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逃水
第一夜
しおりを挟む「お邪魔します……」
「ごめん。あんまり広くなくて」
タクシーに揺られる事数分、到着したのは何の変哲もない――いや、正直に言えば古めの――アパートだった。
「意外っちゃ意外でしたけど、一人で住んでる……んですよね? そう考えたら別に狭くない方なんじゃないですか?」
築年数はいっていそうとはいえ、一人暮らしには十分な広さだ。
実を言うと、OKしてからタワマンにでも連れて行かれたらどうしようと思っていたので、本当にほっとした。
ああいうグレードの高いお宅にお呼ばれするのは何かと気を遣うから苦手だ。何回経験しても慣れない。
「そうだね。今のところ不自由はしてない。……ボロ家でごめん?」
と彼女は首を傾げる。
想像よりもショボい家ではあったが、別に腹を立てている訳ではない。
そんなに不満そうな表情をしていただろうか。
気掛かりな事があるとしたら、セキュリティ面だ。
自分が一晩過ごすからではなく、ここは女性が……まして彼女のような魅力的な女性が住むべき物件だとは到底言えない。
水回りは共用ではなさそうなので良いとして、女性の一人暮らしだというのに低階層の住まい、なおかつオートロック式ではないときたら、険しい顔にもなるだろう。
「言うほどボロくもないですけどね。『あばら家かな?』みたいな古民家に住んでる友達もいますし」
「いいじゃん、古民家。カフェでも開いてるの?」
スイートルームにしか泊まった事がなさそうな風貌からそんな台詞が出てくるとは。
この家に住んでいるのもそういう理由があっての事かもしれない。
「いえ、ただ住んでるだけです。薄給のくせして一軒家に住みたいとかで。紅さんはそういうの好きなんですか? いわ……歴史のありそうな物件、的な。ここに住んでるのもあえて?」
「いわくつきも楽しそうだと思うけど。こういうトコの管理人さんは絶対余計な詮索もしないし、口が堅いから」
彼女は何でもないように答えた。
訳ありなのは物件ではなく彼女自身の方か。はたまた双方か。
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