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竜舌蘭
第一夜
しおりを挟む「翠も。返事聞かせてよ。『はい』か『うん』か『イエス』で」
あまりの女王様ぶりに吹き出してしまったが、ここは彼女に乗ろうではないか。
「…………『はい、女王陛下』、なんちゃって」
しかつめらしい顔を作り、胸に手を当てて軽く頭を下げる。
「良かった。『イエス』で来ると思ってなかったけど」
「私も三択目が用意されてるのは予想外でした」
顔を見合わせて笑う。
こんな時間がいつまでも続けば良いのに。
「……紅さん、本当にお腹空いてます?」
席に着き、メニュー表と睨めっこする彼女に問いかける。
「うん、腹ペコ。お腹と背中くっつきそう」
「かわ……じゃなくて! 可愛いには違いないんですけど!」
「ありがと」
やっとこっちを向いてくれた。
ではなくて、私も何を頼むか決めなければとメニューを開く。
しかし――――。
「お腹空いてるなら、もっとガッツリお腹に溜まるもの食べに行っても良かったんじゃないですか?」
一通り目を通したが、どのページも見事に軽食ばかりだ。
店の分類としてはデリカテッセンカフェだろうし、何も不思議な事はないのだが。
「ガッツリ……。ステーキとか、焼肉?」
「そうそう…………。って、流石にそれは一気に重量上げすぎじゃないです?」
お昼時も近くなってきたとはいえ、重めの食事はディナーのイメージが強い。
「そ? 食べたいなら良いと思うけど」
「そうでした、紅さんはそういう人でした……」
自由で、伸びやかで――――目を離したら、羽の一枚も遺さずに飛び去ってしまいそうな人。
「アタシは決まったけど、翠はどう?」
シリアスな気分になっていた所に声を掛けられ、慌てて指差したのは、私のような不健康な人間とは正反対の人が好みそうな野菜盛り沢山のプレートだった。
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