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夕顔別当
第十八夜
しおりを挟む「蜂蜜、好きなんですか? いつも塗ってますよね」
彼女は洋食派らしく、朝食に出してくれるのはトーストかパンケーキだ。
スープやサラダ、ベーコンエッグなども合わせて出してくれるので、トーストにはシンプルにバターやマーガリンだけでも美味しく食べられる筈なのだが、トッピングも豊富に用意されている。
……にもかかわらず、彼女がこんがり焼けたトーストに垂らすのは、きまって瓶入りの綺麗な黄金の蜂蜜だった。
飽きないのだろうかと思うが、行きつけの店で毎度毎度モヒートを注文する私に言えた事でもないだろう。
「好き。翠も塗ってみたら?」
「そうですね。今日は蜂蜜にしてみます」
見てそれとわかる高級品の風格に気圧され、いまいち手が伸びずにいたのだが、いざ勧められると彼女の好む味がどのようなものなのか知りたい気持ちが湧き上がってきた。
「うん。じゃ、塗ってあげる」
気付いたときには素直に頷いていた。
彼女が蜂蜜を垂らし出したのは……それより若干早かった気がする。
それは構わないのだが。
「あの……ちょっとかけすぎなんじゃないですか? 太っ腹すぎますって」
「このくらいかけるのが美味しいの。翠の好みじゃないかもしれないけど、アタシはこのくらい甘いのが好き。この蜂蜜、くどくないし」
私の気持ちを見透かしたように、彼女は唇を尖らせた。
「アタシの好み、覚えてほしいだけだから、付き合ってよ」
「……今回だけですよ。次は自分でやりますから」
「ん。わかった」
渋々といった様子の彼女の監視を受けながらで、果たして味など判別出来るのかと心配していたが、そんな事はなく。
「わ、美味しい……!」
芳醇な甘みが口中に広がり、一日の活力を与えてくれるようだった。
「でしょ。結構イイ値段だから。でも、遠慮しないで使って。なくなったら、また買えば良いだけだし」
これも喉のケアの一環なのだろうか。
「……じゃあ、次はパンケーキと食べてみたいんで、明後日の朝はパンケーキが良いです」
彼女が蜂蜜を追加で垂らそうとするのを躱しつつ、幸福の甘さを頬張った。
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