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金糸梅
第十四夜
しおりを挟む「そんな事ない。でも、お願い」
就寝前と同じく大きな枕に背中を預けた彼女が左膝を立てたのは、私が右隣にいるからか。それとも――――。
「わかりました」
赤ちゃんを抱っこする時の向きに関するデータを追い払い、ゆっくり寝そべった。
「……私、膝枕よりこっちの方が好きです。さっきより紅さんが近いから」
首と頭を支えてくれている彼女を仰ぎ、素直に言うと。
「アタシも」
彼女も微笑み返してきた。
しばらくその姿勢でいたが、右腕が彼女の腹部に当たり、あることに気付いてしまった。
――――ロング丈のキャミワンピースに隠されたお腹が、今朝よりも心なしかボリュームダウンしている事に。
性格的にも締め付けを嫌っていそうだし、ゆったりした服を選んでいるのもそういった理由があっての事だと決めてかかっていたが、実は違ったのかもしれない。
脈絡のない妙に具体的な問い掛けをしてみせたのだって、単なる思い付きではなかったとしたら?
しかし、出産の前後と言えるほどの差はない。
もしそうなら、一目見るなり異変に気付いていなければ説明が付かないだろう。
「……翠。そろそろ寝ない?」
声を掛けられ、ビクッと飛び上がった。
「! すみません。私、リラックスしちゃってて全然紅さんの事気遣えなくて……。すぐ退きますね!」
余計な勘繰りをしている間、彼女を退屈させてしまっていなかっただろうか。
「足と腕は平気。でも、眠くなっちゃって」
目をとろんとさせた彼女は、とうとう欠伸までしてみせた。
「私より紅さんの方が先に眠くなるの、初じゃないですか?」
「そうかも。翠は?」
「私はまだまだ眠くないですよ」
「……そっか」
呟いた声は寂しそうで、一緒にいるのに独りだけ寝るつもりでいるのがわかった。
「でも、紅さんも私も恵まれた食生活のお陰で不健康ですし、せめて質の高い睡眠くらいは死守しておくべきですよね。……って訳で、私も寝る体勢に入ります」
「ありがと」
説得力があるんだかないんだかわからない理由を付けて、足元でぐしゃっとしていたタオルケットを引っ張ってきたら、彼女は素直に横になった。
「私達、何回も一緒に寝てる筈ですけど、初めての添い寝みたい。いつの間にか寝落ちしてるせいなんですけど、緊張しますね。……って、緊張してるの私だけか。でも、嬉しいです。『一緒に寝た』って実感出来るの」
「良かったね」
「ええ。本当に」
「今度……翠もアタシも眠くない時、違う意味でも寝てみる?」
「…………寝たい、です」
少し迷って答えたが、返事がないのでそちらを向くと、彼女は寝息を立てていた。
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