モヒート・モスキート・モヒート

片喰 一歌

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駒繋

第十夜

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「良いの? 翠も好きなんだよね。この引き出しに入れてない……なら、貰ったばっかって事でしょ。暗くて、冷たい場所? ……に保管したら、三年以上つんじゃない? のに」

 箱を持ち上げて、すぐに下ろした私に向けられる視線は、いつも通り。

(前までの私なら、『当分、お素麺買わなくても済む』って喜んでただろうけど…………。誰かと一緒に食べるご飯の美味しさを教えてくれた人にそう言われちゃうのは、切ないというか)

 今の発言だって、善意によるものだという事は、私が誰より知っている。

「よく御存知で。お素麺は保存のきく優秀な食材です。テーブルの上にあるって事は、貰ったばっかり……っていう考察もドンズバです。流石、紅さんですね。でも、一回良いって言って、後からやっぱりダメですなんて言いませんって。……私はもう、って決めたんです。紅さん家に。このお素麺を」

「…………『持って行く』じゃなくて、『持って帰る』?」

「気付いてくれました? ……ちょっと図々しいかなとも思ったんですけど、今の私にとっては、紅さん家の方が自分の家みたいな感じなんで、思ったように言ってみました。まあ、その事に気付いたのも、ほんの数分前とかなんですけどね」

「いつ気付いたの?」

「玄関開けてすぐ、ですかね。……私、この家に入った時、他の人の家にお邪魔した感覚だったんです。ドア開けた時、見えてる景色は自分ちなのに、自分ちじゃないみたいな臭いがして。……それを踏まえたうえで、今、私には同居人がいる訳じゃないですか」

「アタシ?」

「そうです。仕事の日のお昼以外は、ご飯一緒に食べてますよね。朝晩って。そのうえで、晩酌もしてますよね。…………って事はですよ。私達は、すでに一日三食、食卓を囲む仲……って事になる訳じゃないですか」

「……翠って、たまに意味わからない事、言うよね」

「いや、まあ、自覚はあるんですけど……私達の晩酌、お酒メインなのかおつまみメインなのか怪しい所あるじゃないですか。紅さんが作ってくれるおつまみ類が美味しすぎるせいで。……ですから、毎日三食一緒に食べてるカウントで間違ってない筈です」

「違う。アタシのせいじゃない。翠の作ってくれたおつまみが美味しいせい。……体重計、乗れなくなった」

 ムキになって言う私に対抗するように、彼女も立ち上がって張り合ってきた。
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