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鶯音を入る
第七夜
しおりを挟む「……答えにくそうなんで、質問変えますね。今からするのは、ものすごく非現実的で……他の人がいたら絶対に馬鹿にされるだろうなって感じの質問です」
『答えてほしい事を訊く事と、彼女を傷付けない訊き方を選ぶ事は両立し得ないのではないか』と悲観的になっていたが、話し始めてみたら案外なんてことはなくて、勢い任せに問い詰めてしまった事を申し訳なく思った。
「うん……」
しかし、発言の撤回や取り消しなど、厳密には不可能と言って良い。
誠意を込めた謝罪を幾度行った所で、相手に付けてしまった傷が癒える事など、一生涯ないのだから。
「…………あ。すみません。その前に……薬について、もうひとつ聞かせて下さい。塗って貰ったのって、何か特別な薬だったりします? 塗ってすぐ血が止まって、おまけに完治する薬なんて、聞いた事ないです。効き過ぎて怖いっていうか……」
俯いた彼女を見て、もう少し様子見を続ける事にした。
すぐに聞き出したいのは私の都合だ。先程まで、私は彼女の都合を無視し過ぎていた。
「翠の身体に、悪影響はない。……から、安心して。その薬……アタシのかかりつけの医者が作ったやつ、だから」
彼女はそう言って、自分のお腹を撫でた。
その仕草は、初めて言葉を交わした日の出来事や、私がここに居着いた頃にした打ち明け話を思い出させるには十分だった。
――――決して繋がる事がないと決め付けていた点と点は、今まさに線になろうとしている。
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