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竜舌蘭
第十八夜
しおりを挟む「いやいやいや、話が飛躍しすぎですって」
ふっ、と緊張が解け、笑いながら顔の前で手を振る。
「飛躍はしてたかも。でも、翠に頼ってもらうには、それが一番近道と思った」
にこりともせずに答えた彼女を見て思う。
『格の違う美人の真顔には、恐怖心というより威圧感を覚える気がする』と。
「……全部、私のため?」
「誰かのためとか、そういう言い方好きじゃないけど。そうなるね、多分」
「どうして紅さんは、そこまで」
「頼ってほしい」
早押しクイズでもないのに言葉の途中で話し出された。
「…………ごめん、遮って」
ぽかんとしていると、彼女が軽く頭を下げる。
「だけ……ですか? さっきも言ってましたけど、そんなに?」
「……のと。アタシ、いつも翠に貰ってばっかだから」
物憂げな視線は、私の胸元のある一点に集中していた。
一度として付けている場面に立ち会う事が出来ていないのが残念だが、いつも好んでキスマークを付けている場所だ。
ティーンの恋愛のようで擽ったい気持ちはあったが、寝ている私に彼女が残していくそれを存外気に入っているのもまた事実だった。
「? 貰ってばっかりなのは、私の方だと思うんですけど……。紅さんには普段から相当頼ってますよ?」
余程人が好いのだろうか。
暗に『今以上、お世話になる訳にはいかない』事を匂わせると、再び眼光が鋭くなった。
傍若無人な言動の割には尽くしたがりな彼女のしてくれた事は、ぱっと思い付くだけでも大小色々あったから。
「断るつもりでしょ」
くいっと持ち上げた指の先も同時に光る。
「いや……まあ。はい…………」
「…………『付き合ったら、見せてあげる』って言っても?」
「見せる? 何をです。ピアスのコレクションとかですか」
奔放なこの人の秘密なんて大した事ないだろう。
少しも期待せずに、ぶっきらぼうに尋ねた。
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