80 / 226
金糸梅
第十二夜
しおりを挟む「アタシは、翠がオンナで良かったと思ってる」
「……!」
彼女が何気なく落とした一言で、記憶が急速に巻き戻る。
――――過去、同じような台詞を吐いた男がいた。
出会い方も事に及ぶまでの会話も覚えていない、『不特定多数の男のうちの一人』の中に。
男はそうのたまい、流れで私の身体をまさぐって、アダルトビデオでのあれやそれやを真に受け過ぎなのではないかと心配になるような行為を繰り広げた。
『お前が女で良かった』という利己的で自己陶酔の極みのような台詞にもその場では適当に頷いたが、私にしてみればそんな事はどうでも良かった。
性別がどうであれ、その男に恋愛感情を抱く事は生まれて来ない事を赤子の側が選択するレベルで難しいと思ったから。
「……女性の方が好きなんですもんね、紅さんは」
私に『初めて恋愛感情を抱かせた女性』に意識を戻す。
「うん。でも」
紅さんは口ではそう言ったものの、プライベートゾーンは勿論、他の場所にさえ触れて来ようとはしない。
それは、彼女が恋愛感情を抱きやすい、もしくは劣情を催しやすい側の性別であれど、それのみでは私を見ていない事の証左と言えるのではなかろうか。
「翠の事は、オトコでも好きになってた。きっと」
さらりと言ってのけた彼女に脳内を覗かれたようでドキッとしたが、自分勝手な当て推量のままよりずっと良い。
それでも私は女性で、彼女は女性を好いているからと、目に付いた腕を捕まえ、上半身で最も女性らしい部位をさりげなく当てた。
低俗で申し訳ないが、私なりの感謝の表し方だ。
「ありがとうございます」
彼女の腕を抱えたまま、考える。
……という事は、紅さんは私を人間として好いてくれたという意味でも初めての人でもあるのかもしれない。
きっとそうだ。
両親だって、私を『子』としてではなく『娘』として見ていたではないか。
初潮を迎えるどころか生まれたその瞬間に、『この家に生まれた女』としての役割を押し付けられていたのだ。
それ以外の期待をされてはいなかったのだ、私は。
「私も一番大事なのは性別じゃないってわかった所ですし、気持ち的にはもう何でも良いんですけど、制度とかの壁はまだ分厚いですよね。結婚と恋愛と生殖とか、そのへん全部一緒くたに管理しようとしてるの気持ち悪過ぎ。人の事、何だと思ってるんですかね」
『生殖』という単語を聞くなり、彼女は目を伏せた。
「……ホント。全部、別の問題なのに」
ただそれだけの動作が悲しみに支配されたように見えてしまうなんて。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる