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竜舌蘭
第十二夜
しおりを挟む「でも、私は……」
「もしかして、荷物の問題? 貸せる物は何でも貸すし、手ぶらで来て良い。けど、持ち込みたい物あるよね? 翠、オシャレだもん。重くて、面倒?」
断ろうと切り出した所に、彼女が言葉を被せてきた。
そんな事で迷っている訳ではなかったが、もし申し出を受けるなら……と一考する。
先ほどまで乗っていた生ハムの脂が、小洒落た皿を艶めかしく彩っていた。
「持ち込みたい物……。着替えとかメイク道具とかですかね、やっぱり」
「それだけ?」
彼女はむすっとした顔で、フォークに刺した巨峰を私の口に運んだ。
素直に口を開け、大粒の実を覆う皮を一息に破いて、染み出す水分を受け止める。
種を避けるため、真ん中よりやや左寄りに歯を入れたが、種のない品種だったらしい。
好物なのだから、一噛みで気付いても良さそうなものを、浅くしか刺されていなかったので気付かなかった。
『味が濃くて、生命力が漲っている気がする』からと、普段は種のある巨峰を選んでいる私だが、それが真実かどうかはわからない。
――――恐らく同じような理由で、私は男性に恋をしてきた筈なのに。
どうしてこの女性に恋してしまったのだろう。
「あんまり部屋占領しちゃっても申し訳ないですし……って。なんで一緒に住む前提で話してるんだろう、私。すみません、今のは忘れてもらえますか……」
「アタシ、嬉しかったのに。一緒に暮らそうよ」
『住もう』よりも現実味のある誘いをかけられ、脳内でクラッパーボードが鳴らされる。
始まったのはもちろん、彼女と私の同居生活だ。
クタクタになって家に帰ったら、紅さんがピアスを揺らして出迎えてくれるかもしれない。
私のほうが早く帰宅するかもしれないから、その場合は合鍵を使って――――……。
好きな人と同じ鍵を使える喜びなんて、何年ぶりだろう。
「私だってそうしたいですけど……。うう、でもなあ…………」
甘い妄想の群れを頭から追い払い、うんうん唸る姿を見せる。
――――もはやフリではなく、本気で迷っている事に気付かないままで。
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