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竜舌蘭
第十四夜
しおりを挟む「…………はい。すみません。私にはまだ、難しくて……。でも、紅さんがそう言ってくれて嬉しいんです。本当に。すごく有難いと思ってます」
「有難迷惑じゃ、ない?」
彼女は思い出したようにサングリータのグラスを持ち上げたが、口を付けようとはしない。
「迷惑な筈ないでしょう? でもですね、ただの飲み友達にそこまでしてもらう訳にもいかないと言いますか……」
募る一方の自己嫌悪をどうにか押し込め、極力傷付けない言葉を選んだものの――――。
それも彼女を傷付けないためではなく、変わる事の出来ない自分を傷付けないための言い訳に過ぎなかったのかもしれない。
彼女は何を言っているのかさっぱり理解出来ないといった様子で顔を顰め、少しも減っていないグラスをテーブルに戻した。
「紅さんだって、恋人にするキスと恋人以外の人にするキスがあるみたいな事、言ってましたよね?」
初めて口付けられた直後の発言だ。
忘れられる筈がない。
「うん。挨拶と愛情表現は違う」
と彼女が即答したのを良い事に、言葉を重ねる。
「それと似たようなもんですよ。順位なんか付けたくなくたって、関わる人間の重要度が皆同じって訳にはいかないじゃないですか、どうしても」
「…………あ。そっか」
すると、酒棚を眺めていた瞳が輝き出した。
「わかってくれました?」
「ん、完璧。じゃあ、翠。翠は、誰になら頼れる?」
理解してもらえたと安堵した所だというのに、今度は何だと言うのだろう。
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