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鶯音を入る
第七十夜
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「さっきの…………『横顔』、でしたっけ? 作詞、紅さんだったりします?」
無事ピアッサーを追加購入した私と彼女は、目に付いたアクセサリーショップやアパレルショップにふらりと立ち寄っては、ピアスを見て回っていた。
彼女が好んで着けるような大きく重いタイプの物は、流行りでないのか、私のような臆病なピアスユーザーが増えたのか、どの店でもほとんど取り扱っていなかった。
「いや……いえ。本当に…………別に、深い意味はないんですよ? ただ、そのですね。一発でバーってわかったのと…………偶然、偶然、私がよく通してもらう席と? 同じだったから……。インスパイア元の一つかもしれないと思っただけですよ? 本当に、ええ!」
「アタシじゃない。……けど、作ってもらう時、詞と曲両方のイメージは細かく伝えた。作詞の人も、作曲の人も、アタシのイメージより良いの作ってくれた。だから、一番気に入ってる歌」
彼女が孔雀モチーフのピアスを手に取った。
目が覚めるようなピーコックグリーンと、それに埋もれない目、目、目。
彼女が好んで着ている、一枚で着こなせるロングワンピースによく似合いそうだ。
「…………紅さんが一番気に入ってる歌、最初に聴かせてくれたんですね。マダム・ルージュの歌、一曲も知らない私に」
私も一つ、気になる商品を見つけた。
広がった赤い唐傘モチーフのピアスだ。
(浴衣着て、髪上げて、これ着けたら可愛いかも。……普段使いはしにくいかな。飾り部分大きいし、丁寧に作られてて、すごく良いと思うんだけど。シンプルな服なら、合わせられなくもないかな?)
「翠、コテコテのラブソング聴きたいって言ってくれたし、名刺代わりの一曲はこれが良いかな、って。……朝にぴったりの歌、ないし。『横顔』は、アタシが翠を振り向かせたくて、どうしたら良いかわからない時に作ってもらった歌だし」
「…………Time, Place, Occasion. 全部間違えてる気がするのは、私だけですか? 真相がわかったのは喜ばしい事ですけど、それにしたって……何か他に……あったんじゃないですかね……!」
商品を扱う手が雑にならないようにという事には注意していられたが、彼女への対応が雑になってしまっては意味がない。
「ん。ゴメン、空気読めなくて。さっき、人前で歌い出したのも」
「いえ、それは私がお願いしたからで…………。それより、良いのありました? 私は、こういうのも良いんじゃないかと思ったんですけど」
「可愛い。和風の、殆ど持ってないし、欲しいかも。アタシはこれ。色は翠っぽくて、孔雀はアタシっぽいから、お揃いにぴったりじゃない?」
耳にピアスを当てた彼女は、私に笑いかけたのち、鏡の自分にも愛嬌を振り撒いていた。
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