モヒート・モスキート・モヒート

片喰 一歌

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鶯音を入る

第十一夜

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「ヴァンパイア?」

 尋ね返した彼女の声は、何と言うか……言葉を選ばずに言えば、らしくなく間の抜けた声といった具合だった。

「え? 違いました?」

 答える隙も与えず弁解を続けたのは、今回ばかりは答えを聞くのが怖かったからではない。恥ずかしかったからだ。

「あ、いや、そうですよね!! そんなの、架空の生き物ですよね! ……もしそうだとしても、簡単に正体明かすわけにもいきませんよ……ね…………」

 良い年齢トシした大人がそんな非現実的な事を尋ねようか尋ねるまいか迷っていたなんて。

 頬がかあっと熱くなる。

「! 翠、泣いてる……」

 と、彼女の声で我に返った。

「え? ……あ……」

 頬に触ってわかった。そこが熱を持ったが。

 驚く事に、私の頬には幾筋もの涙が伝い落ち、細い滝のような様相を呈していた。
 
 『人として大事なものが欠けているんじゃないか』と言われるほど、滅多に泣かない私が人前で涙を見せる事など殆ど……いや、もしかしたら初めてかもしれない。

 そんな初めてまで奪っていく紅さんは、人間でも人間でなかったとしても、私にとって特別な存在だ。
 
「……話すの、落ち着くまで、待った方が良い?」 

 彼女が気遣ってくれているのは、真相を語る事を先延ばしにするためではない。

「いえ。涙が止まらなくても話を聞く事は出来ますから。もし話せそうなら、私が泣き止むのを待ってなくて平気ですよ」

 私の様子をじっと見ていた彼女が近付いてきて、その手でびしゃびしゃの頬を拭ってくれた。
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