」
「そうですね。仮面が届くのはギリギリになってからだそうなので。本当に今日はありがとうございました。」
「いえいえ。それでは試着室の方へ。焦らずでよろしいですので、着替え終えたらカウンターの方にお越しください。一式全ての梱包を致します。」
小夜はスタッフに一礼すると試着室に戻った。改めて鏡の前の自分を見つめる。右肩のほくろが微かに顔を覗かせていた。そのほくろをそっと撫でる。小夜の目には緊張と期待と月日を過ごして重ねた切なさが表れていた。リボンにそっと手をかけ、解いていく。その途端、試着室のドアがガチャリと音を立てた。
20
あなたにおすすめの小説
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~
葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。
「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。
小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。
若くしてプロジェクトチームを任される彼は、
かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、
遠く、眩しい存在になっていた。
優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。
もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。
それでも——
8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。
これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる