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しおりを挟む「はいどうぞ、おまたせしました~!」
「お、元気イイねお姉さん。
新しい人が入ったのかい?真由美さん?」
「いらっしゃいギルマスさん、この人は新しい人ではなくて遊びに来た遠縁の者です。
営業日にかさなったので今日はお手伝いをしてもらってるんです」
なんて今日何回目か分からないやり取りをしながら次の注文分を召喚して
頷きながら私達のやり取りを聞いているお客さんにお出ししていく。
そう、今日は私の担当営業日です。
あっという間に明日で和美のお休みの1週間もオシマイ。
内容が濃いいからか
ただ単にたのしかったからなのか
気がついたら1週間。
だけど仕事は仕事なのでしっかり営業します(週1の道楽の様なものですが…)
営業するなら当然私は留守なのですが
和美なら皆馴れているので(馴れた)
チビちゃん達と好きに過ごしておいてと言ったのですが
何故か自分も働くと言うので
手伝ってもらう事になりました。
そのままの姿では身分がバレると思うので
見た目も私と同じ年齢に見える様に少し若返りさせて髪色を変えるという
とてもチートな術をかけてもらった和美は大喜び、
「毎日若返りだけでもイイから術のかけ続ければ…」
なんてブツブツいってたけど
作業もノリノリでこなして
お客さんとも気軽に話しています。
姿もだけど
明るく気さくな話し方や
洗練された仕草とは言えない動きなので
誰も彼女が王妃様だとは気づくまい……
いいのかソレで
とは思うけど
本人も楽しそうだし
お客さんも私も楽しいので
問題無し!
「記憶が戻る前の私も
一度は街娘の仕事を体験したかったのよね~!」
なんていいながら
根本的な部分では
今の自分と前の自分は似ている所が多いのだと
記憶を取り戻しても支障が無い事を教えてくれた。
「てか、このビール、出して大丈夫?
アッチの世界のビールでしょ?
美味し過ぎて暴動起きない?」
なんて物騒な!
「大丈夫、販売数に限定かけてるから。
しかも余り言いふらさない様に
ドワーフの親方達とさっきの商業ギルドのギルマス限定販売してるから。」
そう、
今では常連の商業ギルドのギルマスには
爆発的に人気なっても
販売数に限界がある為
売れれば売れるだけ
ギルマス達への販売数を減らさないといけなくなると脅…
相談して
今だに他に流通させる事はしていない。
店内でも1人2本までの限定にしており
ドワーフの親方達とギルマス達が目を光らせてくれている。
親方達とギルマス達には限定数を5本まで増やし販売数も少し増やす事で
誰か彼かが毎日来店してくれている常連中の常連さんになり
腕っぷしでも強いドワーフ達や
商業ギルドの職員や
そのトップの御用達のお店という事で
今の所は問題なく営業できている。
「あ~、そりゃあ大丈夫だわね。
何か言ってきそうである冒険者達もドワーフを敵にしたら装備品が手に入らなくなるから死活問題だし、
貴族や金持ちも商業ギルドを敵にするなんて恐ろしい事はしたくないもんね~。
本当、イイ人達を味方に出来て良かったね!」
本当にその通り。
最初からソレを狙っていた訳ではないけど
最初のお客様がドワーフの親方さん達だったし
ギルマスも初日にはビールの販売を個人的に開始してたもんね?
あの縁がなければ今頃は……
縁は大切にしていこう!
今、
こうしてお店を出来るのも
皆と楽しく生活出来ているのも
縁がなければ無かった事だしね?
今の家族や和美との出会いが無かった事になっていたら
私は今どうしていただろう?
最初の選択で冒険者を選んでいたら?
多分冒険者は無理だったろうからレオナルドさんの護衛が終わるまでに働き口を探して…
何処か違う所で生活していたかもしれない。
ムギちゃん達とも
チビ王ちゃん達とも出会う事なく
…レオナルドさんとも会わなくなれば当然王と会う事も無く
和美と出会う事は無かった事になる…
遠目で国王や王妃の姿を見る日があったとしても
今の和美の姿では
和美の事を和美と知る事は無かっただろうし
和美も記憶が戻る事がないままだったかもしれない…
体調不良のまま
萌ちゃんとの再会が遅れていたかもしれないし
再会して記憶が戻っても
私の存在には気がつかないままだったろう。
私は今も1人で頑張れていただろうか?
和美に会って初めて気付いた自分の脆さ、
あのまま1人で生活していて
前向きでいれただろうか?
それなりに人とのコミニュケーションはとれるが
心の底から安心したり
ほっこり和んだり
自然に笑えたり
しただろうか?
自分が寂しさで発狂したり壊れたりするとは想像出来ない。
ソレ位の図太さはあると思ってる。
ただソレは単に壊れないだけであって
壊れないから強いとかではない気がする。
いや、強いかもしれないけど、
強いから?
強いからって幸せな訳ではないし
楽しい訳でもないだろう。
毎日仕事をして生きていく為の生活をして歳をとっていく。
前の生活とたいして変わらないけど環境が違う。
癒やしもなければ
楽しみも無い。
いざと言う時に頼れる人すら居ない。
自分の身元を知っている人が1人も居ない環境……
どんどんと思考が重くなりかけ
頬にある温かさに気づく。
「まま…」
「まま、こあい?ないないよ?」
自分の思考が重くなった事に気づいた2人が
慰めようと両頬にスリスリ。
頭にはタマリちゃんの温かな重み。
目の前にはソレを羨ましそうに、
口に手を当て悶絶している
我が親友。
プップッ…
…ああ、
今日も幸せな一日だ。
やはり縁を大事にしなきゃと
つくづく噛み締めた営業日でした。
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