61 / 226
薄翅蜉蝣
第十一夜
しおりを挟む「さっきの紅さんも可愛かったですけど、珍しいですね。私が離れていく夢でも見ました? すごい汗……」
体調があまり良くないのではないだろうか。
そういう時に限って不快な悪夢を見るものだ。
……と見当を付けたが、強気なこの人が体調不良を素直に認めるタイプだとは到底思えなかった。
「……ううん。暑くて」
適当に振った話でしかないのに、彼女は蚊の鳴くような声で答えた。
「そうですか? なら、良いんですけど。あ、お水飲んでおいた方が良いと思いますよ。私、持ってきましょうか。暑くてバテちゃったんですかね。……紅さん、私の心配ばっかりするから。ちゃんと自分の健康も気にしてました?」
思った以上に元気がなさそうだ。
いよいよ心配メーターが振り切れてしまった事もあり、脳裏に浮上した季節性の不調の名称を出してみる。
「ちなみにですけど、今日のご予定は?」
多分、仕事なんてしている場合ではない。
「休み。だけど、用事あって……」
「そうなんですね。別の日にしてもらうとかは?」
リスケ一択としか思えず、提案したが。
「アタシの代わりにやってもらえる事じゃない。……から、行かないと……」
彼女はタオルケットで豪快に汗を拭って言い切った。
忘れかけていた『マダム・ルージュ』という名前の歌手のイメージが再び彼女と重なった。
「私、送っていきましょうか。車で」
氷いっぱいのグラスに注いだミネラルウォーターを飲み干し、少し顔色の良くなった彼女に訊く。
「翠は? 仕事じゃないの?」
「私も休みです」
「そ。でも、平気。ありがと」
彼女はひらひらと手を動かした。
少しでも恩返ししたいんだから、遠慮しなくて良いのに。
「駅まで着いてくのもダメですか?」
「迎え、来てくれるから。……下まで」
つれない返事に食い下がると、意外な事情が明かされた。
「そういう事なら、安心ですね」
送迎付きで代役が立てられない仕事であればまだしも、その条件を満たす用事とは一体何なのか。
なんとなく聞くのが怖くて、強引に話を終わらせた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる