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夕顔別当
第十三夜
しおりを挟む「手荷物検査されないって事は『何持っててもわかんない』って事ですよ? 刃物や銃持ってる奴はそうそういないかもですけど、睡眠薬とかヤバいクスリとかは持ち運びやすいですし、目離した隙に飲み物に盛られたりするかもしれないじゃないですか。怖くなくても危険ではあるでしょう?」
「そ?」
アプローチを変えてみたが、彼女はまだ腑に落ちない顔をしている。
温室育ち……かどうかは知らないが、余程、安全な環境で生きてきたらしい。羨ましい限りだ。
「あと単純に沈黙が気まず……あ、そっか。歌えば良いのか! カラオケ、すごいな!? そういう使い方もアリですね?」
盛り上がる私を横目に、紅さんはしらっとしている。
「大人数なら? 皆ヤバい人って事、ないんじゃない?」
彼女は先程の遠回しすぎる『警戒心を待て』という警告についても、一応は考えていてくれたようだ。
「う~ん……微妙! 確かに一対一よりは安全度はグッと高くなりますよね。ヤバいのがいても、周りが止めてくれるのを期待できます。でも、全員がグルじゃない可能性はゼロじゃないし、グルじゃなくても腰抜けだったら意味ないんで、誘われてもなるべくなら理由付けて断った方が…………」
「そっか。覚えとく。翠、ホント色んな事知ってるね」
「私も詳しくなりたくてなった訳じゃないんですけど、未来の紅さんのピンチを救えたと思えば安いもんですよ。紅さん…………今まで無事でいてくれて、本当にありがとうございます」
「どういたしまして? ……それで、翠。カラオケの醍醐味って?」
「ああ、そうでした! 話の途中でしたね。すみません。気を取り直して……。カラオケの醍醐味は何と言っても『誰かの自宅で集まるより派手に騒げる』所ですよ! 家だとご近所さんの事気にして、なかなか思いっきり騒いだり出来ませんよね」
自分で引き合いに出しておいて、夜の営みについても同じ事が言えると気付いてしまったが、何食わぬ顔で話を続ける。
「うん」
「でも、カラオケの個室なら、他のお客さんの迷惑にもなりません! 『ファミレスだったら確実に白い目で見られるな~』くらいの音量で話すくらいだったら余裕ですよ。マイク通さなきゃ良いだけなんで」
「……そういえば。大きいダミ声で演歌歌ってる人、沢山いるね。追い出されてるのも見た事ない」
「あー、両隣と向かいの部屋ならわかりますけど、それ以上離れてても聞こえる爆音ボイスの人、たまにいますよね。マイクの設定どうなってるのか見てみたい。何なら良い感じに調節してあげたいくらいですよ。『あれ? 俺上手いんじゃね?』って錯覚しちゃう感じに」
「翠、優しいね」
「自分の鼓膜、知らない迷惑客に破られたくないだけですよ。……まあ、そんな感じなんで、私も黄色い声上げると思います」
「大歓迎。歓声、テキーラと同じ位好きだから」
と口角を上げた彼女は『マダム・ルージュ』モードが入っているのか、少々余所行きに見えた。
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