モヒート・モスキート・モヒート

片喰 一歌

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夕顔別当

第二十七夜

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 ――――最初に違和感を覚えたのは、いつだったか。

 彼女に抱いている違和感は、現時点でいくつに増えてなってしまったのか。

 その全てを気のせいだと思い込む事に無理を感じ始めたのは、いつだったか。


 
『不妊に悩む夫婦は過去最高となっており、子どもを希望する夫婦の××%にも上っています――――……』
 
 テレビから流れているのは、バラエティー番組とドラマの合間のニュース番組。

 しかつめらしい顔をしたキャスターが読み上げる時事通信は、別世界の出来事のように現実味がない――――というよりは、限りなく他人事というべきか。

「ふーん、そうなんだ……。まあ、私には関係ないし、どうでも良いけど。早くドラマ始まらないかな」
 
 二人の時に漏らしてしまう私の大きすぎる独り言に、いつもなら何かしらの反応を示す彼女だが、この時は無言だった。
 

 
「? 翠、そのシミ……」 

 ドラマが始まり、CMに入ると、隣の彼女が久しぶりに口を開く。

「嘘!? どこですか? 毎日鏡で見てて気付かないとか、そんな事あります? ショック……」
 
 うっかり麦茶を零した事を忘れていたせいか、曲がりなりにも美容には気を遣っているからか、シミと言われて思い浮かべるのは、顔などに出来る色素沈着だった。

「ごめん。そのシミじゃない。、びしょ濡れ」

 保湿済みの顔をぺたぺたと触って嘆く私を見た彼女は、顔を近付け、胸元にダイブしてきた。

「え。あ、麦茶……?」

 固まっていると、布を吸う音が聞こえて。
 
「……ホントだ。麦茶の味する」

 顔を上げた彼女は満足そうな表情をしていた。

 男に同じ事をされていたら変態臭いとドン引いていた事だろうが、何故かそんな風には思わなかった。

「当たり前じゃないですか……。というか、紅さんってあれですよね」

「あれ?」

だなあ……って思ってたんですけど、自惚れ勘違いでしたか?」

「…………ううん。アタシ、翠の事、吸うの大好き」

 一日外で仕事して帰って来たとはいえ、メイクを落とす前の唇は鮮烈な紅をしていて、唇を拭う仕草と相俟って、その姿はまるでヴァンパイアのようだった。
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