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逃水
第二夜
しおりを挟む「ああ。立ち話も何だし、上がって」
彼女は一歩家に入るなり、脱いだ靴も揃えずに廊下の電気を点けた。
癖なのか、来客を慮っての事なのかはわからなかった。
「洗面所とトイレはすぐ右にある。リビングは真っ直ぐ行った先だから、どこでも好きなトコ座って待ってて。寝っ転がってもいいし、適当に。テレビもつけてて良いよ」
「紅さんは?」
人を招き慣れている人間の案内だと思いつつ、置かれたスリッパに足を入れた。
「お客さん置いてどこも行かないし。薬飲んだらすぐ行く」
「ああ、そういう。すみません。詮索のつもりで言ったんじゃなかったんですけど、不快でしたか」
「ん、わかってるから平気。……寂しいのはアタシも同じ」
ふいに髪を搔き分けられる。
断りもなく触れられた事に怒ったフリでもしようか迷っている隙に頬にキスを受け、目を見開いた。
「ちょ!? 何するんですか、急に」
「ごめんね? でも、今のは挨拶。あの程度の事、友達にも家族にもするし。次は恋人にするのと同じようにしてあげるから、へそ曲げないで」
彼女はそう言って投げキッスをした。
もしそれが真実なら、片言気味に喋るのもそのせいだったりするのだろうか。
「でも、正直ラッキーでした」
缶ビールのプルタブを上げ、天井を仰いだ。隅のほうの壁紙が剝がれかかっている。
「ああ。アナタもアタシのこと気になってたって言ってたっけ」
彼女は向かいのコンビニで買ってきたつまみを皿に空けてくれている。
飲み足りないのもあったし、彼女から誘われたとはいえ人の家に手ぶらで上がらせてもらう訳にもいかない、と立ち寄ったのだ。
もちろん缶ビールも戦利品のひとつだ。銘柄に拘りはないので家主のおすすめに従ってみたが、なかなか良い味だ。
これから夜を過ごそうという相手と連れ立って入ったコンビニで避妊具をカゴに入れないというのは何気に初体験だったが、スイーツの陳列された棚を見るのが楽しいと思ったのもまた初めての経験だった。
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