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夕顔別当
第二十八夜
しおりを挟む「あ。ごめん、翠」
しかし、その状態も長くは続かず、彼女は普段の――どんな厚化粧を施していても飾り気のない――姿に戻り、焦ったような声で謝罪してきた。
「今度はどうしたんです?」
その時点で察しはついていたが、何気ない会話も面倒に感じないくらいには私は彼女にお熱だった。
「Tシャツ。口紅付けちゃった」
「まあ、そうなりますよね。……ふ、ふふふ……っ」
忍び笑いする私を不思議そうに見ながら、彼女が立ち上がろうとしたのを止める。
多分、それを消すためのものを持ってくる気でいただろうから。
「でも、丁度良かった。これ、外に着てく服じゃないし気にしないで下さい。あと私、いつもキスマ付けてもらう時、残念に思ってたんです」
「残念?」
座り直した彼女と私との間は、先程よりも明らかに狭まっていた。
低過ぎる室温は近付くための口実だったのではないかと一瞬思ったが、私と違って正々堂々としている人だ。そんな遠回しな手段は使わないだろう。
「紅さんの唇の形、めちゃくちゃ整ってるじゃないですか。パッケージデザインで使われるようなキスマークって感じで」
「そ? 考えた事なかった」
彼女は口紅の取れかけた口の周囲を指で一周したかと思えば。
「あはは。……まあ、持ってる人は自分が持ってる事やものに無自覚……なんてのは、珍しい話じゃないですもんね。何事も」
「次、可愛い形にする?」
そのまま唇を突き出し、リップ音を立てて。
「可愛い形っていうのは?」
思いがけずファンサを貰ってしまい、ホクホクしながら聞いてみると。
「ハート、とか?」
今度は枠の中から唇を覗かせる形でハートマークを作ってくれた。
「ハートのキスマークも可愛いですけど、今のままで大丈夫ですよ」
「そ? でも、そろそろ違う事、したいんじゃない?」
「…………紅さん、やっとその気になってくれました?」
「アタシも翠も満足出来るかもしれない事、してみる?」
さりげなく太腿に置いた手はスッと持ち上げられ、手の甲には何故か女王様の唇が触れていた。
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