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竜舌蘭
第二十二夜
しおりを挟む「……今だから言うけど」
突然の余計な事にコメントするつもりはないらしい。
彼女は声のトーンを落とし、ぽつりと話し出した。
「はい」
「アタシも最初は翠の事、『簡単にOKしてくれそう』で気になってた。ごめん」
ギブアンドテイクが釣り合っていないと気が済まないタイプなのだろうか。
隠しておけば良い事まで馬鹿正直に話してしまうなんて、知れば知るほど、可愛い人だ。
「でしょうね。いつも男連れで来店してる美女が平凡な女に声掛けるなんて、裏がない方がおかしいと思ってました。聞かせてくれて、ありがとうございます」
嫌味に聞こえたかもしれないが、実の所、ちっとも嬉しくない告白だ……とは微塵も思っていなかった。
どのような理由であれ、真実が告げられてなお、言葉を交わす前から互いに気になっていた事実には揺らぎがない。
それこそ運命のようではないか。
――――と、恋愛体質なだけでなく、救いようのないロマンティストは思う。
「私だって、話してみるまで好き勝手妄想してましたよ。紅さんの事」
あえてその内容を詳らかにしなかったのは、下手なりに恋の駆け引きを仕掛けたつもりだったから。
「そうなの?」
しかし、当の彼女には深掘りする気はなさそうだった。
――――ならば、私も覚悟を決める時だ。
「はい。散々渋っておいて申し訳ないんですけど、私からもお願いします。紅さん、私とお付き合いしてください。前から言ってる通り、彼氏っぽい事してくれない彼氏持ちですし、別れる予定もないですし……お見苦しい所も沢山お見せしましたけど、一応これでも頑張って『したい』ようにしてみたつもりです」
遅延に遅延を重ねた告白の返事の背後で流れていたのは、ピアノの旋律が美しいジャズミュージックだった。
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