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竜舌蘭
第十夜
しおりを挟む「暑くなくなるまで、ウチ来たら?」
晩酌時のつまみの相談と全く同じテンションで――つまり、何て事のないように――言ってきたせいで、深く考えずに『そうですね』と肯定してしまう所だった。
相槌が適当すぎる事に反省すべきだろうが、彼女も彼女だ。
今までの誘いとは段違いに大胆な誘いなのだから、流石に少しくらいは勿体付けてほしい。
「……え?」
既の所で踏み止まったは良いが、感嘆と疑問をシンプルな一文字に託すのがやっとだった。
「驚く事? 今までと変わらないと思うけど。最近、よく来てくれてたし」
「まあ、それは確かにそう……ですね…………?」
ここの所、数日に一度は必ず彼女の家で快適な夜を過ごしていた。
肝臓に掛かっている負担を度外視してしまえば、この上なく健康的な日々と言える。
エアコンの使えない自宅で過ごすのに比べて熱中症になりにくい……などと言った意味ではない。
ドライな性分ではあっても、詰まる所、私という女は恋愛体質だったという事だ。
――――それも、好きな人の有無や相手と会える頻度などにより肌艶が左右されてしまうのほどの、極めて重度な。
「そしたら毎日、翠と一緒にいれる。アタシは大歓迎だけど、翠は?」
彼女は、例のピアスとは別のピアス――ではあるが、こちらも大ぶりの物だった――を煌めかせ、問い掛けてきた。
もしそんな夢のような事が実現したのなら、会えなかった日に『今日はどのピアスを付けていたのかな』なんて考える事もなくなるのだろう。
「ええと……?」
何度もお邪魔して勝手を知っているあの家は、確かに二人で住んでも余裕があるだろうとは思うが、知り合って間もない飲み友達などをそう気軽に同居人に昇格させてしまって良いのだろうか。
然るべき手順を飛ばし過ぎでは、というのが率直な感想ではあったが、まさに然るべき手順を飛ばして肉体関係を結ぶ事を厭わない人間の私がそれを指摘するのも憚られる。
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