14 / 26
14、プロポーズ?
しおりを挟む
「じゃあ、今日はここまでで、それぞれ来週までに割り当て分を解読してまとめてきてね。」
「お疲れ様でした。」
結局、あの後クロードが陛下に掛け合ってくれて、一週間で一階層解読はやらなくて良くなった。聖獣関係をメインに古い方からやっていけばいいことになった。
これは、元王子のコネではなく、城付き魔術師からの意見ということでいいよね?
相手の出自を知るというのも、良し悪しだな。元王子だと知らなければ、城付き魔術師さんは陛下に意見が言えてすごいな、で終わっていたのに、息子が父親と交渉してきたと思うと違うふうに見えてくる。しかし、出自を話してもいいとなると、私もルキウスに子供の頃の話をしてもいいのか。一緒に暮らしてお世話になり続けるなら、話したほうがいいかな・・・。
考え込んでいたら、ぽんと肩を叩かれた。
「お疲れ、ラシェル。荷物多いし、転移で城の外まで送って行くよ。」
私の手の中には模写本が積み重なっているが、この模写本術、なぜか模写本の重さが半分以下になるので、持ち運びやすいのだ。この術を開発した人は、そこまで考えてくれたのだろうか。魔力消費量が多いのが難点だが。だから、かさばるとは言え、重量はそこまでじゃない。私はクロードに礼を言って断ろうとしたのに、強引に持っていた模写本を取り上げられ、肩に手を回されたと思うと同時に、彼と転移していた。
転移先は緑だった。
「ここ、どこ?」
思わず最小単語のみを発した私は、肩に置かれているクロードの手を振り払って、周りを見渡した。緑に見えたのは、芝生と薔薇で、ちょうど時期なのか、色とりどりの花が咲いている。遠くに城の回廊が見えるから、ここは城内の誰でも行き来できる前庭だと思われた。
「なんでここ?研究所に近い門はもう少し向こうだよね?でも、図書館から歩くよりは近いから、助かったよ。ありがとう、クロード。」
頼んだわけではないが、ここまで連れてきてもらったからには、礼を言わねばなるまい。なぜここなのかは謎なままだが、彼の都合でここまでだったのだろうと、一人で納得する。では、割り当ての模写本を返してもらおうと手を伸ばすと、クロードがその手を取った。
不穏な気配を感じて、慌てて離れようとするが、きつく掴まれてそれができない。片手を掴まれたまま、最大限距離をとって相対する。
「クロード、私の分の模写本を返して。もう終業だけど、研究所に寄って行かないと。ルキウスも待っているし、早く戻らなくちゃ。」
「僕といるのに、他の男の名前を言わないでほしいな。」
「何言ってるのかわからないんだけど。お願いクロード、本を渡して頂戴。」
そう懇願した私の目の前で、クロードが持っていた模写本全てを、どこかへ転移させた。絶句した私の両手を握った彼は、美しい顔に爽やかな笑顔で言った。
「ラシェル、僕と結婚してください。」
「は?・・・・・・私の模写本、どこいったの?」
何を言っているのか、理解が追いつかなかった私は、気になっていたことを口に出してしまった。
クロードの顔が固まった。
「僕が一世一代の結婚の申込みをしたのに、返事がそれって、ひどいよ、ラシェル。」
ここは、はい、でしょ。と、とんでもない誘導をしてきた彼に、結婚の申込みってなんだ?!と焦った私は、なし崩しで『はい』と言わされないうちにはっきりと返事をした。
「お断りします。私は誰とも付き合わないし、結婚する気もないので。」
絶対にクロードとそういう関係になるものか、と意思を込めて睨む。彼は、不満そうな顔になって私の手を握ったまま、ぐっと距離を詰める。握られた手が痛い。
「自分でいうのも何だけど、僕は城付き魔術師だし、女の子に好かれる容姿だと思うし、元王子だし、結婚相手として申し分ないと思うのだけど、どうしてだめなの? 君、今、誰とも付き合ってないんでしょ? 何の問題があるわけ?」
意外そうに言うクロードに、私は呆れてしまった。
「クロード、私と貴方は同じ学校だったとはいえ、今日が初対面みたいなものじゃない。そんなよく知りもしない相手に、いきなり結婚を申しこまれて受ける人がどこにいるのよ。」
「多分、あちこちにいると思うよ。」
しれっと返してきたクロードは、どこまで自分に自信があるのだろう。全く自信がない私には羨ましいほどだ。
「じゃあ、そのあちこちにいる受けてくれる人に申し込めばいいじゃない。私は嫌よ。」
「僕だって選り好みはするよ。君がいいんだ。」
そんなことを言われたって、私にも選り好みする自由はあるのではないだろうか。もう、断ったし、このまま逃げたいが、その前に聞いておきたいことがある。
「なんで、会ったばかりの私なの?」
「うん、君が僕の理想の女性だったから。」
予想外の答えに私はどぎまぎしてしまった。そんなこと、今まで誰にも言われたことがない。
でも、待て、動揺するな私。自分のことすら全くできず、ほうっておけばひたすら自分の興味のあるものを追いかける私が、理想の女性なんて、おかしい。
「冗談でしょ?」
「冗談なものか。君は僕の理想そのものだよ。美しい黒髪で、Sランクの魔力があって、見た目もかわいらしい。」
褒められているんだろうけど、見た目ばかりで、それって、私じゃなくてもいいのでは。それに、彼は知らないだろうから、これだけは言っておかねば。
「クロード、褒めてくれてありがとう。だけど、この髪も見た目も、私一人じゃできないから、私が貴方を選んだら、すぐにぼさぼさ頭の着たきり雀の女になるわよ。私が今の私なのは、全部ルキウスのおかげなんだから。」
そう、私のこの外見はルキウスの手によるものだ。彼なくして、この私は存在しない。諦めて他の人にして、といったつもりだったのだが、言い方を間違えたらしい。
ルキウスの名前を出した途端、クロードの目が細められて声が低くなった。
「やっぱり、あの男がいいんだ? 君に会った時から苛ついていたんだけど、その髪に掛かってるとんでもない数の魔術も彼だよね。特に男除けがうるさくて。」
そう言いながらぐいっと握ったままの手を引っ張って更に自分の方へ引き寄せると、私の頭の後ろでひらりと手を振った。
途端に纏めてあった髪が解け、長い黒髪が背中へ流れる。
私は慌てて髪を押さえようとするが、両手を握られたままではどうしようもなく、落ちたリボンも拾わせてもらえない。
さらにクロードが言った、私の髪に掛かっている魔術の話にも驚いていた。
「髪に、術?」
時々、他の人にそういうことを言われたことがあるが、皆はっきりとは言わないし、私は何も感じられなかったから気にしていなかったのだが、不快感を与えるレベルだったの?!
「かけられている人が気づかないようになってたから、君は知らなかったんだろうけど、保護だの位置情報だの、君に好意を抱く男が近寄れないような術だのが、わんさか掛かってたよ。欠点はこうやって解くと解除されるところだけどね。ああ、すっきりした。」
にこっと笑ったクロードが、私の髪を弄びながら耳元でささやく。
「僕はいつでも君を歓迎するよ。君が僕を選んでくれたら、あの男が君にしていたことを僕がしてあげるから安心しておいで。」
クロードがご飯を作ってくれて、私の髪を結ってくれるところを想像したが、受け入れられないと思った。同時に他の人でも嫌だな、と思う自分に気付く。
私は首を振って、彼の紫色の瞳を見つめた。
「ごめんなさい。私が一緒にいたいのは貴方じゃなくて、ルキウスだって今、わかった。貴方には私なんかより、もっといい人がいると思う。」
どうやら、私は世話をしてもらうのも一緒に住むのも誰でもいいわけではなくて、ルキウスでないと嫌なようだ。たぶんそれは。
その時、私は視界の端に、城の回廊の方から走ってくるルキウスの姿を認めた。
「ルキウス、」
その名前を、声にだした途端、唇に何か柔らかい感触を感じた。そして、上方にあったはずのクロードの顔が真ん前にある。
今、何があった?
呆然として自分の前にいるクロードに視線を移す。唇を離した彼は、意地の悪い笑みを浮かべたまま、
「今は大人しく身を引くから、僕にファーストキスくらい頂戴。さあ、これで彼はどういう反応をするだろうね?」
言い捨てると、転移して消えた。
私は今起こったことと、それをルキウスに見られたことで頭が真っ白になった。それから、怖い顔で近づいてくるルキウスを見て、涙がこぼれてきた。
昔、髪を短くされて、彼に絶交された時のことが頭の中に蘇っていた。
「お疲れ様でした。」
結局、あの後クロードが陛下に掛け合ってくれて、一週間で一階層解読はやらなくて良くなった。聖獣関係をメインに古い方からやっていけばいいことになった。
これは、元王子のコネではなく、城付き魔術師からの意見ということでいいよね?
相手の出自を知るというのも、良し悪しだな。元王子だと知らなければ、城付き魔術師さんは陛下に意見が言えてすごいな、で終わっていたのに、息子が父親と交渉してきたと思うと違うふうに見えてくる。しかし、出自を話してもいいとなると、私もルキウスに子供の頃の話をしてもいいのか。一緒に暮らしてお世話になり続けるなら、話したほうがいいかな・・・。
考え込んでいたら、ぽんと肩を叩かれた。
「お疲れ、ラシェル。荷物多いし、転移で城の外まで送って行くよ。」
私の手の中には模写本が積み重なっているが、この模写本術、なぜか模写本の重さが半分以下になるので、持ち運びやすいのだ。この術を開発した人は、そこまで考えてくれたのだろうか。魔力消費量が多いのが難点だが。だから、かさばるとは言え、重量はそこまでじゃない。私はクロードに礼を言って断ろうとしたのに、強引に持っていた模写本を取り上げられ、肩に手を回されたと思うと同時に、彼と転移していた。
転移先は緑だった。
「ここ、どこ?」
思わず最小単語のみを発した私は、肩に置かれているクロードの手を振り払って、周りを見渡した。緑に見えたのは、芝生と薔薇で、ちょうど時期なのか、色とりどりの花が咲いている。遠くに城の回廊が見えるから、ここは城内の誰でも行き来できる前庭だと思われた。
「なんでここ?研究所に近い門はもう少し向こうだよね?でも、図書館から歩くよりは近いから、助かったよ。ありがとう、クロード。」
頼んだわけではないが、ここまで連れてきてもらったからには、礼を言わねばなるまい。なぜここなのかは謎なままだが、彼の都合でここまでだったのだろうと、一人で納得する。では、割り当ての模写本を返してもらおうと手を伸ばすと、クロードがその手を取った。
不穏な気配を感じて、慌てて離れようとするが、きつく掴まれてそれができない。片手を掴まれたまま、最大限距離をとって相対する。
「クロード、私の分の模写本を返して。もう終業だけど、研究所に寄って行かないと。ルキウスも待っているし、早く戻らなくちゃ。」
「僕といるのに、他の男の名前を言わないでほしいな。」
「何言ってるのかわからないんだけど。お願いクロード、本を渡して頂戴。」
そう懇願した私の目の前で、クロードが持っていた模写本全てを、どこかへ転移させた。絶句した私の両手を握った彼は、美しい顔に爽やかな笑顔で言った。
「ラシェル、僕と結婚してください。」
「は?・・・・・・私の模写本、どこいったの?」
何を言っているのか、理解が追いつかなかった私は、気になっていたことを口に出してしまった。
クロードの顔が固まった。
「僕が一世一代の結婚の申込みをしたのに、返事がそれって、ひどいよ、ラシェル。」
ここは、はい、でしょ。と、とんでもない誘導をしてきた彼に、結婚の申込みってなんだ?!と焦った私は、なし崩しで『はい』と言わされないうちにはっきりと返事をした。
「お断りします。私は誰とも付き合わないし、結婚する気もないので。」
絶対にクロードとそういう関係になるものか、と意思を込めて睨む。彼は、不満そうな顔になって私の手を握ったまま、ぐっと距離を詰める。握られた手が痛い。
「自分でいうのも何だけど、僕は城付き魔術師だし、女の子に好かれる容姿だと思うし、元王子だし、結婚相手として申し分ないと思うのだけど、どうしてだめなの? 君、今、誰とも付き合ってないんでしょ? 何の問題があるわけ?」
意外そうに言うクロードに、私は呆れてしまった。
「クロード、私と貴方は同じ学校だったとはいえ、今日が初対面みたいなものじゃない。そんなよく知りもしない相手に、いきなり結婚を申しこまれて受ける人がどこにいるのよ。」
「多分、あちこちにいると思うよ。」
しれっと返してきたクロードは、どこまで自分に自信があるのだろう。全く自信がない私には羨ましいほどだ。
「じゃあ、そのあちこちにいる受けてくれる人に申し込めばいいじゃない。私は嫌よ。」
「僕だって選り好みはするよ。君がいいんだ。」
そんなことを言われたって、私にも選り好みする自由はあるのではないだろうか。もう、断ったし、このまま逃げたいが、その前に聞いておきたいことがある。
「なんで、会ったばかりの私なの?」
「うん、君が僕の理想の女性だったから。」
予想外の答えに私はどぎまぎしてしまった。そんなこと、今まで誰にも言われたことがない。
でも、待て、動揺するな私。自分のことすら全くできず、ほうっておけばひたすら自分の興味のあるものを追いかける私が、理想の女性なんて、おかしい。
「冗談でしょ?」
「冗談なものか。君は僕の理想そのものだよ。美しい黒髪で、Sランクの魔力があって、見た目もかわいらしい。」
褒められているんだろうけど、見た目ばかりで、それって、私じゃなくてもいいのでは。それに、彼は知らないだろうから、これだけは言っておかねば。
「クロード、褒めてくれてありがとう。だけど、この髪も見た目も、私一人じゃできないから、私が貴方を選んだら、すぐにぼさぼさ頭の着たきり雀の女になるわよ。私が今の私なのは、全部ルキウスのおかげなんだから。」
そう、私のこの外見はルキウスの手によるものだ。彼なくして、この私は存在しない。諦めて他の人にして、といったつもりだったのだが、言い方を間違えたらしい。
ルキウスの名前を出した途端、クロードの目が細められて声が低くなった。
「やっぱり、あの男がいいんだ? 君に会った時から苛ついていたんだけど、その髪に掛かってるとんでもない数の魔術も彼だよね。特に男除けがうるさくて。」
そう言いながらぐいっと握ったままの手を引っ張って更に自分の方へ引き寄せると、私の頭の後ろでひらりと手を振った。
途端に纏めてあった髪が解け、長い黒髪が背中へ流れる。
私は慌てて髪を押さえようとするが、両手を握られたままではどうしようもなく、落ちたリボンも拾わせてもらえない。
さらにクロードが言った、私の髪に掛かっている魔術の話にも驚いていた。
「髪に、術?」
時々、他の人にそういうことを言われたことがあるが、皆はっきりとは言わないし、私は何も感じられなかったから気にしていなかったのだが、不快感を与えるレベルだったの?!
「かけられている人が気づかないようになってたから、君は知らなかったんだろうけど、保護だの位置情報だの、君に好意を抱く男が近寄れないような術だのが、わんさか掛かってたよ。欠点はこうやって解くと解除されるところだけどね。ああ、すっきりした。」
にこっと笑ったクロードが、私の髪を弄びながら耳元でささやく。
「僕はいつでも君を歓迎するよ。君が僕を選んでくれたら、あの男が君にしていたことを僕がしてあげるから安心しておいで。」
クロードがご飯を作ってくれて、私の髪を結ってくれるところを想像したが、受け入れられないと思った。同時に他の人でも嫌だな、と思う自分に気付く。
私は首を振って、彼の紫色の瞳を見つめた。
「ごめんなさい。私が一緒にいたいのは貴方じゃなくて、ルキウスだって今、わかった。貴方には私なんかより、もっといい人がいると思う。」
どうやら、私は世話をしてもらうのも一緒に住むのも誰でもいいわけではなくて、ルキウスでないと嫌なようだ。たぶんそれは。
その時、私は視界の端に、城の回廊の方から走ってくるルキウスの姿を認めた。
「ルキウス、」
その名前を、声にだした途端、唇に何か柔らかい感触を感じた。そして、上方にあったはずのクロードの顔が真ん前にある。
今、何があった?
呆然として自分の前にいるクロードに視線を移す。唇を離した彼は、意地の悪い笑みを浮かべたまま、
「今は大人しく身を引くから、僕にファーストキスくらい頂戴。さあ、これで彼はどういう反応をするだろうね?」
言い捨てると、転移して消えた。
私は今起こったことと、それをルキウスに見られたことで頭が真っ白になった。それから、怖い顔で近づいてくるルキウスを見て、涙がこぼれてきた。
昔、髪を短くされて、彼に絶交された時のことが頭の中に蘇っていた。
97
あなたにおすすめの小説
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました
六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。
「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。
アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。
時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。
すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。
そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。
その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。
誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。
「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」
「…………え?」
予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。
なぜ、落ちぶれた私を?
そもそも、お会いしたこともないはずでは……?
戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。
冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。
彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。
美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。
そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。
しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……?
これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる