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鶯音を入る
第二十二夜
しおりを挟む「え……。じゃあ、紅さんが『夜に独りは嫌』って言ってたのって…………」
気付かなくてはならない事は見過ごすくせして、気付きたくない事には気付いてしまう性分が憎い。
――――私はその言葉の真意を問うてみようともせず、一方的に決め付けていた。
「ん。寝れない時、考えなくて良い事まで考えちゃう事、ない?」
思わず彼女の大きな目のその下を確認すると、今まで見逃していたのが信じられない程ハッキリしたクマが見つかった。
「私は…………。この流れで言うのもどうかと思うんですけど、独りで寝る事って、そもそもそんなになくて……。というか、何か考えるより先に疲れて寝ちゃう事が多かったし、紅さん家来てからもぐっすり快眠だったんで、あんまりそういう感覚なくて。すみません」
言葉は濁したが、それがどういう事を指すのかは明白で、過去の行いを今、初めて後ろめたく思った。
どんな誹謗中傷を受けようが、間違いなくそれは、彼女と出会う以前の自分にとって必要な事だったと言える。
彼らもまた同じ穴の狢だったのかもしれないし、私以上にどうしようもないクズだったのかもしれない。
――――だとしても。寂しさと、寂しさの象徴であった穴を埋めてくれていた人間達を、『体温があって、性行為も出来る日替わりの抱き枕』程度にしか捉えていなかった事に対する自己嫌悪が止まらない。
「……そっか。最後のは、アタシが謝らなきゃいけない事だし、気にしないで。『紅さんはそういうタイプ』ってわかってくれてたら、十分」
それなのに、すべてを察したうえで、彼女が私に掛ける声は子守唄と勘違いしてしまいそうな程に柔らかく、あたたかいままで。
「人とは言わないんですね」
「ん。ヒトじゃないから、アタシ」
絵画のような微笑は、やけに眩しくて、それでいて痛々しかった。
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