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駒繋
第十二夜
しおりを挟む「翠もしたいってわかって、嬉しいけど。……お素麺、お裾分けしてもらう理由。もっとわからなくなった」
「なんでですか? 今、結構な文字数使って説明したじゃないですか。それでも、わかってくれないんですか? ……か……可愛い恋人が、『一緒に食べたい』って言ってるのに? 理由なんて、それだけで十分だと思うんですけど」
「ん。ウチにも、一緒に食べる物あるし。お素麺じゃなくても良い」
「…………紅さんって、いつでも何でも受け入れてくれると思わせておいて、たまに意味わからない位、頑固ですよね?」
「でも、そこが良いんでしょ。じゃなきゃ、翠が心配して、胃に穴空く。……耳に穴開けるより先に」
何カップのブラジャーを着けているのだろうと考えてしまうほど豊かな胸部の下を指し、彼女がため息を吐いた。
「よく御存知で。ついでだから言っておきますね。……そうやって、上手い事言える所も好きです」
走っても殆ど揺れない私の胸とは大違いだ。
つられたフリで、私もため息を吐いた。
「ありがと」
「褒めても、折れてくれないみたいですね。……泊めてもらってるお礼なら、どうですか? ……いや、でもな……。夏休み価格で、どこも宿泊代足元見てるシーズンですし、この値段じゃ一泊分にもならないか」
「お金なんていらないって、言ってる。アタシ、お金払ってでも、一緒に寝てくれる人欲しかったから、翠がアタシに何かしようとか、思わなくて良い。お金も、物も、いらない」
「…………それなら、私の荷物半分持ってもらうお礼って事で、お素麺の消費、手伝ってもらえませんか? ……いや、この場合、『消費手伝う』でも十分理由になるかも……」
「…………お礼を、自分で持って帰る?」
「ああ、そこに納得行ってない感じですか?」
「ん。……あと、そのコも、翠に食べてほしくて、贈って来たんじゃない?」
「持たせません持たせません、恩人にそんな事させません。お素麺は私が持つんで! ――で、送って来た人の気持ちの問題ですけど。紗世は特に、誰が食べるとか気にしないと思いますよ? 今回のこれは私が指定した物ですけど、苦手な物だったら、全然横流しして良いよってタイプです。紅さんも、同じタイプだからわかるでしょう? 気にしなくて大丈夫ですから、一緒に美味しくいただきましょうよ。こんな大量にあるのに、一人で食べ切れなんて無茶です。食べ切る前に飽きちゃいますし、飽きる前に夏が終わっちゃいます。食べましょう、美味しいお素麺。美味しい物は美味しいうちに美味しくいただくのが、一番ですから」
言葉を切った途端、静寂に襲われた。
――――最高の夏が終わって、秋が来る。
エアコンが届いても、届かなくても、私と彼女は一緒にいようと約束したが、それでも一抹の不安は消え切らなかった。
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