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夕顔別当
第十二夜
しおりを挟む「……あ! だったら、カラオケの後に寄っちゃいましょうか! 営業短縮とかでどこのお店も苦しかったと思いますし、少しでもお金落としたいです。あの店、潰れたら困りますもん」
椅子の背に掛けておいたカーディガンを肩に掛けた。
適当に置いたせいで変な癖が付いてしまっている。
淡いカーディガンに入った不格好な線を伸ばすのに集中しているふりで言い切った。
「ん。アタシも困るし、悲しい」
彼女も眉毛を下げて同意してくれたが、私は彼女のように『あの店を応援したい』という純粋な気持ちだけでそう言った訳ではなかった。
「良いね。豪遊しちゃお」
「紅さんも豪遊とか言うんですね?」
「使い方、間違ってた?」
「合ってますよ。ただ、紅さんが言うと桁がいくつか違ってそうなイメージというか……」
次、あの店に行く時は自分なりに豪遊する事を誓った。
「アタシ、結構庶民的なのに。今度、ワインが美味しいってファミレス、翠と行きたいって思ってるし」
「知ってますよ。今度、そこも行きましょうね」
軽く約束したが、私の頭はティラミスの評判も上々なイタリアンファミレスチェーン(※恐らく彼女の言っているのはそこだと思う)ではなく、落ち着いた雰囲気の行きつけのバーで一杯だった。
出会いの場所。
今まで何回待ち合わせたかは数えていないが、思い出も沢山ある。
――――あのバーは、私と彼女の唯一の接点と言っても過言ではない筈だ。
ゆえに、ただ『好きだから』というだけではなく、潰れられてもらっては困るというわけだ。
「良かった。外デート、楽しみ」
「ですね! 私も楽しみです。……あ、それと紅さん。実はカラオケって歌歌いに行くだけの場所じゃないんですよ?」
そういえば、私達が行こうと計画しているのはファミレスと行きつけの店だけではなかったな……と思い出し、さりげなく話を戻す。
「そうなの?」
「はい。好きなアーティストやアイドルのDVD鑑賞会して騒げたり…………」
「テレビ、そんな大きかった?」
彼女は手で『この位? もっと?』と四角を作っている。
「小さくはないんじゃないですか? 確かに、それより大画面のテレビ持ってたら自宅で飽きるほど観れるとは思いますけど、鑑賞会の醍醐味って多分それだけじゃないんですよ!!」
「ネットで知り合った人と、気軽に会える、とか?」
「ああ~! なるほど……。自宅を教えるのはちょっと……みたいな関係の人と集まるのに丁度良い……の、かなあ? そしたら、住んでる場所から遠い店舗も選べ……いや、ちょっと待ってくださいね。カラオケも防犯上の理由で監視カメラ設置されてると思うけど、初対面の人と密室は怖くないですか?」
「そ?」
彼女はまだピンと来ていないらしく、大きな目をパチパチさせている。
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