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鶯音を入る
第一夜
しおりを挟む心のどこかで恐れていた事態が起きたのは、色々吹っ切れて『恋人同士でありながら、恐るべきプラトニックさを保ったままの関係でも良いじゃないか』と思えるようになってしばらくした、ある朝の事だった。
下世話な言い方をするなら、男に抱かれなくてもある程度は耐えられる体質になってきた頃、ともいえる。
「…………」
その日の私は、アラームよりも早く目覚めてしまった。
紅さんが寝ていたら、彼女の寝顔を拝めてむしろラッキーと言えたのかもしれない。
だが、現実はそう上手くは行かないものだ。
彼女は私に覆い被さっていたから、最初はもはや恒例となったキスマークの補強に精を出しているのかと思っていた。
しかし、彼女はその辺りに何かを塗り込んでいた。
「何してるんですか。キスマだったら堂々と付ければ良いのに」
思わず声を掛けたが、尖った可愛くない声が出たせいで自分で自分に驚いてしまった。
「……バレちゃった」
彼女の方が平然としているように見えるが、その一言が何を示しているのかは、依然、謎に包まれていた。
「とっくにバレてます、紅さんがキスマ付けてたわけじゃないのも」
「…………」
思い切って揺さぶりをかけてみると、彼女は黙り込んでしまった。
「いつから?」
そして、一拍置いた後、観念したように短く問うてきた。
「たった今、です」
その返答で、私の心は決まった。
彼女には誠実に対応する気があるのだから、こちらも嘘や誤魔化しは一切交えず、真摯に向き合おうと。
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