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金糸梅
第十三夜
しおりを挟む「翠。今日はまだ、眠くない?」
すぐに視線を戻した彼女が問うてきた。
「大丈夫です。何でしょう? 一緒にしたい事があるとか?」
ムード満点の間接照明とは対照的なデジタル時計を見る……までもなく、数字の方が目に飛び込んできた。
当然だ。無駄に大きい文字盤が嫌でも視界に入る所にあるのだから。
いつもなら眠くなっているくらいの時間帯だが、たった今告げた通り、目は冴えていた。
珍しい事もあるものだ。
「相槌もなくて良いし、途中で寝て良いから、話聞いてて……」
これまた珍しい頼み事だが、眠そうなのか元気がないのか判断に困る覇気のない声を聞かされた私には、断る理由などなかった。
「勿論です。でも、せっかくそう言ってくれてるのに、口挟んじゃったらすみません」
「全然。嬉しいから、好きにして」
『好きにして』なんて、行為中の懇願のようだ。
飽きもせずに口付けを交わし、所々はだけた紅さんに覆い被さるシーンを思い描いてしまった。
こんな邪な考えが浮かぶくらいだ。私は存外、男性的な思考をしているのかもしれない。
だが、私は女性だし、彼女は可愛がりたい側だというし、笑えるほどに噛み合わない。
「アタシ、今日、悲しい事あったの。すごく」
相性の悪さをほんの少し嘆いていると、彼女がぽつりと零した。
「詳しく……は、訊かない方が良さそうですかね」
本当は何があったのか一から十まで把握したい。
それが無理なら概要だけでも知りたい。
しかし、その好奇心の出所が好意でも心配でも、彼女を深く傷付ける事はわかるから、こちらからは何も尋ねない事にした。
「ん。話せたら良かったけど、今は無理そう。話したいとか言ったくせに、ごめん。その代わり、抱っこしたい」
「そんなの全然良いですよ。……って、抱っこ?」
過ったのは、少し前の話題。
欠けたピースが嫌な嵌まり方をし始めたような感覚に襲われたが。
「ん。膝枕と、そんな変わらない」
「いや、別に断る気はないですけど。膝枕じゃご満足いただけませんでしたか、女王様?」
胸に手を当てておどけてみせると、彼女は漸く白い歯を見せてくれた。
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